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Member’s essay桑原裕子「おウチで見続けた我が海外ドラマ20年史⑤囚人編
ある女があなたを愛しています
その女はとても愛しています
毎日影のようにあなたにつきまとって
その女は笑いながら泣いています
《韓流ドラマ『シークレットガーデン』主題歌『その女』より》
ドラマの中でイヤってほどくり返される曲なんですが、冷静なときにこうして読むとちょっと怖い歌詞ですね!いやあ、『シークレットガーデン』は狂ったドラマでした!いい意味で!(どうかな)
さあ~て。
ヒョンビンとあつ森に夢中になってたら、緊急事態宣言解除されてたヨ!!
いえ、そんなのんきに生きてきたわけじゃありません。
やっとおウチ篭もりに慣れたところで世の中が(やや不明瞭な基準のもとに)STAYHOMEを解除してぐいぐい動き出したので、戸惑いを隠せずにいるんです。もちろんうれしいです。けど、どうか皆様慎重に。
ヒョンビン熱もいい加減冷まそ。
オハコンバンチハ!桑原です!!!
「おウチKAKUTA」は自粛期間中の気晴らしに…とはじまったnoteではありますが、世の中が通常運転になっても続く予定です。
なぜか?おウチでも、おソト(劇場など)でも、KAKUTAと密にお付き合いしてほしいからですよーだ!
そんなわけでこの勝手に振り返る我が海外ドラマ20年史も勝手に続けて参ります。お気の向く方はお越しくださいね。
さて今回は、過去見てきた海外ドラマモノでも『囚人もの』という非常に限定的な縛りで始めてみました。その理由は後ほど書いていこうと思うのですが、まず囚人モノの海外ドラマといや最初にこれが思いつきますよね。
『プリズン・ブレイク』兄弟ふたりで監獄荒らし
な・つ・か・し~い!
「プリズン・ブレイク」、このお話は、
言われなき罪(だったっけか)で投獄させられたガチムチ筋肉野郎の兄ちゃんを、
ナイーブなイケメンで天才的頭脳を持つ弟・マイケルが、頭めっちゃ使って自ら囚人になってまであらゆる手を尽くして脱獄させるよ!
っていう、ざっくりいうとそんなドラマです。
00年代海外ドラマブームの人気作と言えますね。
大統領助けるためにはすぐに誰でもノシちゃうジャック・バウアーさん
でおなじみ「24―twenty four」に続いて、はまった人も多いんじゃないでしょうか?ええ、私もそれなりにしっかりハマりましたとも!
ファーストシーズンは最高でしたね!
ほら特に、
この、折り紙で作った小舟が排水溝を抜けていくときなんか・・・
めっちゃ興奮したもんねー!!
でも…、
あれ…?
なんで小舟作ったんだっけ?
どういう目的で?ワスレチャッタ・・・!!
(ボー)
あのね…。正直にいいます。
「ハマったよねー!」とかいうわりに私、「プリズン・ブレイク」も「24―twenty four」も、細かいお話の展開をまるっきし覚えてないんですよね…。そういうドラマ、多いんですよね・・・。
なんかいい奴だったなこの人(スクレさん)。
ってこととか、
なんか気の毒な奴だったなこの人(ティーバッグさん)
ってこととかは…ざっくり覚えてるんだけど…、
大事なところを忘れてる。
たとえば、兄貴がどんなえん罪で捕まったんだっけ?とか、
いったい、どうやって脱出したんだっけ?とか。
兄を脱獄するためなら全身に監獄の地図を暗号化したタトゥーまでしちゃう思いやり溢れる弟。
でも背中の地図ってどうやって見てるの?
鏡?鏡だと逆になるじゃない?
(『メメント』では逆さ文字にしてたケド…)
まさかこんなに忘れてるのもびっくりなんですが、時間を忘れて楽しめることも間違いなしです。おもしろかったってこと以外記憶に残らなくてもいいドラマって、あるんスよね。
(これとか)
数年前にSMAPの中居くんが(まだSMAPのっていっちゃう)入院してたとき「24」をイッキ見して「あれ見た?めっちゃ面白いよ!」的なことを、「今・・・?」っていうタイミングで言ってたのが「中居くん、仕事忙しいモンネ・・・!」って目を細めたくなるほど微笑ましかったんですが、実際まだ「プリズン・ブレイク」や「24」を見たことない方、今から見るとしたら大分長く楽しめる娯楽の貯金持ってるよって感じで羨ましいです!
遅くない!今からでも!
プリズン・ブレイクで混乱しがちな3つのこと
・何度も投獄されて脱獄するのでどの刑務所にいるのかごっちゃになる
・主人公マイケルの恋人役が「ウォーキングデッド」の奥さん役なので生き残るか死ぬかゾンビになるか結末がごっちゃになる
・マイケルは生きてるのかどうだったかごっちゃになる
またしても長くなっていますが。しかし。
今日「囚人編」として取り上げたいのは、このドラマなんです。
「オレンジ・イズ・ザ・ニューブラック」はアメリカの「女囚サソリ」か!?
「オレンジ・イズ・ザ・ニューブラック」!!
わたくし、このドラマのために初めてAmazonで配信動画を買い、このドラマのためにNetflixに入りました。我がNetflix沼の始まり、ここにありッス。
アメリカでも公開からかなり話題となったこのドラマ。
詳しいあらすじやその概要については以前わたくしが配信動画のレビューサイトShortcuts.webさんに書かせていただいたことがあるので、是非ともこちらを読んでいただけたらと思うのですが。
大雑把にいうと、このドラマは女囚たちの織りなす群像劇です。
ファースト・シーズンは、麻薬売買の運び屋を恋人に手伝わされて捕まった主人公・パイパーが劣悪な環境の刑務所でどうサバイヴしていくか?というのがメインストーリー。
でもこのドラマ、実質主人公はいないも同然、というよりむしろ、女囚全員が主人公だと言っていい。
なぜなら、シーズンが進むごとに女囚全員を愛してしまうから・・・!!
(めっちゃ登場人物おるのに!まじで全員覚えられる!!)
最初はどうかしてる奇人変人極悪人ばかりに見える女囚たち。
でも、この投獄に至るまでの生き様、抱えている事情は人それぞれ。メインストーリーの狭間に彼女たちの人生がフラッシュバックで紹介され、囚人生活と過去を交互に見ながら彼女たちの本質を知っていくうちに、
「生まれたときからの悪人なんざ、いねえのさ・・・」
という気持ちになってもう、全員の顔を思い出すだけで抱きしめたくなっちゃうんだから!
逆に言えば、はじめはやむにやまれぬ事情から軽犯罪に巻き込まれて投獄していただけの女の子が、刑務所でこすられまくったあげく大罪人になっていく場合もあります(切ない・・・)。
監獄の中でも、恋があり、友情があり、自尊心や目標を見いだし、人生を見つめる囚人たち。その人間模様はブラックコメディとしても、珠玉のヒューマンドラマとしても一級品!!!
変な子もすんごく愛おしい!!!
そしてこのドラマでは、監獄をアメリカ社会の縮図として描いているので、宗教、人種差別、LGBT、女性蔑視、人権問題など、様々な社会問題を知ることも出来ます。
そのひとつが、今まさにアメリカ全土で起きていること。
根深い黒人差別と、暴動です。
注:ここからはシーズン4の重大なネタバレが含まれてますので読みたくない方は目次の次の項目まで飛んでください!!!
アメリカの刑務所は企業が運営する民間施設だそうで(これが驚き!)、監獄によって環境の優劣が激しく、運営会社の都合で予算を思うように削っては、突然囚人たちの食事を粗末にしたり、ベッドを奪ったりします。
ひどいところでは、看守が権力を盾に暴力を振るったり、理不尽な行為を強いたり、まかり間違って性行為を強要したりしても、反抗することも逃げることも出来ないという現実があるようです。
あるとき、ミソジニストでファシストな看守にひどい扱いを受けることに耐えられなくなった囚人たちは、食堂のテーブルに立ち、無言で抗議のデモ《サイレントスタンディング》を行うことに。
それをやめさせようと強引に彼女たちを引きずり下ろす看守たち。
そんななか、巻き込まれたのがひとりの女性(ネタバレ覚悟してたけど知りたくない人のためにやっぱり誰かは伏せておきますね)。
ただ混乱を収めようとしただけの、決して暴力的ではない彼女を、パニクった若い看守がわけもわからず取り押さえているうちに、圧死させてしまいます・・・。
当然、悲しみに暮れて怒り狂う仲間たち。
それまでおとなしく様子を見ていた者たちさえも自制心を失います。
そして、囚人たちの怒りを抑えきれず迷走する看守が落とした拳銃をたまたま拾ってしまったラテン系のダヤは、
「やれ!!」「撃て!!!」
周りに激しく煽られて・・・。
ここから本格的な暴動勃発です。
監獄は一瞬にして怒りと暴力にまみれた狂乱の渦へと陥っていくのでした。
《ネタバレ終わったよ!!》今のアメリカに思うこと
今現実にアメリカで起きている暴動のニュースを観ていたら、このドラマを思い出さずにはいられませんでした。
「ドラマと実際の事件が似ているなあ」なんていうことだけじゃありません。暴動に関わっている人たちの、あるいはそれを止めようとしている人や、遠くから眺める人や、娯楽的に騒いでいる人など、あらゆるケースをこのドラマを通じて垣間見ることが出来るからです。
大事な人を亡くして悲しんでいる一番身近な人たちの想いを超えて、暴動というのは加熱していくものだということ。
そこには、それまでの生活で各々がずっとずっと差別に耐えてきた痛みがあり、生活への苦悩があり、ずっとずっとずっと抑圧されてきた何かがあったということ。
でも、そんな想いとは関係なく、抗議活動に便乗して単なる破壊活動と略奪を行う者たちもいるということ。
今、トランプ大統領は一緒くたに「抗議を起こす者」を非難しているけれど、抗議者と暴徒が違うことや、同じ不満を持つ人たちの中でも平和的に訴えている人とそうでない人もいる。
そこを線引きせず、全部を全部「アメリカ大変だなー」「乱暴だなやっぱしアメリカはあ」などと無関心でいることが、
このドラマを見るとマジでマジに絶対のたいに出来なくなります。
そして「不満があっても普通の声で言おう、ね」みたいな、表向き平和を装って論点から目をそらし、傍観することをかっこよしとする僕ちゃん発言も出来なくなります。
もし、自分が同じ差別を受ける立場だったら?
もし、同じ立場ではなくても、親しい人が同じ目に遭っていたら?
もし、自分が同じ立場ではなく、親しい人も同じ目に遭っておらず、しかし別種の差別に耐えていたら?
もし、自分や親しい人が何の差別も受けておらず、しかし貧乏で、苦しい生活環境に置かれていたら?
もし、自分や親しい人が差別を受けておらず、貧乏でもないけれど、コロナ禍などの影響で激しいストレスに晒されていたら?
宗教観、人種観、いろいろな立場や価値観で物事を見て、想像することが今、とても大事だと思うあなた!
ぜひとも今、「オレンジ・イズ・ザ・ニューブラック」を観てください。
日本の常識だけではわからなかったことがわかると思うし、今は日本でさえ、ほんの少し歯車が違えば起こりうる出来事じゃないかと思います。
というわけで、また!
オレンジ・イズ・ザ・ニューブラック私的好きな女・ベスト3
1/色気爆発アレックス役のローラ・プレポンさん
2/けだるさがまばたきに出るニッキー役のナターシャ・リオンさん
3/若い頃と印象変わりすぎなロリー役のロリ・ペティさん
ロリ・ペティさん、昔も今も大好きっす
「オレンジ・イズ・ザ・ニューブラック」はもちろんNetflixで。
ぷりぶれはアマプラで見放題。てかHuluでも観られます。
「俺については語らないのか!!」