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私が旅を続けるワケ

私は旅行が好き。

でも、幼い頃にあちこちに連れて行ってもらったわけでもない。
むしろ、母子家庭だったのもあって、旅行と名のつくものには縁遠かったかもしれない。

覚えているのは、母の仕事仲間との慰安旅行に一緒に連れていかれ(たという認識)、帰りの峠道でキツネの親子を見たこと。

そのくらいだろうか。


私が初めてプライベートで〈旅行〉をしたのが、20歳の時。
上京した友人に会うのと大好きなアーティストのコンサートに行くのが目的だった。
この時は初めてで、景色やそういう類のものに意識を向ける余裕はなかった。
唯一覚えているのは、夏の代々木公園でスカートを履いて行ったばっかりに、両足計200ヶ所以上を蚊に刺されて帰ってきた、ということだ。
刺されて変形した自分の足と、私の足を見たお医者さんが「ヒッ」と声を漏らして椅子ごと後ずさった光景を、今も覚えている。


そして私は、出産・育児に追われる毎日の中で、「景色を楽しむ」ということを、少しずつ忘れていった。
自分の中に、「風景」「景色」という言葉がはなから存在していないような感覚にもなっていた。

そんな私が景色というものに心を奪われたのは、数十年ぶりの一人旅の時だった。


子どもたちと旦那さんに後を任せて、たった1人で乗った飛行機。
離陸し、ぐんぐんと高度を上げていく。
気圧差で耳が塞がったような感覚になる。

しばらくして安定飛行に入った頃、私はふと外に目をやった。

そこには、見渡す限り一面の青空が広がっていた。

たまに見るようなスカイブルーではない。
シアン、ターコイズブルーのような、目の醒めるような青空。

そこに、飛行機の片翼が差し伸べられている。
その翼は時折パネルを開閉させながら、そこに広げられていた。


綺麗だなぁ。


素直に、そう思った。
それ以上の言葉が見つからなかった。


日々の忙しさから離れたくて決めた1人旅なのに、その風景を見ていたら、

「子どもたちにも見せてあげたいな」
「今度は子どもたちと飛行機に乗ろう」

そんなことを考えていた。


私は旅が好き。
中でも、乗り物に乗るのが特に好きである。
どこにいくのか、何が待っているのか、そんなワクワクが好きなんだなぁと思う。

1人でそれを味わうのもいいけれど、時には誰かとそれを一緒に味わうのもいいかもしれないな。
はじめてのことに驚いたり、好奇心をかきたてられている顔を見るのも、またいい。

いつか必ず、あの青空を。
見せてあげたい。


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