【弱い者いじめ?!国をつぶすインボイス制度!】財務省の「インボイス制度」が日本経済を破壊する~個人事業主を廃業に追い込み、起業者を生みにくい社会を作るインボイス制度の恐ろしさ~
【弱い者いじめ?!国をつぶすインボイス制度!】財務省の「インボイス制度」が日本経済を破壊する~個人事業主を廃業に追い込み、起業者を生みにくい社会を作るインボイス制度の恐ろしさ~
■インボイス制度、現役声優が反対のわけ「3割弱が廃業検討」 実力派の脇役減で作品の質低下&業界衰退を懸念
Yahoo!ニュース 2023/2/25 ORICON NEWS
https://news.yahoo.co.jp/articles/a9df9a2cef9cbf62695f028a156dcd2d8c08f00f
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アニメ『SPY×FAMILY』シルヴィア役などで知られる声優・甲斐田裕子、『S.W.A.T.』シリーズ主人公役の咲野俊介、『機動戦士Ζガンダム』エマ・シーン役の岡本麻弥が共同代表を務める有志グループ「VOICTION」が、インボイス制度を説明したアニメーションを制作・公開した。
完全自主制作となる本作はなぜ制作されたのか?
インボイス制度が業界に与える影響はどのようなものか?
甲斐田と咲野に聞いてみた。
・【動画】インボイス制度って?わかりやすい!公開された説明アニメ
――このアニメを作ることになった経緯を教えてください。
【咲野】 私たちはインボイス制度の導入に反対する有志の声優が集まっているチームですので、その活動の一環として議員に会いに行ったり周りの仲間たちへの周知活動を行ってきました。
その中で、やはりどうしてもこの制度が複雑で理解が難しい。どうにか一般の人たちが受け入れ易く、且つ我々の本業を活かせるような方法はないかと模索していました。
そうしていたら、偶々メンバーの1人が過去に制作したキャラクターがあり、関係者に動画を作れる方が見つかり、そして「スピンノーツ」さんという収録スタジオをお持ちの企業さんが音声の編集をやってくださるという声を掛けてくださって、「これならできるぞ」と作り始めました。
――制作される中で印象に残っていることはありますか?
【甲斐田】 大変だったのはやっぱり最初の台本作りですね。
制度があまりにも難しいので、かわいいキャラクターを使ってわかりやすくしようとするんだけど、そうするとどこまでも長くなってしまって…。
私たちのTwitterでも何回かに分けて流せるようにしたいと思っていたので、台本作りにはかなり時間をかけたと思います。
【咲野】 逆にいうと、台本ができれば後は我々の本業ですから。収録は思ったよりもスムーズに進んだなと思います。
【甲斐田】 楽しかったよね。普段は同業者だとまずスタジオでお芝居を見て、それから仲良くなっていくことが多いんですが、VOICTIONではみんなの芝居を知らなかったから、ちょっとドキドキしました(笑)。
でもみんなイメージ通りというか、うまくハマったものを作れたと思います。
【咲野】 新しい面を見せてくれる人もいましたね。「甲斐田裕子を探せ!」というのは一つの楽しみ方だと思います(笑)。
【甲斐田】 「インボイス」というと政治の話か、と思う方もいると思いますが、生活に直結する話なので、まずはこのアニメを見て制度について知って欲しいなと思っています。
私たちは制度に反対していますが、アニメは明確に反対と謳っている訳ではなく「まずは知ろう」「一緒に考えよう」というスタンスで作っているので、これまで私たちが出演したアニメやドラマ・映画を楽しんでくれた方々が、ライトに見て知って、そして広めてくれるととても嬉しいなと思っています。
【咲野】 そういう意味では、ターゲットは「これまでのVOICTIONを知らない人」です。
我々の活動を応援してくれる方たちにももちろん見てもらいたいですが、そこからもう一歩外に広がっていくことを望みます。
――そもそも「インボイス制度」とは、どのような制度でどういった問題があるのでしょうか?
【甲斐田】 インボイス制度は、消費税に関する新しい制度です。
簡単にいうと民間での税金の押し付け合いです。
フリーランスや小規模事業者である消費税免税事業者に仕事を依頼していた企業側が、相手が課税事業者になってくれないと納める消費税額が増えてしまうんです。
そのため、これまで消費税を納めなくてよかった免税事業者たちが、課税事業者になることを迫られる場面が至る所で起こってしまいます。
その影響で、声優やエンタメ業界だけでなく農家さんや一人親方、デザイナー、ライター、漫画家、アシスタント、ヨガインストラクター…その他ありとあらゆる分野で廃業するかもしれない人が多数出てしまうのです。
――それだけを聞いても一般の人間にはわかりづらいですね。
【咲野】 ですので、このアニメを見ていただきたいと(笑)。本当に複雑な制度なんです。
一般の方は「仕入税額控除」なんて言葉、そうそう耳にしませんよね。私もそうでした。
でもそんな複雑な制度を、全国で1000万人いると言われるフリーランス事業者たちが理解して登録しないといけないという、とんでもない難易度の制度なんです。
しかも登録したら、消費税課税事業者になる。
つまり、毎年の確定申告で消費税も別に申告して納めないといけないんですね。
この計算式がまた非常に複雑で、青年税理士会はじめ税理士や弁護士の先生たちも「実現困難だ」と強く反対されています。
――ではその制度が始まったら、具体的に声優業界はどう変化していくと思われますか?
【咲野】 我々が昨年11月に行ったアンケートでは、現役声優の3割弱がこの制度をきっかけに廃業を検討していると答えました。
70%以上の人が年商300万円以下であると回答していますが、仮に年商300万円の状態でインボイスが始まると、年間15万円程度の増税になるという試算もあります。(※現在日本で声優と呼ばれている人は1万人以上 VOICTION調べ)
【甲斐田】 元々声優は人気商売で、安定とは真逆にある仕事です。
課税事業者、つまり1000万円以上稼げているのはほんの一部、アンケートでは5%程度しかいないと知って私も驚きました。
声優歴10年目くらいのある声優に聞いたら、「先月とその前は月に30本以上仕事があったけど、今月は2本しかなかった」なんてことも起きる世界です。
誰もが耳にしたことがある声の持ち主でも、シリーズの番組が終わる節目だったり、自身のギャランティを上げたタイミングなんかでは本数が激変します。
そもそもの単価がそう高くはないので、月に2本ではとても生活できません。
数十本ある月と数本しかない月を交互に過ごして、年間で計算するとやっと300万円くらいになった、という人が中堅には多いのではないでしょうか。
来年どころか来月の生活も見通せない中で、多大な事務負担や増税が見えてしまうと、心が折れてしまうのも仕方ないのかもしれません。
【咲野】 甲斐田も言った通り人気商売ですから。人気がなくて仕事がない、実力で淘汰されることは我々は納得済です。
でも税制で選択肢を狭めるようなことは、果たして政府がやるべきことなのか、と思います。
――ですが昨今の声優ブームもあり志望者は大勢いますよね。業界の衰退という目線では、そこまで影響がないのではという声も聞こえます。
【甲斐田】 すぐに目に見えて何かが変わるということは、確かにないと思います。でも5年10年経ったときに業界の質がどうなっているか…。
【咲野】 私はバブルが弾けた直後に俳優業を始めたのですが、当時はまだバブルの残り香があって、ドラマなんかの今で言うエキストラのところも、俳優がキャスティングされていっぱしのギャラをもらってやっていたんです。
ところが気が付いたらどんどん機会が減って、今では全てエキストラに入れ替わってしまっている。
エキストラが全て悪いとは思いませんが、芝居に関してはやはり訓練を受けた役者の方が厚みはでます。
そういう、「画面の端っこ」からどんどんと質が薄まっていって、今はそれが画面全体になってしまっている、というのが声優業界の実態です。
それでもなんとか踏みとどまっていた部分も、この制度でどんどん侵食されてしまうのではと危惧しています。
【甲斐田】 ドラマやアニメというものは、主役級が揃ったから必ず良くなると言うものでもありません。
作品全体のバランスを保ったまま厚みを出すためには、有名ではなくてもちゃんと技術がある脇役、しかも多様性のある脇役が絶対に必要です。
そのためには、やはり裾野は広くないと作品の、業界全体の質が下がってしまうと考えています。
【咲野】 私はそれを見る視聴者にもリクエストしたいですね。
主役級のキャラクター、キャストが目立つのは当たり前だしそうあるべきですが、作品全体として誰がどういった役割を担っているのかということも見て欲しい。
かつては各テレビ局が競うように違う役者で吹替版を何パターンも作っていましたが、それを視聴者も楽しんで見比べていたのです。
そういう環境、土壌が役者を育てることにもつながるため、視聴者のニーズも多様性を持って欲しいと思います。
【甲斐田】 当時はいろんなパターンの同じ作品を見て勉強したし、私だったらこうしたい、と考えたりもしましたね。
【咲野】 そう。もちろん多様なニーズに応えるためには役者側はもっともっとインプットを増やして精進せねばというのはあります。
ここ数十年、学校教育の影響か「一つの正解」を求める若手が多いなと感じています。芝居なんていうのは正解はないですから。
ある程度の条件にはまるようにというのはもちろんありますが、もっと広がりを持って、貪欲になって欲しいと思いますね。
――改めて声優の立場からインボイス制度についての考えを教えてください。
【咲野】 この制度は民間にメリットがない制度です。
最たるデメリットは、様々な業界をじわじわと破壊していくということにある。
自分は関係ないと思わずにぜひこのアニメを見て、そして自分で考えて判断して欲しいと思います。
働く形態が違えば知らないこともたくさんあります。
隣の芝生が青く見えることもあるでしょう。
でもそれを「ズルい」と思うのではなく、業種職種を越えて全体で上がっていけるようにできることを望みます。
【甲斐田】 今日本では様々なことが不可解なまま決まっていくことが増えていると感じます。
日本では主権は国民にあるんです。選挙にいって自分の存在を政府に伝えることはとても大切だと思います。
そしてこの制度を国民の声で動かすことで、これからの日本が良くなっていくきっかけになればと思っています。
Change.orgというサイトでは署名も募集していますのでよろしくお願いします。
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インボイス制度、現役声優が反対のわけ「3割弱が廃業検討」 実力派の脇役減で作品の質低下&業界衰退を懸念
Yahoo!ニュース 2023/2/25 ORICON NEWS
https://news.yahoo.co.jp/articles/a9df9a2cef9cbf62695f028a156dcd2d8c08f00f
■「インボイス制度は日本のエンタメ業界を破壊する」 声優の甲斐田裕子が反対の声を上げる理由
2022.09.24 まいどなニュース
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消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度」が2023年10月から始まるのを前に、フリーランスや個人事業主、各種団体が続々と反対の声を上げている。
制度の導入によって文化が破壊されるのではないかと危惧する仲間と「VOICTION(ボイクション)」というチームを立ち上げ、国会議員に陳情するなど積極的に行動している声優の甲斐田裕子さんに、反対する理由を聞いた。
甲斐田さんは主に海外ドラマや映画の吹き替えで活躍し、アン・ハサウェイやブレイク・ライヴリー、レイチェル・ワイズの声などで知られるほか、数多くのアニメ作品にも出演。20年以上にわたって第一線を走り続ける、人気、実績ともにトップクラスの声優だ。
直近ではアニメ映画「四畳半タイムマシンブルース」(9月30日から3週間限定で劇場公開)で羽貫さんの声を担当している。
「一見すると華やかそうな声優業界ですが、その実態はほとんどの人が免税事業者(課税期間の基準期間における課税売上高が1000万円以下の事業者のこと)です。VOICTIONが実施した収入実態アンケートでは、300万円以下の人だけで7割を占めていました」
・インボイス制度で業界に深刻な損害が?
適格請求書(インボイス)を発行できるのは「適格請求書発行事業者」に限られ、この適格請求書発行事業者になるには、登録申請書を提出し、登録を受けなければならない。
免税事業者が登録を受けるためには、原則として課税事業者になる必要があり、そうすると当然、消費税の申告・納税などが課せられるようになる。
「決して多くない収入からさらに消費税を納めるとなると、死活問題です。それに、私も経験があるからわかるのですが、個人で消費税の申告作業をするのは死ぬほど大変。あの膨大な事務作業は、ギリギリの収入で生活している声優たちから、本業に向き合う時間や経験を積む時間を奪いかねません」
「インボイス制度によって、この業界は間違いなく深刻な損害を受けます。いえ、声優だけの問題ではありません。エンタメ業界、文化全般を守るためにも、今きちんと声を上げなければいけないと覚悟を決めました」
・免税事業者は「ズル」なのか
一方で、インボイス制度の話題になると、必ず聞こえてくるのが「そもそも消費税を納めていないのは不公平」「免税事業者はズルい」といった声だ。
消費者が支払った消費税が納付されず、合法的に事業者の手元に残る仕組み(益税)を問題視する意見は根強い。
「私たちの仲間にも、自分が免税事業者であることに負い目を感じている人が少なくありません。しかし免税事業者は税法に従っているだけで、本来は後ろめたく思う必要なんてないはずです」
「実は私も最初にインボイス制度のことを知ったときは、直感的に『自分がもらっているものを払うのは仕方がないのでは』と思いました。それでも、『ちょっと変かも』と感じてあらためて勉強してみたら、そもそも消費税という税制自体がおかしいということがわかってきたんです」
例えばフリーランスや個人事業主、税理士らでつくる「STOP!インボイス」のサイトは、消費税がモノやサービスの価格の一部であって、「消費者から預かったお金ではない」ことを指摘し、「ズルでもなんでもない」と強調。
「『消費税』という名前自体、誤解を生じさせる原因になっていますね。実際には消費に課税されるのではなく、事業者の取引活動に課税されているので、日本以外では『付加価値税』と呼ばれています」などと解説している。
・業界を守り、未来につなげるために
甲斐田さんは「制度の歪みを是正するために、インボイス制度を含めて政府が試行錯誤しているのは理解できますが、どれも根本的な解決になっていません」とした上で、「立場の弱い人たちが税を払うことによって生活が立ち行かなくなるなんて、本末転倒です」と力を込める。
「声優志望の若者はたくさんいますし、事務所も今は200くらいあります。でも、業界で輝いて目立っている人は本当に山の頂上付近にいる一握りだけで、しかも入れ替わりが激しい。アイドル声優の子たちも、本当に大変。みんなが上を目指して頑張っている、その大きな山の裾野をごっそりなくしかねないのがインボイス制度です」
「私は自分の仕事を裏方だと思っていて、これまで積極的には表に出てきませんでした。でも2019年の声優アワードで外国映画・ドラマ賞をいただいたことをきっかけに、この先輩方から受け継いだ業界をしっかり守り、次の世代につなげていこうという意識が強くなったんです。声優仲間の咲野俊介さん、岡本麻弥さんと始めたVOICTIONの思いも、その延長線上にあるのかもしれません」
甲斐田さんは、エンタメ業界にインボイス制度を歓迎する声は「皆無」だと言う。
実際、VOICTION以外にも、反対声明を出している団体は日本出版者協議会や日本漫画家協会、日本アニメーター・演出協会、日本SF作家連盟、映演労連など多岐にわたる。
また9月22日配信の朝日新聞の報道などによると、これまで制度に登録した個人事業主の名前(本名)が国税庁のサイトから誰でもダウンロードできる仕様になっていたが、“身バレ”を懸念する当事者たちの声を受け、公表方法が見直されることになったという。
「日本の文化を衰退させる一手を国が選んではいけません。ただでさえ日本は経済が低迷していて、エンタメ業界は制作費も激減。さらにコロナ禍で大打撃を受けています。インボイス制度が始まると小規模事業者の廃業が増えて、結果的に税収も減るのでは。『ちゃんと未来が見えていますか』と問いたくもなります」
・「政治的活動」がタブー視される社会から脱却を
VOICTIONを始めるまで、甲斐田さんは社会運動とは一切無縁だったそうだ。
「名前を出して活動することは、今も怖いです。一緒に声を上げようとした仲間の中には、クライアントから『政治的な活動をしてるんですか』『仕事がなくなるかもしれないからやめた方がいいですよ』とやんわり言われた人も…。私はVOICTIONを政治的な活動だとは思っていません。業界の未来のために、若い声優の生活のために声を上げているつもりです。でも、結局それは政治に直結しているから、“政治的”と見られてしまう。だとしても、政治的発言をすることが、どうしてタブー視されてしまうんでしょうか。私はできる限り声を上げて『反対した』という事実を残しておきたいし、政治的なことも堂々と言える社会になってほしいと願っています」
VOICTIONには、9月22日時点で829人の賛同者が集まっている。
そのうち声優は500人ほどといい、甲斐田さんは「今はまだ声を上げるだけで勇気が必要。仕事に影響するのではないかと恐怖を感じている人もいます」と明かす。
「でもそんな中、これだけの人たちが一緒に戦おうとしてくれているのは心強い。手を組んで大きなうねりをつくり、私たちの声を国に届けたいと思っています。皆さんにも関心を持っていただけると嬉しいです」
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「インボイス制度は日本のエンタメ業界を破壊する」 声優の甲斐田裕子が反対の声を上げる理由
2022.09.24 まいどなニュース
■ウーバーイーツ配達員男性が絶望…「インボイス制度」で「手取り収入」はこんなに激減する
週刊現代 2021.09.18 本多慎一
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「そんな制度、全く知りませんでした。自分はリストラにあって再就職もコロナで決まらず、仕方なく今年からウーバーイーツの配達員をやっています。今でもカツカツなのに、今以上に収入減となればどうすればいいのか」
こう途方に暮れるのは再来年から始まる「インボイス制度」の中身を聞いた増本さん(49歳・仮名)だ。
消費税が増税されてから間もなく2年がたつ。
コロナ禍もあって増税分の負担が増す消費者だけでなく、売り上げに打撃が出る事業者にとっても負担は大きいが、じつは2年後には多くの個人事業主にとって、とりわけて負担の大きい制度変更が追い討ちのように迫っている。
それが2023年10月から始まるインボイス制度(適格請求書等保存方式)である。
・納税分、実収入が減る
インボイス制度とは何か。
消費税の納税には、「仕入税額控除方式」という方法が使われている。
これは消費税の課税事業者が、年間売上高の消費税分から、年間の仕入時に支払った消費税分を控除して納税する仕組みだ。
しかし、現状では軽減税率や、年間売り上げ1000万円以下に認められた免税事業者の存在で、国庫に入る税金は少なくなり、正確性に欠けていた。
そこで今回、導入されるインボイス制度では、事業者は実際に支払った消費税額の証明となる、登録番号の付いたインボイス(請求書や領収書)の保存が義務付けられるようになった。
企業と取引する個人事業主(免税事業者)が登録番号付きのインボイスを発行するには、税務署で手続きをして、消費税の課税事業者になっていなければならない。
現在約500万人いるとされる免税事業者は、その多くが新たに課税事業者とならざるをえなくなり、消費税の納税分、実収入を大きく減らすことになりそうだ。
この課税事業者登録の受付がいよいよ今年10月から開始される。
・廃業を迫られる事業者も
インボイス制度に詳しい元静岡大教授の湖東京至税理士が解説する。
「課税事業者とならず、免税事業者のまま事業を続けることは可能ですが、仕事の発注元は消費税の控除ができなくなって収める税金が増えてしまいます。そうなると免税事業者は取引対象から外されるか、消費税分、値下げを要求される恐れがあります。ただ、現実には、発注元の経理の事務負担上の問題から、免税事業者の多くは取り引きから外されることが多くなると想定され、課税事業者への転換を余儀なくされるケースが増えるはずです。インボイス制度が導入されている欧州でも免税事業者制度はありますが、多くが課税事業者への鞍替えとなりました」
免税事業者はなんとか取引先に現状維持で泣いてもらうか、無理であれば新たに課税事業者になるか、値引きを受け入れるか、廃業するかの苦しい選択になる。
日本商工会議所が行ったアンケートでは、インボイス導入後、免税事業者のうち7.5%が「廃業を検討する」と答えている。
・ウーバー配達員への打撃
今後、影響を受ける免税事業者は多岐にわたりそうだ。
冒頭の増本さんのようなウーバー配達員や個人タクシー、建設の一人親方や零細農家、保険の代理業やITエンジニア、さらにはシルバー人材センターと契約して働く高齢者などである。
「領収書が必要な法人を相手に取り引きする免税事業者が大きな影響を受けると言っていいでしょう。ウーバー配達員についてはまだ会社が発表していないためどうなるか分かりませんが、仕入税額控除を受けられないとウーバー社の損失が甚大になるため、配達員は課税業者になるか、免税事業者のままなら配達手数料の値下げか、辞めるか、の選択になります。そもそもウーバーの事業自体、現時点で免税事業者に頼ったビジネスモデルなので、ビジネス自体、立ち行かなくなる可能性すらあります」(湖東税理士)
課税事業者になれば個人事業主にはどのような負担が待ち受けているのか。
消費税申告のための事務負担の増大はもちろんだが、なんと言っても、収入の元となる売上に税率がかかるので手取り減のインパクトは極めて大きい。
おそらく大半の個人事業主は、課税事業者に鞍替え後には、簡素な計算で済み、業種別に40?90%の「みなし」で仕入税額控除を受けられる「簡易課税制度」を利用するとみられるが、50%しか引けない業種も多く、平均的には1事業者あたり年間15万4000円の増税(財務省推計)になりそうだ。
・手取りはこれだけ減る
想定のケースでシュミレーションしてみよう。
例えば月20万円をウーバーイーツ配達員で稼ぐ個人事業主は、所得税、住民税、国民保険、国民年金など公的負担を引くと、手取りは月16万円になる。
しかし、課税事業者になってしまった場合、簡易課税制度(運輸業・第五種50%控除)を利用したとしても、年間の消費税納税額は10万9000円程度になり、月額では15万1000円までに手取りが減ってしまう。負担感は大きいものとなりそうだ。
前出の増本さんが落胆してこういう。
「インボイス制度の導入理由の一つに免税事業者の『益税』(免税事業者が納めていない分の税金)を無くすためと言われます。しかし益税が『けしからん』と言われても、我々個人事業主は、会社員より平均所得も少なくて社会保障も極めて脆弱です。業種によってはもともと安い契約を強いられている場合もあるでしょう。ギリギリで生きている人間ばかりなのだから、税金はもっとお金があるところから取る仕組みにしてほしいですね。ウーバーが続けられなくなったら、悔しいけど、パソナにでも登録するしかありません」
・そもそもなんで導入するの?
そもそもなぜ政府は弱い立場にある免税事業者を狙い撃ちにするような制度を導入するのか。
やはり2480億円と見込む税収増が狙いなのか。湖東税理士が真の狙いを指摘する。
「税収増はそこまで大きい額ではありません。それ以上に、消費税の納税をより正確にしなければならない事情があるのです。というのも、消費税は取り引きごとに納税が行われる『間接税』と思われていますが、実際には免税事業者がいたり、簡易課税制度も反映されたりする、かなりアバウトな仕入税額控除制度です。どちらかというと直接税的な性格の税金になっていて、これでは消費税率が上がるほど、不透明感が顕著になって間接税という前提が崩れてしまうのです。つまり、今回のインボイス制度の導入は将来的にさらなる消費増税への布石であると見ることもできます。政府や財務省は最終的には欧州並みの20%超を目指しているのだと思います。その過程でインボイスによる仕入税額が反映されない免税事業者がいることや簡易課税制度があっては困るのです。これらの制度を利用する小規模事業者の今後はかなり厳しくなるはずです」(湖東税理士)
今のところ、与党内ではコロナ禍の今でも、この制度の延期や廃止への動きは出てきていない。
消費増税は主に大企業が恩恵を受ける法人税減税分の穴埋めになっている、との批判もあるだけに、衆院選後の新政権には再考を期待したいが、果たして…。
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ウーバーイーツ配達員男性が絶望…「インボイス制度」で「手取り収入」はこんなに激減する
週刊現代 2021.09.18 本多慎一
■税理士団体がインボイス制度に異議 「消費税負担が生活を脅かすレベルになる」 IT職種への影響は
ITmedia 2022年06月09日
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消費税負担が生活を脅かすレベルになる──税理士の有志団体「インボイス制度の中止を求める税理士の会」は6月9日の会見で、「インボイス制度」に反対の立場をあらためて表明した。
同会の佐々木淳一税理士は「誰も得しない税金になる」と訴えた。
・そもそもインボイス制度とは?
インボイス制度とは、税額を適切に計算するため、消費税額の計算にかかわる請求書を「インボイス」という新型の請求書にする措置のこと。
2023年10月に導入される予定。インボイスには既存の請求書と同様の内容に加え、税率と税額、及び「登録番号」が記載される。
消費税の納税額は、売り上げに係る税額から仕入れに係る税額を引いた額と規定されている。
インボイス制度導入後は、仕入れに係る税額を計算するためにインボイスの保存が必要になる。
インボイスを発行するのは商品やサービスを提供する事業者(B2B取引では下請け)だが、発行には国税庁への登録申請(任意)が必要。
現在、課税売上高が1000万円以下の事業者は消費税の納税義務が免除されているが、インボイス発行事業者として登録すると、免税措置が受けられなくなる。
これに対し、インボイス制度の中止を求める税理士の会は「経理や税理士の事務負担が増加する」「免税事業者の取引が阻害される」として反対の立場を主張。Twitterなどを通じて賛同する税理士を集めている。
同会はインボイス制度に反対する立場で賛同者1000人を目標に活動する団体だ。
・下請けに不利な制度 デザイナー、配達パートナーなどに影響の可能性
同会の平井志穂子税理士によると、インボイス制度の影響を大きく受けるのは、B2B取引において下請側が免税事業者である場合だという。
下請側がインボイス発行事業者として登録する場合は、課税義務が発生し納税負担が増加する。
登録しない場合はインボイスを発行しないため、元請側が仕入れ税額として計上できず、元請側の納税負担が増加する。
「一般的には下請け側が登録して課税事業者にならなければ仕事を取れなくなる可能性が高い」(平井税理士)
影響する職業として同会が上げたもののうち、IT系に属するものは、Webデザイナー、Uber Eatsなどの配達パートナー、フリマサイト出品者、クラウドワーカー、アフィリエイター、及びそれらと取引のある元請企業などがある。
経費精算の場面でも、仕入れ税額を計算するため、買い物をする際には常に買い物先がインボイス発行事業者かどうかを確認する必要が生じる問題があるという。
経理は請求書ごとに登録番号の確認などの作業が発生するため事務作業が複雑化する可能性がある。
「現状、経過措置として(請求書には)8%、10%といった税率が表示されており、(インボイス制度の導入で)変わるのは登録番号の有無だけ。現行の領収書で適正に運用できているため、インボイス制度が必要な理由はない」(平井税理士)
「これまで所得税の申告も不要だった人でも、課税事業者になる可能性がある。(中略)年収300万くらいなら、消費税負担は年間15~20万くらいと、生活を脅かすレベル」(佐々木税理士)
インボイス制度の中止を求める税理士の会は今後、TwitterなどSNSを通じて、インボイス制度の認知拡大や、反対する税理士の募集などを進めるとしている。
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税理士団体がインボイス制度に異議 「消費税負担が生活を脅かすレベルになる」 IT職種への影響は
ITmedia 2022年06月09日
■零細自営業者からメルカリ主婦まで負担増に、手取り収入が激減する『インボイス制度』とは?
週刊女性 2022年4月19日号
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『インボイス制度』をご存じだろうか。
聞き慣れないこの言葉が、コロナで弱ったフトコロに大打撃を与えるというのだから、ただ事ではない。
元・静岡大学教授で税理士の湖東京至さんが解説する。
「インボイスとは、日本語に直訳すると請求書や領収書のこと。ヨーロッパでは、これらの書類に税務署に登録された番号が印字されていて、取引の場で使われています。この仕組みを『インボイス制度』といって、日本でも昨年10月から登録番号の申請が始まりました。本格的な導入が間近に迫っているのです」
インボイスは全事業者が対象となる。特に影響が大きいのは、年収や年間の売り上げが1000万円以下で、企業を相手に取引をしている『免税事業者』。
消費税の納税が免除されてきた人たちだ。
その業種は幅広く、全国1000万人超に上ると言われるほど。
「いちばん打撃をこうむるのはフリーランスで働く零細事業者たち。個人タクシーの運転手や『ウーバーイーツ』など食事の配達員、農業を営んでいる人、軽トラックで配達を請け負うドライバーなどが該当します。建設業の一人親方、生命保険の営業を行う“生保レディー”も含まれています。また、タニタが導入して話題になりましたが、社員と業務委託契約を結び外注するような場合もインボイスの対象となります」(湖東さん、以下同)
・インボイス導入後に“納税額が増える”ことも
フリーランスじゃない私には関係なさそう……と思ったそこのあなた、油断は禁物! インボイスは意外なところにまで影響してくる。
フリマサイトに手作りグッズを出品する主婦や、データ入力などの副業に励む会社員も無関係ではいられないのだ。
「こうした人たちの場合、取引の相手が結構大きな企業だということも珍しくない。インボイスが始まると、相手から“登録番号の書かれた請求書や領収書を発行してほしい。番号がなければ、わが社としては認められません”と言われる可能性があります」
なぜ登録番号が求められるのだろうか。
「これには消費税の仕組みが関係しています。私たちが払った消費税は、そのまま税務署に納められるわけではありません。実際には、企業は年間の売上高×10%から、年間の仕入高×10%を引いた金額を消費税として納税しています。引いた額が多くなればなるほど納税額は安くすむというわけです。ところがインボイス導入後は、登録番号付きの請求書や領収書でなければ、売上高から仕入高を差し引くことができなくなります。この控除を受けられなくなると、企業側の納税額が増えてしまいます」
そこで考えられる選択肢は3つ。
まず、1つ目は税務署に番号を登録し、免税事業者をやめて『課税事業者』になる。
2つ目は番号を登録しないで取引を続ける。
それから3つ目の方法として、「税金分を値引きするので、このまま仕事を続けさせてほしい」と交渉する。
「1を選んで課税事業者になると、消費税の納税と膨大な事務負担が待っています。税務署の調査に耐えられるようなきちんとした帳簿をつけて、7年間、保存しなければなりません」
・どの道待ち受ける負担地獄
課税事業者になると、いくら消費税を納めなければならないのか。
湖東さんがおおよその目安を教えてくれた。
「例えば、年間900万円の売り上げのライターがいたとします。簡易課税制度を使うと900万円の半分×10%で、納税額は45万円ぐらい。その分、手取り収入が減ることになります」
2を選んだ場合、企業が控除を受けられなくなるので嫌がられ、仕事を切られるおそれがある。
その風潮が1つの企業だけにとどまらず、業界全体に広がると、取引の輪から排除されかねない。
一方、3を選ぶと、値引きした分だけ売り上げや収入が減ってしまう。
どれを選んでも待ち受けるのは負担地獄……。
「ヨーロッパでは消費税のスタートと同時にインボイスが導入されました。免税制度も残されてはいますが、番号を登録しないと仕事が来ないので、みんな課税事業者になることを選んでいます。その結果、零細の免税事業者は廃業が続出、ほぼ淘汰されてしまいました。それを日本でもやろうとしているわけです」
・『インボイス制度』で影響を受ける事業者はこれだけ多い
一般社団法人『プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会』の最新調査によると、コロナ禍の前に比べて減収が見込まれる個人事業主は37%に上るという。
そこへインボイスが加わる打撃は大きい。
さらにいうと、日本では全企業のなかで中小企業が99・7%を占める。
そのうち約4割は年間売上高が1000万円以下。
そうした中小企業にとって、インボイスが大きな負担となることは想像に難くない。
「廃業や倒産が増えるおそれがあります。特に、すでにシャッター商店街が広がり工場の閉鎖も相次ぐ地方では、悲惨な状況になりかねません」
コロナ禍や物価高騰に苦しむ中小企業に追い打ちをかけかねないとして、3月30日、立憲民主党はインボイス制度の廃止法案を衆院に提出した。
政治の場でも、この問題がにわかに注視され始めている。
インボイスの導入にあたって湖東さんが危惧しているのは、消費税率の引き上げだ。
「政府はインボイスの必要性について、軽減税率が導入され、消費税が8%と10%の複数の税率になったことから、誰がいくら消費税を払ったのか明確にわかるようにしなければならないと強調しています。加えて財務省も、“消費税が2ケタの税率になったらインボイスを導入すべき、そうしなければ諸外国から認めてもらえない”などと主張しています。つまりインボイスは消費税率の引き上げにお墨付きを与えてくれる、その口実になる制度だということ。それがインボイスの真の狙いであると、私は考えています」
・制度廃止を求めるネット署名も
国会でも湖東さんと同様の疑念が持ち上がっている。
3月17日の参院予算委員会で山添拓議員から「(インボイス制度は)消費税率の引き上げを目指しているのではないか」との質問が出た。
これに対し、岸田文雄首相は「少なくとも消費税率について触れることは考えていない」と述べたが、この答弁を湖東さんはいぶかしむ。
「IMF(国際通貨基金)は日本の消費税率を'30年までに15%に引き上げ、さらに'50年までに20%にするべきと提言しています。そのうえでインボイスが導入されることを踏まえれば、岸田首相の在任中かどうかにかかわらず、消費税の税率を引き上げていくと考えるのが自然です」
このまま行けば、インボイスは来年10月から本格始動してしまう。
今の流れを押し返す方法はあるのだろうか。
「7月の参議院選挙を控えた地元の議員に、電話やメールで反対の声を伝えることをおすすめします。また、フリーランスや税理士らが『STOP!インボイス』という市民団体を立ち上げ、制度廃止を求めるネット署名を募っています。そこへ参加してはいかがでしょうか。今からでも打てる手はあるので、あきらめないことです」
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零細自営業者からメルカリ主婦まで負担増に、手取り収入が激減する『インボイス制度』とは?
週刊女性 2022年4月19日号
■軽減税率「インボイス」で零細業者が爆死する可能性
弁護士ドットコム 2019年8月10日 LINE NEWS
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・免税事業者のままだと、小さく生きていくしかなくなる
『大企業とは取引しないから大丈夫』とは思わないでください。
例えば、町の小さなお花屋さんでも、会社から『お祝いのお花をお願いしたい』と言われた時に『うちはインボイスが発行できない』と伝えると、『じゃあ他で買うわ~』となるかもしれないのです。
番号を取得して消費税を払う事業者になるのか、それとも免税事業者のままで個人客のみを相手にして小さく生きていくのか、小規模事業者としては大きな決断が必要になります。
また、インボイスには非常に事細かな内容を記載する上に、税率が2種類あるため、その事務量の負担感は倍以上のものがあります。
『当社は食品は扱わないので大丈夫』とはいきません。
食品を売らなくても、食品を買うことはどんな会社でも必ずあります。
そのインボイスを正確に会計ソフトに入力していく必要があります。
とても手で集計できるものではありませんし、ソフトへの入力であってもかなりの手間がかかります。
レジシステムの入れ替えのみならず、経理も自動化を推進するなどの取り組みが必要です。
中小零細企業ではITに詳しい人材に恵まれていないことも多く、この点でも小規模事業者が取り残されていくのではないかと心配です。
とはいえ、消費税はリレーして最後は国庫に納める性質の税金です。
消費税が誕生して30年以上が経過しました。
このあたりでインボイス方式が導入され消費税の原則に立ち返るべきでしょう。
軽減税率の導入をタイミングに自動化を含めた経理のやり方を見直していただき、インボイス導入の時を期限として、事業の方向性を決める準備を今からしていただきたいと思います
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軽減税率「インボイス」で零細業者が爆死する可能性
弁護士ドットコム 2019年8月10日 LINE NEWS
■「もうダマされない」
免税事業者は収入減?個人事業主を痛めつけるインボイス制度の恐ろしさ
Business Journal 2022.07.07 垣田達哉
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参議院選挙の与野党の政策で、真っ向から対立している一つが「消費税」です。
立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社会民主党の野党4党は6月10日、消費税減税法案(消費税の減税その他の税制の見直しに関する法律案)を共同で提出しています(法案は審議未了)。
その法案には、時限的な消費税減税と共にインボイス制度(適格請求書等保存方式)の廃止が盛り込まれていました。
どうして野党4党が廃止を要求しているかというと、低所得の個人事業主への影響が大きいからです。
インボイスと聞いても一般の人にはなじみが薄いですが、フリーランスのような個人事業主の多くの人には「減税の恩恵がなくなること」と「今まで通りの仕事ができない恐れがある」ので、かなり切実な問題です。
当事者は危機感がない
インボイス制度は、正規社員やパート社員、アルバイト社員のように雇用契約(非正規雇用も含む)を結んで給料(賃金)を得ている人は対象外です。
給与・賃金には消費税が含まれていないので、収入が給与であれば関係ありません。
現在、事業者は課税事業者(消費税を国に収めている事業者)と免税事業者(消費税を納めなくてもよい事業者)に分かれています。
年間課税売上高(課税の対象となる売上)が1,000万円を超す会社や個人は、自動的に課税事業者になるので消費税を納める義務があります。
一方、1,000万円以下の場合は免税事業者なので消費税を国に納める必要はありません。
インボイス制度の目的は「1,000万円以下の事業主にも、できれば課税事業者になってもらう」ということです。
対象は、フリーランスのように雇用契約を結ばず仕事をしている、収入(売上)が1,000万円以下の事業主です。
そういう人たちが「免税事業者であり続けるのか、それとも課税事業者(消費税を納める事業者)に変更するのか」という判断を迫られる制度なのです。
2023年10月からスタートしますが、あまり話題になっていないことや、取引先(仕事の発注先)から「どちらになるのか」という問い合わせを受けていない個人事業主がほとんどなので、当事者の人たちに危機感がないのが現状です。
益税ではなく弱者救済策
私たちが商品を買う場合、小売店などの事業者(売り手)には商品代金と共に消費税も支払っています。
フリーランスのような個人事業主(売り手)に仕事を発注する事業者(買い手)も、報酬と共に消費税も支払っています(ただし、買い手が免税事業者等の場合は異なります)。
例えば、10,000円の商品を納入した(あるいは仕事をした)時、納入先からは10,000円+1,000円(消費税10%の場合)=11,000円が報酬として支払われます(源泉徴収税が引かれることもあります)。
ところが、免税事業者は、この1,000円を国に納めることなく利益とすることができます。
国に納める消費税を納めなくても構わない(合法なので違反ではありません)ので、この収入を「益税」と呼ぶこともありますが、小規模事業者に対する減税扱いになっているので、法律上は免税事業者といいます。
「小規模事業者は苦しいでしょうから、特別に減税措置をします」という趣旨です。
例えば、年間収入が500万円の事業者は、その10%である50万円前後の消費税も収入になっています。
本来、国に納めるべき消費税である50万円分を免税措置で納めなくてよかったのですが、今後は「原則それを納めてください(課税事業者に登録してください)」ということになるのです。
課税事業者になるか免税事業者になるかは選択できるが……
インボイス制度では、今まで通り今後も免税事業者のままでいるのか、預かり消費税を国に納める課税事業者になる(登録する)のかを、原則23年5月までに選択しなければなりません。
今まで通り免税事業者として預かり消費税を国に納めなくても構わないのですが、免税事業者になると不利になることが予想されています。
例えば、課税事業者であるA社が10,000円の商品(非食品)を消費者に販売した場合、消費者から10,000円の代金と1,000円の消費税を受け取ります。
この商品の仕入額が8,000円の場合、A社(買い手側・発注する側)は仕入業者(売り手側・フリーランスのような仕事を請け負う個人事業主)には代金の8,000円と消費税の800円を支払います。
現在は、A社は受け取った消費税1,000円のうち、仕入業者に支払った800円との差額の200円を国に納めています。
ところが、インボイス制度がスタートすると、仕入業者が課税事業者の場合は、買い手側(仕事を発注する側)が仕入業者に支払った800円の消費税を国に納めてくれるので、今まで通り、200円の消費税を国に納めればよいのですが、仕入業者が免税事業者の場合は、買い手側(仕事を発注する側)が、免税事業者が支払うべき消費税800円を立て替えて国に納めなければなりません。
買い手側は、仕入業者(売り手側)に免税事業者が多いと、立て替えて支払う消費税が非常に多額になるので、できるだけ課税事業者と取引をしたいはずです。
そうなると、免税事業者には仕事を依頼しなくなる可能性があります。
もう一つの懸念は、仕入業者が免税事業者の場合、買い手側が今までは税抜10,000円だった仕入商品を、税込10,000円、あるいは10,000円以下と、実質値下げを要求する可能性があることです。商品(仕事)を発注する側は、どちらの場合も、あからさまに行うと「優越的地位の濫用」となり独占禁止法違反に問われることになるので、「他の事業者に変更した」とか「物価高騰で不景気なので値下げしてくれないかといった要求をする」ことになるかもしれません。
もちろん、免税事業者の消費税を立て替えてでも、従来通りの金額で取引をしたいということもあるでしょうが、「今まで通り免税事業者でも心配ない」と強気でいられる売り手側は少ないでしょう。
領収書を発行する飲食店や個人タクシー、文具店も要注意
課税事業者になるか免税事業者になるのかの踏み絵を突き付けられる個人事業主は、フリーランス、演劇・映画・音楽・出版関係等、ライター、脚本家、構成作家、カメラマン、エンジニア、プログラマー、コンサルタント、カウンセラー、デザイナー、Webデザイナー、建設業関係の一人親方、スポーツ選手、学習塾、料理・ヨガ・音楽・英語教室等、生命保険・損害保険・モバイル関連の代理店等、多種多様な分野に及びます。
その他、注意しなければならない業種として、顧客である会社に対し、経費の証明として領収書を発行する飲食店や個人タクシー、文具店、雑貨店などがあります。
会社の経費で処理する場合も、インボイス制度が大きく関係してきます。
課税事業者である企業の社員が経費を使った場合、会計処理上必ず領収書が必要になりますが、購入先の事業者が課税事業者なのか免税事業者なのかを明確にしなければなりません。
インボイス制度がスタートすると、領収書発行者が課税事業者か免税事業者なのかで、会計処理が変わってきます。
例えば、飲食店が免税事業者の場合、領収書を受け取った企業は、飲食店が支払う消費税分を立て替えて国に納めなければなりません。
そうなると、課税事業者である企業は、経費を使用する事業者が免税事業者であるよりは課税事業者のほうが負担は少なくなります。
つまり「課税事業者の店で使った経費しか認めない」ということになりかねません。
課税事業者かどうかは、領収書や請求書に登録番号が記載されているかどうかで判断できます。
登録番号の記載がなければ免税事業者になります。
インボイス制度で打撃を受けるのは、フリーランスだけではありません。
商品を販売する、サービスを提供する、技術・才能を提供するなど、何らかの形で収入を得ている人・中小企業すべてに影響するのです。
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「もうダマされない」
免税事業者は収入減?個人事業主を痛めつけるインボイス制度の恐ろしさ
Business Journal 2022.07.07 垣田達哉
■インボイスの前にこのボイスを聴け【小松泰信・地方の眼力】
JAcom 農業協同組合新聞 2022年10月26日
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・インボイス制度が免税事業者に迫るもの
インボイス(invoice) とは「送り状」や「請求書」を意味するが、消費税の仕入税額控除方式(後述)として2023年10月に導入予定の「適格請求書等保存方式」の通称となっている。
軽減税率の導入を契機に、10%と8%の複数税率に対応した、税金の発生を証明するために、消費税を受け取る「売り手」側の事業者が、「買い手」側にインボイスを発行する。
商品やサービスを販売した事業者は、受け取った消費税から、材料などを仕入れたときに支払った消費税を、差し引いた額を納税する(いわゆる「仕入税額控除」)。
これまでは帳簿があればこの控除が認められていたが、インボイス制度が実施されれば、インボイスがなければ「仕入税額控除」が認められなくなる。
その分、納税負担が増すことになるため、インボイスを発行できない業者との取引をやめ、インボイスを発行する事業者との取引を行うか、税金部分の値下げを要求することが想定される。
年間課税売上高が1千万円以下の消費税納税を免除されている「免税事業者」は、このインボイスを発行できない。
免税事業者は、生き残るために課税事業者になるか、廃業の可能性をはらみながら免税事業者のままでいるか、二択を迫られる。
浦尾広明氏(税理士)は、「免税事業者が課税事業者になったとしても、複雑なインボイスを発行するシステムの導入費用や維持費がかかります。個々の取引でインボイスを発行することは、とくに零細な事業者には重い事務負担となります。罰則も大変重くなっています」と、課税事業者に生じる負担の重さを指摘する(しんぶん赤旗日曜版、9月25日付)。
財務省によれば、「事業者免税点制度」と呼ばれる免税制度の趣旨は、「小規模な事業者の事務負担や税務執行コストへの配慮から設けられている特例措置」とのこと。だとすれば、「事務負担や税務執行コストへの配慮が不要になった」理由について、丁寧な説明が求められる。
・政府は苦しむ人の声を聴け
すでに、しんぶん赤旗(2021年9月27日付)は「主張」で、「個人タクシー業者は、免税業者のままでいれば、インボイスを必要とするビジネス客から利用を避けられ、旅行会社から発注を打ち切られかねない」「シルバー人材センターで働く70万人の会員は、センターから業務を委託される個人事業主。センターが仕入税額控除をするには会員のインボイスが必要。平均年収40数万円の会員が課税業者になって消費税を負担させられるか、報酬から消費税分が引かれる可能性がある」「9割が免税業者の農家や、ウーバーイーツの配達員など単発で仕事を請け負うフリーランス、文化・芸術・イベント分野で働く人たちも同じ影響を受けます」と、それが及ぼす悪影響を示し、「政府はこの声に耳を傾けるべきです。インボイス制度の中止はもちろん、コロナ禍で納税困難な業者には消費税を減免することこそ必要」と訴えた。
・農業に及ぼす看過できない悪影響
農業者に関わる主な特例として次のふたつがある。
(1)農協特例:農業者が農産物を「無条件委託方式・共同計算方式」でJAに販売委託をしたとき、農業者はインボイスの発行を免除される。
(2)卸売市場特例:JAへ販売委託した野菜等が卸売市場で実需者に販売されるとき、農業者はインボイス発行を免除される。
この特例措置を踏まえつつ、日本農業新聞(9月26日付)は、子牛市場での取引は「卸売市場特例」の対象外となるため、「繁殖農家は子牛価格の下落を不安視する。インボイスを発行できない繁殖農家から子牛を仕入れる可能性がある肥育農家は、納税負担の増加に気をもんでいる」などの例をあげ、政府に万全の対応を求めている。
農民連(農民運動全国連合会)が出している新聞「農民」(10月24日付)は、「そもそもインボイスは免税事業者つぶしの制度です。財務省は免税事業者の4割が課税事業者になることを選択し、2480億円の税収増になると見込んでいます。こんな制度を許すわけにはいきません」と、怒りと危機感をあらわにしている。
「インボイスが発行できなければ取引から排除されるか、『消費税分の値下げを』などと迫られるおそれがあります」
「農業法人では、従事分量配当を行うために法人の構成員みんながインボイスを発行しなければなりません」
「酪農家や肥育農家は事業規模が大きいので課税事業者になっています。仕入税控除をするため、酪農ヘルパー・個人獣医・受精師・削蹄師などからインボイスを発行してもらう必要があります」
「堆肥センターへの牛糞持ち込みや、逆に堆肥散布の作業委託料、中古農機具の下取りでもインボイスが必要です」
「小規模の繁殖和牛農家は子牛のセリの時に、インボイスの有無で販売価格に差がつく可能性があります」
「農協特例は『無条件委託販売・共同計算』が原則で、支払われる米代金は、どの農家も同じです。その結果、インボイス発行のために課税事業者になった農家は、受け取った米代から消費税を納税することになります」
「慌ててインボイス発行のために一度課税事業者になると、農業経営が赤字でも消費税が発生し、来年の12月1日までに登録取り消しの届け出を出さないと、2年間は消費税を払い続けなければなりません」
「産直センターも出荷する免税農家の対応で苦しい判断を迫られており、インボイスで経営基盤を根こそぎ壊されかねません」
ここに示された問題点は、看過できない悪影響を農ある世界に及ぼすことになる。
農協特例や卸売市場特例ごときのあめ玉で済むはずはない。
政府与党に「万全の対応」を求めても、子どもだましのあめ玉がほんの一握りの熱烈支持者に渡されるのが関の山。
・STOP!インボイス
「農民」は、「免税制度は小規模の農家経営を守る制度であり、権利です。この免税制度がなくなれば、家族農業は営農の権利を奪われ、経営をやめるしかありません」と記している。
この指摘は、家族経営に限らず、わが国約500万の免税事業者に共通することである。
たかが2480億円の税収増と引き換えに、免税事業者の多くを苦境に陥れ、最悪の場合廃業に追い込むことが、いかに愚かしいことかは明らかだ。
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インボイスの前にこのボイスを聴け【小松泰信・地方の眼力】
JAcom 農業協同組合新聞 2022年10月26日
■欠陥あり!国をつぶすインボイス制度 玉田樹
週刊エコノミストオンライン(毎日新聞) 2022年11月28日
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消費税のインボイス制度が来年10月から実施される。
消費税率10%への引き上げと軽減税率8%の導入に伴って実施が決まった制度で、昨年10月からインボイス発行事業者の登録も始まっている。
しかし、インボイス制度には欠陥があり、年間売上高1000万円以下の零細事業者が取引から排除されかねない。
この制度がそのまま実施されれば、この国は確実につぶれてしまうだろう。
・零細事業者を取引から排除しかねない
これまで、年間売上高1000万円以下の事業者は「免税事業者」として消費税の納税が免除され、消費税が「益税」として零細事業者の懐に入っていた。
インボイス制度の導入は、この益税を表にさらすことにあるとみている。
大きく問題となるのは、消費税を納税している「課税事業者」と免税事業者の取引における、課税事業者の消費税計算の仕組みである。
消費税はもともと、事業活動の中で「販売時に受け取った消費税」から「仕入れ時に支払った消費税」を差し引いたうえで納税する。
これを「仕入れ税額控除」と呼んでいる。例えば、消費税率10%で8万円の商品を仕入れ、それを10万円で販売した場合、消費税納税額は「販売時消費税(10万円×10%=1万円)?仕入れ時消費税(8万円×10%=8000円)=2000円」となる。
しかし、インボイス制度が始まれば、仕入れ税額控除をするためには、仕入れ先の事業者からある種の証明書を発行してもらう必要がある。
この証明書が国税当局から付与される「事業者登録番号」を記載した消費税の「適格請求書」(インボイス)である。
しかし、このインボイス制度では事業者登録番号は自ら申告しない限り、年間売上高1000万円以下の零細事業者には付与されない。世の混乱を招く原因はここにある。
年間売上高1000万円以下の零細事業者が、今後も免税事業者を選択する場合には、事業者登録番号を取得できない。
そのため、ある課税事業者が免税となる零細事業者から8万円で仕入れ、それを10万円で販売した場合、この課税事業者の消費税納税額は「販売時消費税(1万円)?仕入れ時消費税(0円)=1万円」となる。
仕入れ時の消費税がゼロになるのは、零細事業者が適格請求書を発行できないからである。
・「益税」はごくわずか
その結果、この零細事業者と取引する課税事業者は、仕入れ税額控除ができなくなり、本来2000円で済む消費税を1万円納めなければならない。
これでは困るため、課税事業者は①零細な事業者とは取引をしない、②零細事業者からの仕入れはあらかじめ10%の値引きを求める、③取引先の零細事業者に「適格請求書」を発行できる課税事業者になるよう要求する、④販売価格を10%値上げする──の四つから選択を迫られる。
政府はインボイス制度の導入によって、零細事業者が自発的に③課税事業者になることを選択し、「益税」がなくなることを期待している。
しかし、そうした期待とは別に、課税事業者が零細事業者に②や③を強要することが起こりうる。
ただし、これは独占禁止法の「優越的地位の乱用」に当たる可能性が高いため、実際には課税事業者は①を選択せざるをえない。
つまり、この制度の導入によって、零細事業者“いじめ”が始まるのである。
年間売上高1000万円以下の零細企業は、日本の企業全体の4割を占めている。
これらの企業が、仕事から締め出される社会が生まれるのである。
益税と見なされているのは消費税全体のわずか0.5%(売上構成比=消費税構成比)にすぎない(表)。
社会全体を壊してまでそれを徴収することにどれほどの意味があるのか、問われて当然と考える。
また、フリーランスや起業者を生みにくい社会を作る。
サラリーマンがすべてではないという社会が芽生え、フリーランスとして働く人が増えている。
2020年の国勢調査によれば、従業員のいない個人事業主の起業者は就業者全体の6.4%と年々増えている。
また、ランサーズの調査によれば、副業などを含めた広義のフリーランスは21年時点で約1670万人で、全体の3割に近い。
しかし、インボイス制度によって零細事業者を取引から排除することは、フリーランスや起業家が生まれにくい社会を作るだろう。
国は「スタートアップ企業10倍増」を目標に動き始めたが、インボイスはこれに大きな水を差すことになる。
さらに「『デジタル田園都市国家構想』は地方から」の足を引っ張り、これからの産業を担う新しい起業の芽を摘むことで将来は真っ暗となる。
・シルバー人材センターも
また、生涯現役時代に向け、65歳以上の人が「雇用」にこだわることなく、「起業=自己雇用」する社会も生まれている。
起業者は就業者全体の6.4%だが、65歳以上では18.7%にもなり、起業者全体の44%を占めている。
今後、免税事業者として事業がおぼつかなくなれば、シニア起業も困難にする。
高齢者の起業意志をくじくだけでなく、社会保障の体系をゆがんだものにする。
「人生百年時代」など冗談となる。
農業はインボイス制度の「適用除外」のため問題はないと思っている人が多いが、間違いである。
「適用除外」を受けるのは、農家が農協に無条件で農産物の販売委託をした場合に限られる。
農産物直売所や、都会のスーパーなどと直取引する免税事業者の農業者は取引ができなくなる。
これは裏返せば、一般農業者の零細事業者との取引が困難になることを意味する。
地方における高齢者の優れた活動主体であるシルバー人材センターの経営も厳しくなるだろう。
60歳以上が会員であるシルバー人材センターの消費税は、仕事依頼者から受け取った販売時消費税から会員が請け負った仕事への仕入れ時消費税を引いて納めることになるが、会員が零細事業者であるため、センターは仕入れ税額控除ができずに消費税の負担が増し、経営が行き詰まることになる。
日本商工会議所のアンケート(21年11月)によれば、課税事業者は免税事業者からの仕入れについて「取引は一切行わない(7.4%)」「一部を除いて取引は行わない(4.3%)」「(仕入れ時消費税の一定割合が控除可能な) 経過措置の間は取引を行う(9.1%)」と、合わせて2割の事業者が「取引を行わない」という態度を明確にしている。今後、インボイス制度の周知が進めば、その割合は急上昇するだろう。
このように、インボイス制度の問題が多数指摘されているにもかかわらず、国は逃げの一手のようだ。国民がなぜ、インボイスごときで起業する意志を奪われ、これまで順調に育ててきたものを失い、立派に運営してきた組織や会社をつぶさなければならないのか。
国はこれに答える責任がある。
“だんまり”を決め込んでいては事は解決しない。
ここまで事態がはっきりしてしまえば、インボイス制度に「欠陥」があることを認め、もはや政治が前面に出てこれを正さなければならない場面である。
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欠陥あり!国をつぶすインボイス制度 玉田樹
週刊エコノミストオンライン(毎日新聞) 2022年11月28日
■納税免除ルールを無効化、財務省の「インボイス制度」が日本経済を破壊する
週刊ダイヤモンド 2022.11.14 室伏謙一
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・「インボイス制度」の実態は
来年、2023年10月からインボイス制度が導入される。この制度は、中小・零細事業者、いわゆるフリーランスと呼ばれる個人事業主に多大な影響を与えるものであり、地域経済の破壊、ひいてはこの国の社会経済の基盤をも崩しかねないものである。
しかし、その実態はおろか、制度の概要についてすら多くの国民に知られていないというのが実情である。
そうした中で、インボイスの導入による影響を直接、モロに受けることになるフリーランス事業者や税理士を中心に、まずはその制度の実態をより多くの人に知ってもらい、制度の導入阻止につなげるべく、「STOP!インボイス」が結成された。
これまで同団体は、インターネットなどで積極的な問題提起や周知活動、与野党を問わず国会議員への働きかけ等を行ってきた。
筆者も、自らのYouTubeチャンネル「霞が関リークス」での団体関係者との対談動画の収録・配信や、同団体によるインターネットラジオへの出演等、微力ながら支援・協力を行ってきた。
そうした中で、去る10月26日、同団体による大規模な集会として「STOP!インボイス日比谷MEETING」が東京都千代田区の日比谷公園の野外音楽堂において開催された。
この集会に筆者もゲスト・スピーカーとしてお声がけをいただき参加し、インボイスの問題点について発言してきた。
もっとも発言時間が限られていたので、網羅的に解説することは困難であった。
そこで、本稿において、インボイス制度とは何であり、何が大いなる問題であるのかについて解説することとしたい。
インボイス制度とは正確には適格請求書等保存方式であり、「仕入税額控除制度の適用を受けるために、原則として、適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書又は適格簡易請求書の保存が必要」とされ、そうした「適格請求書等を交付しようとする課税事業者は、あらかじめ適格請求書発行事業者の登録を受ける必要がある」というもの(財務省「令和4年度税制改正の解説」中、「消費税法等の改正」より)。
つまり、仕入税額控除を受けたいのであれば、適格請求書発行事業者の登録を受けなければいけないということなのだが、この適格請求書発行事業者の登録というのがくせもので、その登録は、なんと課税事業者であることが前提とされている。
消費税については、年間の売上高が1000万円以下の事業者については納税義務が免除されている。
ところが、適格請求書を発行するためには、納税義務が免除されている事業者であっても、消費税の課税事業者とならなければならないのである(財務省も先に引用した解説において、「免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には課税事業者となる必要がある」とはっきりと記載している)。
課税事業者は、当然のことながら仕入税額控除を受けたいわけであるから、取引先には適格請求書の発行を求めることになる。
しかし、免税事業者であれば、その発行ができない。
ということになると、免税事業者との取引を避けるようになるか、取引先の免税事業者に発行事業者としての登録をするように求めるか、ということになる。
取引を継続したい免税事業者は発行事業者としての登録を受ける、すなわち消費税課税事業者となるという選択肢を選ばなければならなくなる。
しかし、免税事業者は売上高が1000万円以下の事業者であり、消費税法においても免税事業者については「小規模事業者」と規定されている事業者である。
その少ない売り上げの中から10%を徴税されることになるわけであり、売り上げは減少するわけであるから、打撃は少なくない。
そんなことは冗談ではない、あくまでも免税事業者でいようということになれば、適格請求書の発行ができなくなり、当該請求書を求める取引先からは取引を停止させられる可能性も出てくるし、新たな取引を始めようとしても、適格請求書発行事業者ではないことを理由として取引を断られることになるかもしれない。
そうなれば、売り上げは減少し、小規模事業者は窮地に立たされることになる。
つまり、インボイス制度の導入は、「小規模事業者に係る納税義務の免除」の規定、すなわち売上高1000万円以下の事業者の免税規定を事実上空文化させることになるということである。
ということは、売上高にかかわらず、事実上全ての事業者が消費税の納税義務者になるということであり、そこに本制度導入にいそしむ財務省の本当の意図があるのではないか。
加えて、適格請求書発行事業者との取引が半ば強制されることにもなりかねず、そうなれば近代法の原則であり、民法にも規定された契約自由の原則に反することになる。
これほどにこの制度は問題が多いばかりでなく、我が国社会経済に大きな影響、悪影響を及ぼすものなのである。
・そもそも中身がわかりにくいインボイス制度
しかし、ここまで拙稿を読まれた読者の中で、こうしたインボイスに関する事実をご存じだった方はどのくらいおられるだろうか?
関心の高い方は既にいろいろと調べられたり、勉強されたりしているかもしれないが、多くの方がこうした事実や、自分たちへの影響等についてご存じなかったのではないだろうか。
その背景としては、「インボイス」というわかりにくい、具体的中身が見えないカタカナ語によって、その実態が誤魔化されてきたことがあるだろう。
単にインボイスとだけ聞くと、「ただの請求書でしょ」と思ってしまう人が少なくないようで、筆者もある友人にこの話をしていたときの反応がまさにこれだった。
つまりは、こうすることで危機感を持たせない、中身を知らせずにシラーッと導入してしまおうとしてきたということだろう。
いや、そうはいっても消費税は消費者が負担して、事業者はそれを預かっているだけで、本来国に納めるべきものなのだから、全事業者が納税して当然ではないか、という意見も聞かれるようになっているし、そう考えている国民は少なくないだろう。
しかし、これは誤った理解である。消費税の納税義務者はあくまでも事業者であって、消費者ではない。
何かモノを購入するときの消費税はあくまでも価格の一部を構成するものでしかなく、消費者が消費税を直接的に払っている、直接的に負担しているわけではない。
したがって、かつて言われたような消費者からの「預かり金」ではない。
十数年前だったか国税庁は、消費税は消費者からの預かり金であると誤認させる、うそのポスターやCMを作って、そのうそを流布させていたが、国会での指摘や消費税を巡る訴訟での確定判決を受けて、シラッとやめてしまった。
そもそも消費税法第5条には事業者が納税義務者である旨記載されている。
それにもかかわらず、財務省は「預かり金」といううそを積極的に訂正するようなことはせず、そのまま放置し続けている。
国民が勘違いして「俺たちが払った消費税を納めない事業者はとんでもない。インボイス導入で全員払え」という方向に持っていこうとしているかのようだ。
極めて悪質な話である。
そもそも消費税は社会保障のためだけの税制ではなく、何にでも使える便利な第二の「サイフ」としての「第二法人税」か「第二事業税」のようなものであり、極めてタチの悪い税制と言っていいだろう。
社会保障のためだけではないと書いたのは、消費税法においては消費税の使途も目的も法定されておらず、「趣旨等」として想定される使途の例が記載されているだけ。
だいたい社会保障のための財源というのであれば消費税を全て繰り入れる特別会計が存在しなければならないが、そうしたものはない。
実際、安倍首相(当時)も、第198回国会(常会)の施政方針演説において、消費税率を5%から8%に引き上げた際に、増税分の5分の4を国債の償還に充てていたことを明言し、これを反省して使途を見直すと述べている。
要するに、インボイス制度以前に消費税自体が極めてタチが悪く問題のある制度ということであり、その悪い制度の悪さをさらに拡大するのがインボイス制度であると言ってもいいだろう。
本来は消費税自体が廃止されるべきであるが、少なくとも、百害あって一利なしのインボイス制度、適格請求書等保存方式は「絶対に導入させてはいけないもの」だと筆者は考えている。
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納税免除ルールを無効化、財務省の「インボイス制度」が日本経済を破壊する
週刊ダイヤモンド 2022.11.14 室伏謙一
■インボイス制度で契約打ち切り? 懸念募らす個人業者
インボイス
日本経済新聞 2022年3月5日
■声優・個人タクシーは廃業危機、シルバー人材センターに税負担200億…インボイス導入の悪夢
個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴
ダイヤモンド2023.1.17 藤田章夫
■消費税ゼロ%で救える命。コロナ恐慌で死ぬ間際にも黙って10%を払い続けるのか?
日本の内需を破壊し、日本の景気を破壊し、日本の経済を破壊するのが消費税――
まぐまぐニュース 2020年4月13日 鈴木傾城
■「消費税の増税がなければ日本は豊かなままだった」京大教授がそう嘆くワケ
給料が減って、経済成長も止まった
PRESIDENT Online 2021/05/20
■「消費減税」が経済政策の常識である明白な理由
ドイツ、イギリス、ベルギーなどは消費税減免を実施。
この3ヵ国のほかにも、20ヵ国
ダイヤモンドオンライン(2020.8.4)
■米国が今も消費税を導入しない「もっともな理由」
PRESIDENT(2013年9月30日)岩本沙弓
■消費税廃止でニッポン復活!~消費税を引き下げた国~
・マレーシアはゼロ達成
「世界に視線を向けると消費税の廃止や減税は必ずしも無謀なことではない」
「日本の消費税にあたる物品・サービス税の廃止で税率を6%から0%にしている」
日刊ゲンダイ(2019/7/25)
■消費税増税決断の裏に国際金融市場の思惑あり
ライブドアニュース 2013年11月28日 ネットマネー
■ふざけるな! 政府税調「消費税増税」大合唱の不可解 日本だけ物価高に苦しむ庶民に追い打ち
日刊ゲンダイ:2022/10/27
■消費税は社会保障に 実際は大企業や高額所得者の減税穴埋めに?
~元国税が暴露。「消費税は社会保障のため不可欠」が大ウソな理由~
ライブドアニュース2018年11月20日
■政府やメディアが刷り込んだ“消費税の目的”の嘘
“社会保障の充実と安定化”のための増税という謳い文句とは正反対の現実
論座 2019年09月20日
■元財務官僚「消費税引き上げは本当は必要ない」
「1000兆円の借金」という大ウソ
PRESIDENT Online 髙橋 洋一 2019/09/18
■消費増税の「ヤバい真実」…40人のエコノミストが明かす衝撃の中身
元日銀総裁、元内閣参与らが緊急提言
小川 匡則 週刊現代
■望ましい緊急対策トップは消費税減税43%
「望ましい緊急経済対策は「消費税率を引き下げる」が43・4%でトップ。現金給付32・6%、商品券給付17・8%と続いた」
共同通信社 2020/3/28
■大金持ちに「富裕税」をかけたら、社会はここまで変わります
~アメリカでは導入に現実味が出てきた~
・中間層以下が資産を持つ方が消費は拡大する
週刊現代(講談社)2019.12.25
■インボイスによって小規模事業者は取引から排除され、あるいは増税され、廃業に追い込まれる
YouTube 2022/05/25
■「インボイス導入の大義名分が根底から崩れたので、弱い者いじめの単なる増税です」
YouTube 2023/02/15
■インボイス制度が日本経済を破壊する?
YouTube 2022/10/02
■「STOP!インボイス」弱者を攻撃する増税を阻止せよ![三橋TV第529回]小泉なつみ・三橋貴明・高家望愛
YouTube 2022/04/04