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【想いとコンセプト】からだとこころと暮らす棚について
「からだとこころと暮らす棚」は、シェア型書店である神保町PASSAGE SOLIDAに、2024年12月に開設した棚です。日々をすこやかに暮らすために、からだとこころを支えてくれる本を販売しています。
なぜこのような棚を開くことにしたのか、この記事にまとめておきたいと思います。
1.棚主について
私は文系の大学を卒業した後、医療・医薬分野のライター・翻訳者になりました。医療に強い関心や使命感があったわけではなく、「自分のからだにも関係することだから、興味を持ちやすいかも」ぐらいの軽い気持ちでこの世界に入ったのですが、気づけば各分野の医師や研究者に取材をしたり、医学書や医学論文を調べたり……という暮らしが長くなりました。
医療情報を扱っていると、「多くの人の役に立つ良い仕事だね」と言われることがあります。たしかにそうかもしれませんが、私たちは調子が悪いとき、常に病院や薬を頼っているわけではないと思います。医療が役立つ場面ももちろんたくさんあるのですが、日常をすこやかに暮らすために私たちを支えてくれるものは、他にもたくさんあるはずーーそんな想いを「シェア型書店の棚」という形で展開したのが、「からだとこころと暮らす棚」ということになります。
2.この棚を開いた理由
1:「面白い&ためになる」医療本を届けたい
よく言われることですが、本やマスメディア、SNSなどで発信されている医療・健康情報は玉石混淆です。私は医師ではありませんが、それなりの量の情報に触れてきているので、最低限のフィルタリングはできるだろうと思います。
一方、実際に症状や病気があるのなら、自分であれこれ情報を探し回るよりも、まず受診先の医師に相談するほうがいいだろうと私は考えています。また、「こうすれば健康になれる!」というような本ばかり並べて、健康を押しつけるような棚をつくりたいとも思っていません。むしろ、医療・健康一辺倒になるとしたら違和感があります(健康は大事ですが、私たちは健康のために生きているわけではないはずです)。
私が棚に並べておきたいのは、まず医療・健康の基本的な考え方を知ることのできる本。知識の土台になってくれて、いざというときに役立つ本を厳選したいと思っています。既にnoteで紹介したものだと、これが代表格です。
それから、「人間のからだってすごい!」「もっと知りたい!」と思えるような、好奇心を刺激してくれる本。やっぱり、面白いって最強だと思うからです。どんな形であれ、自分のからだやこころに関心を持てるようになれば、自然と気遣うようにもなるのではないでしょうか。この本なんかは、役に立つ×面白い、両方満たしているかなと思います。
2:普段の暮らしをさまざまな「お助け本」で支えたい
健康って必ずしも医学や病気の話だけではありません。毎日の暮らしの話でもあります。病気の有無にかかわらず、「なんとなくつらい」「ちょっと調子が悪い」「仕事や生活に影響がある」といったようなことは、珍しいことではないはずです。
私たちは自分が持っているこのからだとこころで、いろいろな状況をなんとか生きていかなければならないのですが、それはすべて医学で解決できるとも限りません。
そんなときは、直接的にからだやこころの健康に役立つ情報ばかりでなく、こころを癒やしてくれるような物語とか、視野を大きく広げてくれる誰かの語りとか、疲弊して活字が読めなくても楽しめる写真集とか、そういったものが大きな助けになってくれるかもしれません。
私自身、落ち込んだときや疲れ果てたときに支えになってくれそうな本を、普段から意識的にストックするようにしています。私の本棚だけでなく、神保町の棚にもいろいろな「お助け本」を展開しておくことで、誰かのセーフティネットとして機能してくれたらと期待しています。
3:多様な本を楽しみたいし、楽しんでほしい
子どもの頃から本が好きでした。幼稚園の頃から「いなくなったのかと思った」と言われるほど、静かに夢中で本を読んでいましたし、学校の図書室にあった文学系の本は読み尽くしたのではないかと思います。今はそれほど大した量を読めていませんし、文学にも作家にもまったく詳しくありませんし、読む本のジャンルもノンフィクションや医学寄りのものが増えましたが、それでも本が大切な存在であることは変わりません。
本に興味のある人の多くは、文学含め文系寄りのものがお好きなのかな、という印象があります。シェア型書店をほんの数件回っただけで、私がきちんと探せていないのかもしれませんが、医療に限らず理系寄りの棚が少ない気がしました。これだと(私が)つまらないな……と思ったことが、棚主になる最後の決め手になりました。シェア型書店にもいろいろな本があったほうが、きっと面白い。
私自身が文系から医療の道に進んだ人間でもあり、興味がいろいろな分野に散らばっていますので、実際の棚は文理関係ないごちゃまぜラインアップです。こういうものを面白がってくれる人が、私以外にもいるはずだと信じています。
3.日々のすこやかな暮らしの支えに
この棚を開設した理由をあれこれと述べてきましたが、「からだとこころと暮らす棚」は、「休憩室」とか「ベンチ」とか「ハンモック」とか……日々をすこやかに暮らしていくための、ちょっとした支えや息抜きスペースのようなイメージで開きました。
ストレスが溜まったときや疲れてしまったとき、誰かに話して発散する人もいれば、人に話さず一人で静かに解消する人もいるでしょう(私は完全に後者です)。書店は、一人で訪問して一人で静かに楽しめる場所です。職場や自宅など、いつもの場所を離れてふらっと立ち寄り、棚を覗いたら、自分を支えてくれる何かが見つかるかもしれない。そんな可能性のある場所として、思い出してもらえるようになったらいいな、と思っています。
とても小さな棚ですので、置ける本は限られています。いわゆる「売れ筋」ばかりではないし、誰もがこの棚に関心を持つわけでもないでしょう。それでも、私の職業や経験や性格を活かして、「きっと何かの助けになる」と私自身が心から信じられる本を並べていくつもりです。一人でも「良い本に出会えた」と感じてくださる人がいたら、この棚を始めた甲斐があったのだと思います。