満月の夜、話をしたいのは誰でも良い訳じゃない愛しさと切なさと心細さと
ひとりふらっと立ち寄ったラーメン屋さんで食べたラーメンが驚く美味しさだった嬉しさを表現する方法は、お店を後にする時、若干熱を帯びた発声で『ごちそうさまでした』と言う以外に無い。再び食べに行ったとして、自分の体調や作る人の調子や気温・湿度等等。全ての要素が相まって起こった奇跡の1杯だった可能性もあるからだ。ある日の贈り物みたいなサプライズは、宇宙の秘密は緻密な蜂蜜的刹那を感じられる。食す側からすると毎度が期間限定メニューなのかも知れない。
ひとり何の気はなしに観た映画が衝撃の面白さだった場合。映画館なら帰りの扉を出る前に真顔に徹し、自宅であれば高鳴る気持ちをお茶で濁しつつ心ゆく迄余韻に浸る。寝ても醒めても頭の中から消えない時は、同じ監督の作品を観たり、関連書籍を読んだり、出会えた歓びを味わい、暫く時を経てから2回目を大切に観る。変化は私周辺のみ。どんな感情が芽生えるのか不思議な緊張感があって、パッケージされた芸術は、綿飴みたいな儚さで永続的に現在地を映す鏡となる。
自分の好きなものを他者へ伝えることは途轍もなく恥ずかしい。意を決して発信を始めた瞬間に透明な気持ちなって居心地が悪くなるのは何故か。折角聞いてもらえそうな相手にも失礼極まりないし、ずっと痛切に悩ましかった。そんな私にも我を忘れ、背水の陣で背伸びをし、最後の真人間への道だと腹をくくり共有を望む日が訪れる。熱情はコンプレックスさえ見えなくさせること、思いを上手に伝達出来ない日は水槽の中に閉じ込められた心細さであること。等、数え切れない心地を痛感し、途方に暮れた。
その都度最新で細心の注意を払って、相手への尊重と配慮が肝心。こちらの都合は猿回しくらい後回しで。純粋な思いは新鮮な内に運ばないと、あっと言う間に嘘が孕む。私の好きが相手の嫌いでも焦らなくて大丈夫。そこから始まる対話をしたいのは、あなた以外に居ないという凄み。直接対面で伝える術はもうないけれど、いつか魔界転生して忘れたとしても、無かったことにはならない。
心奪われた満月と新月の間、自然の摂理に逆らって満ちていくばかりだった想い。そばに居たいのならどう在ったらと不安の国の囚人は悲しみよこんにちは。沢山話したいことがあった浦島太郎。映画「ザ・フューチャー」を満月の夜鑑賞する夢。素直さは素直なまま振り落として、いつかドラゴンボール集めるみたいに探したり出来たらいいのに。