明日には忘れるはなし
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昼休憩をそのままデスクの上で取る人って信じ難い(せっかくの昼を適当に流し過ぎだと思う)が、左右のおじさんお姉さんは毎日机の上で食べる派だ。その二人が今、下のコンビニで購入してきたであろうファミチキやらカラ揚げやらヨーグルトやら菓子パンを食べている(大抵時間差があるのに今日はシンクロしていた)。左右からの匂いと咀嚼音の渋滞で辛い。思い切り顔をしかめている。今日も社会に生きている。
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朝聞いていたラジオの映画批評で(『15:17分、パリ行き』)、あの日のあの選択を、あの挫折を、あの学びを、”その時”が来たら貴方は”活かせますか”というような事を話していた。この映画のヒーローはまさに”その瞬間”に、自分の体験全てを注いだのだろう。文字通り、命がけで。
あの日々は、今日のこの一瞬のハイライトの為の出来事だった。そんな伏線を回収できる人生って尊い。
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もう一度、映像の脚本に関わらせて頂ける事になった。どこかで、私を思い出して、私に任せたいと思ってくれた人がいる、それに賛同してくれた人がいる。その事がどうしようもなく嬉しかった。と、同時に重圧を感じ返事が遅れた。瞬間的にやると決めていたけれど。一番に母に報告したから、私はやはり母からの承認が一番欲しいのだなと頭をかすめた。感情が交差して忙しい。
去年の6月の数日間。夢中になってクラス最後の脚本を書いた。締め切り日がちょうど自分の誕生日だったから、旅行を決めていた。なので必然的に、こだまに乗っている時も、おかげ横丁を冷かしている時も、倉敷の街並みに感嘆している時も、頭の中は構成やセリフ、句読点が浮かんで消えなかった。スマホにデータを送っていたので、推敲を繰り返した。とんでもなく楽しくて飽きない作業だった。そうして出来た作品をクラスの人が評価してくれた。一緒にいつか作品を創ろうって語り、それが今に繋がっている。
伏線を回収しつつ、今日もいつかの伏線を紡いでいるのだろうか。
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一話完結にはいかない人生は一寸も気が抜けない。
嘆息しながら、明日の脂肪(ココア)を買いに行く。
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