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夕暮れ時の海岸

お久しぶりでございます。
細切れの時間の中。
なんとかショートショート1つだけ書けたので、UPしたいと思います。
(あぁ、イラスト描きたい…)


さて、今回のトップ写真。

家族で浜松の方へ遊びに行った時の事。

昼からという、スタートの遅い小旅行。
その途中で寄った海岸で撮った写真です。
(これもオリジナルTシャツになってます)

夕日のオレンジに染まる海岸。
綺麗だな~とテンション上がっていたのに…

脳裏では金曜ロードショーの初代テーマソング

『Friday Night Fantasy』が流れてて…

急に物悲しくなる。…という状況でした(笑)
(あぁ、渋い曲)


そんなこんなで<どんな?

ショートショートどうぞ。


 浜辺を転々と海に向かって釣竿を垂らす釣り人。
 波待ちをしては、サーフィンをするサーファー。
 足元に戯れつく仔犬と散歩している老夫婦。
 小さなバケツとミニスコップを持って、砂浜で遊んでる親子。
 観光客か、波打ち際で波と戯れているオシャレな格好をした女の子のグループ。

 さまざまな人がチラホラいて、思い思いの時を過ごしている姿がそこにあった。

 私?

 私は…何もない。
 あえて言うなら、夕日が沈む海を眺めに来ただけ…1人で。
 しかも、適当に家を出たは良いけど、タイミングを完全に間違えてしまった為、日暮れ前の日差しの高〜い、暑〜い時間からここに居る。
 やっと日が暮れ出して、鋭い日差しが緩み、風がちょっとだけ心地良くなったところ。ま、西陽もかなりジリジリするから日傘はまだ畳めないけどね。

 一緒に散歩してくれる相手なり。
 海を満喫できるような趣味を持っていれば良いのだろうけど。残念ながら、無い。
 本当に何も無いのである。

 寂しい人…だって?

 そんなこと言わないでほしいわ。
 だって、寂しくはないもの。
 わいわいと知り合いや仲間と騒ぐのも好きだけど、1人も好きなの。極端な話。1週間ぐらい誰も会わず喋らず居ても苦じゃ無いの。

 変わってるって?

 そうよ変わってるわよ。
 自覚はしてる。でも、誰に迷惑をかけるわけでも無いのだから良いじゃない? この変わってる所を楽しんでもらって結構。好きに眺めてて、気にならないから。

 なぜ、海に来たのか…って?

 貴方、質問が多いわね。
 海に来た理由なんて単純よ。

『海を見たかったから』

 ただ、それだけ。

 貴方が期待するようなエピソードも、予定も本当にないわ。
 ま、ちょっとだけ掘り下げるなら、心の洗濯に来たの。日常に疲れちゃったのよ。綺麗な景色見て、明日からの仕事頑張ろう!…てね。

 え? まだ質問あるの?
 貴方もヒマね。
 でも、ゴメンなさい。
 今から世界が夕陽の朱に染まる私の好きな時間だから、1人にさせて頂戴。
 ま、また会うことがあったら、その時に残りの質問に答えてあげる。

 ………


 昼日中の黄色から茜色とも言われる朱に太陽の色が変わる。
 理屈上、光の屈折や大気中の塵の量で色が変わることは分かってるけど、この不思議な色の変化がとても好き。
 見渡す限りの海や砂浜。遠くに見える山々もその光を浴びて朱に染まる。朱色だけで着色されたその景色は、一種の切なさを心の中心に落とす。

 濃い朱色から次は深紅へ。

 やがて深紅が僅かばかりになった時。
 最後の黄色い光を放って夕日は海の中へ消えてゆく。

 そして、訪れるのは夜の帳。

 最後の光の名残の光が、水平線を一層際立たせる。その上の空には朱が薄く入り天に向かって赤紫、紫、青紫、群青…漆黒と闇へのグラデーションが描かれる。

 昼間は見えなかった星たちも、夜の帳が下りくるに従って、光を増して闇夜を照らす指針となる。


 ひと通り。

 変わりゆく太陽と空と海の色を眺めて。

 潮騒の音だけが響く海岸に1人。
 夕暮れの訪れと共に、それそれの時を過ごしていた人達は帰路に着き、この景色を堪能していた私だけが残っていた。

 他の人のように夕暮れだけでなく、星夜まで堪能するのには一つだけ理由がある。

 陽が落ちゆくのを眺めるのは、心の洗濯。
 星空を見るのは、明日への英気を養う為。

 夕焼けを見て心の洗濯だけで終わると、心は軽くなるけどそのまま何もなくて無気力に陥る。あの、あっという間に起きる変化への感動はあるけど、やっぱり刹那的なもの過ぎて、私にはなんとも言えない物悲しさだけに最後はどうしてもなってしまう。
 だからこそ、暗闇の中。小さくとも光り続ける星を見て、その “変わらない姿” に勇気をもらっている。

 “そのままで良い” …と。

 自分の存在を肯定してもらっているみたいで、ホッとするところがある。
 もちろん勝手な見解だし、他の人から見たらそうじゃないかもしれない。

『星空の方が悲しくなる』
 そう言った友達も居たから。


 ただ、私は胸を張って言える。

 夕刻から闇夜に変わる時間がとても好きだ…と。



 星の位置を確認して、徐々とやってくる夏の終わりを感じて、私は砂浜を後にした。

 清々しい気持ちと共に、明日への一歩を踏み締めて。



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