BC3「夢のあと」
[水道橋博士のメルマ旬報 vol.86 2016年5月25日発行「オトナの!キャスティング日誌」より]
皆様おはようございます。TBSテレビでバラエティプロデューサーをやっています角田陽一郎(かくたよういちろう)といいます。
今これを書いているのは5月25日です。そう5月25日発行の第86号を、なんとその日の未明に書いています。ちなみに原稿の締め切りは通常1週間前です。なので本当は18日が締め切りの原稿を、なんとだいぶ遅れて発行日の当日未明に書いているのです。もうギリギリというか、ギリギリアウトかも知れません。水道橋博士、原カントくん、本当にご迷惑をかけて申し訳ありません。
でもそうなってしまったのは、23日に開催された『オトナの!フェス』のことを書こうと思ったからなのでした。
5月23日に『オトナの!フェス2016』がゼップダイバーシティにて開催されました。僕がプロデュースする番組『オトナの!』が開催するおとなのための音楽フェスで今回が4回目、そして番組が6月で終了するので、それにともない最後の開催になってしまったフェスでした。
いとうせいこうさんとユースケ・サンタマリアさんMCのもと、今回の出演アーティストは高橋幸宏さん、テイ・トウワさん、小山田圭吾さん、砂原良徳さん、権藤知彦さん、LEO今井さんの6人からなるMETAFIVEと、メルマ旬報連載中でもある我らが岡村靖幸さん。さらにDJで大御所・高木完さん、オープニングアクトで今話題沸騰中のSeihoさんと、もう半端ない方々に出演していただきました。平日の夜なのにチケットは完売。
そして、イメージビジュアルは、漫画家の江口寿史さんが書いたMETAFIVEと岡村靖幸、せいこう&ユースケの9人のイラスト画。それをTシャツにして限定販売したところ、開演前に瞬殺で売り切れてしまいました。
当日は、オープニングはSeihoさんから始まり、続いての METAFIVEのパフォーマンス!メタメタクールなVJに乗せてメタメタかっこいい6人の演奏、さらに終盤ではいとうせいこうさんも飛び入り参加して、せいこうさんの30年前のラップ曲『東京ブロンクス』をコラボ。そして高木完さんのめちゃめちゃかっこいいDJのあと、さらに観客として来ていただいていた江口寿史さんと我らが水道橋博士に、セット転換中のバックステージからのトーク中継に急遽無理を頼んで参加していただき、さらにシークレットゲストで大森靖子さんがいきなり登場し、アカペラでラップを熱唱。そして最後の岡村靖幸さんのキレキレのパフォーマンス、アンコールは岡村さんのアドリブのギターで、即興で『オトナの!』という曲をせいこうさんとユースケさんとともに熱唱。これは以前水道橋博士と岡村さんが一緒に出演した時に、せいこう&ユースケの4人で即興で歌った『オトナの!』の再演でもありました。4時間に及ぶ、まさにバラエティに富んだ“夢の宴”でした。
こうして、僕の夢は叶いました。
前回の5月10日号では、僕の岡村靖幸さんへの19歳からの想いを『岡村靖幸と19歳の僕-激しく健気な頃の夏を取り戻せ-』として書かせていただきました。このフェスは、まさにそんな僕の夢の結果なのです。フェスの翌朝、水道橋博士からツイッターでメッセージいただきました。
「夢が叶った夜だったね」
そんな夢のあとで、僕は今この文章を書いています。23日以前には僕はこう思ったのでした。「23日に体験した夢の宴の模様と、それを経験した僕の直後の想いを文章に綴ろう」と。一体どんな文章を書くのか?僕は夢の宴を前にして、ある種楽観的に空想していました。
そして今、実際その夢の宴をあとにして、僕は今、正直何も思うところがないのです。
はっきり言って全然想いを文章にすることができません。23日のフェスが終わって、そこからぼーっとしてしまって、まさに腑抜け状態です。そんな文字通りの腑が抜けた状態の自分。いつも番組の収録やイベントが終わった翌日は、疲れ切ってかなりぼーっとしているのですが、今回はそんな疲れ以上に、どういうことか何も想いが自分の中に湧いてこないのです。自分の夢を叶えるということは、そんな“何もなくなる”空っぽな状態になるということなのでしょうか。
でも、この夢の宴が済んで、言い換えれば、僕の夢は終わってしまったともいえるのです。
5年目を迎えた独立採算番組『オトナの!』の突然の終了。それによりこの“夢の宴”は、僕の23年目のTBSテレビの制作人生の中で、実質的な最後の番組収録でもあったのでした。
「夢を叶えるということは、夢が終わることなんだ」
今は、そんな虚無感しかないのかもしれません。もう少し時間がたったら振り返られるのかもしれません。
そうしたらまた書いてみたいと思います。
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