帰省
机に頭をあずけ、サイダー越しの夏を眺める
のしかかる重力に抗うように空を目指す気泡たちは、上京したての頃の私みたいで
液体の表面に達したところで先があるわけでもなく、パチパチと可愛らしい断末魔を残しては消えていった
無邪気な光の粒たちは
どこまでも愚かで、どこまでも綺麗だ
こんなふうに輝けていたのかな、私も
グラスが泣いた
私は泣けない
ひぐらしの声が遠く、夏の終わりを知らせる
母がせわしなく現れたと思ったら
グラスをヒョイと持ち上げ口に含んだ
ちょっと抜けとるくらいがええわ、丁度ええ
顔をあげ、私も一口
甘くて、やさしくて、まだ少しだけ尖ってて
悪くない
うん、悪くないかも