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81  「この素晴らしい世界に祝福を」 かっこちゃんへ

81  「この素晴らしい世界に祝福を」

 かっこちゃん、お便りありがとう。

「すべてはいつかのいい日のためにある」

このことばは、僕の救いのメッセージです。
僕は、このことばに励まされ、慰められ、許されて生きています。

 ほんの少し時代が変われば、善悪さえも変わってしまう。
僕が若かった頃、男はみんな煙草を吸うものでした。
車には灰皿とライターがついていたし、電車にも飛行機にも座席のひじ掛けに灰皿がついてた。
しばらくして「禁煙席」が設けられ、そのうちに「喫煙室」ができて、今では煙草を吸う人が肩身の狭い思いをしなければならない世界となったよ。

 僕が子どもの頃、しょっちゅう遊びに行っていた近所のおばさんは「お妾さん」でした。
それがどういう意味かわかるのは後のことだけれど、みんな仲良く暮らしていた。
キリスト教の世界が欧米から日本にもやってきて、一週間が七日となり、日曜日が休みとなった。
 結婚という制度が重んじられ、一夫一妻制が常識となり、お妾さんはいけないこととされました。

 かっこちゃん、今の天皇陛下は126代目。
その中で皇后陛下がお産みになった男子が天皇となったのは、今上陛下と平成の天皇陛下のお二人です。昭和天皇も、大正天皇も、明治天皇も側室の御子です。
 側室の制度は世界の常識の中で復活することは難しいと思うけれど、万世一系の男系の継承者が悠仁親王殿下のみという日本の危機も知らなければなりません。

 エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、世界の3大宗教の聖地です。
何千年も血で血を洗う争いが絶えません。
平和を祈り、人を幸せにするための宗教が殺し合いをやめないのは何故。
 イエスは「神は愛」だと説いたのに、「自分を愛するように隣人を愛せよ」と教えたのに、キリスト教の国々が戦争をするのはどうして。

 かっこちゃん、ずいぶん前のことだけれど、エルサレムの聖墳墓教会に行った時のこと、
いくつのも教派の教会がそのなかにある。
それぞれの教派が違った十字架を崇め、神父や牧師の衣装も違う。
神に仕えると決めて人生を捧げるのは立派だとは思うのだけれど、それぞれの教派がそれぞれの教義に染まり、それぞれの正義でイエスの教えに色を付ける。
 聖墳墓教会の中で、違った衣装を着た神父が殴り合いの喧嘩をしていたんだ。
びっくりしたよ。
一人は鼻血を出してた。
とても深刻な場面だったのだけれど、僕は吹き出しそうになった。
だって、あまりに滑稽だったのだもの。
 かっこちゃん、聖墳墓教会の入り口の大きな扉の鍵は誰が管理していると思う?
なんと、イスラム教徒なんだよ。
どれかのキリスト教派に渡したら、きっと権力を持ってしまうからなんだろうけど、考えさせられるエピソードだよね。

 見えない世界への探求心

 誰もいなくても神さまが見ているという道徳心

 やり場のない苦しみから解放される心の薬として

宗教はなくなりはしないと思う。
そして、争いもなくならないだろう。

 でもね、「すべていつかのいい日のためにある」という魔法の呪文は、僕の心の中で希望の光になっているよ。
かっこちゃん、僕らは一神教の世界に生まれてこなかった。
唯一絶対の神が一切を創造したとしなくていい。
山川草木、森羅万象、すべてに神が宿るとご先祖様たちは僕たちに伝えてくれる。
僕は、そんな自然とともに生きてきた日本に生まれて来ることができて本当によかった。
 いま、このときに生まれたから、かっこちゃんと会えた。
数えきれないほどの転生を重ねて、いま日本に生まれると決めて、サムシンググレートが承認してくれたから生まれることができたんだ。

 リトの中に、名前も自分がつけた、という場面があったね。
僕もそう思う。
魔女・モナの物語3「時間の秘密」に、
「・・・出会う人、出会うモノ、出会うコト・・・すべてはお互いに必要だから出会う。
そしてこの宇宙全体にとっても必要だから出会う。本人の思いと全く別であっても」と、おじいさんが言うね。
 そしてモナは理解するんだ。
「どんなに嫌だと思った相手も、出来事も、それがあったから今がある」って。

魔女・モナの物語を初めて読んだのは、2005年のことでした。
大人になったモナが、子どものモナと会う場面にハッとしたのでした。
小学校3年生の赤塚高仁くんに、55歳の赤塚高仁が会ったことを思い出したからです。
映画「1/4の奇跡」の中で、
「かっこちゃんは時間の秘密を知ってる人や。
 時間はいのちでもあるから、いのちの秘密を知ってるんやと思う」と僕は言ってます。

 モナの物語3は、「時間の秘密」
空の魔女が教えてくれたね。
「お茶碗の底からしか見えない世界にいると、世界の形は丸いって思って、それ以上は何も考えられない。時間は古い順番に一列に並んでいるってみんなは思っているけれど、違うわ。
時間は広がっているし、つながっているの。裏側に隠れていたり、ねじれていたり、重なっていたり・・・。そしてね。どう見えるかは何を軸にするかによって、変わってくるのよ。」

 かっこちゃん、僕たちは何もわからない。
知らない事さえ知らない世界にいる。
「知らない」ということを知っている世界の外側に、無限に広がる「知らないことも知らない世界」。
 旅を続けよう、本当のことを知りたいから。
他人の評価を気にしたり、誰かの望む人になろうとしなくていい。
僕は僕、ほかの誰でもないのだから。

 かっこちゃん、たとえ世界の終わりが来ても、喜んでいられる人生がいい。
それは、いつも喜んでいなさいという神さまの願いに応えることでもある。
世界が終らなくても、やがて僕たちの旅路は終わる。
その日に喜んで新しい旅に出るんだ。

 ずっと前に見たLouis Armstrong の「What A Wonderful World」の記録映像が僕の胸の中に刻まれて、歌が響いている。
ベトナム戦争の慰問に行ったルイアームストロングが大勢の兵士の前で歌うんだ。
この歌を。
まさに爆弾や銃撃で人が死んでいる現場で歌われる「この素晴らしき世界」
平和のために戦争をする人間。
罪のない人たちが殺されてゆく。
その真っただ中でこの歌を歌い上げるルイアームストロングの姿に涙がこぼれました。

I see trees of green, red roses too
緑の木々と赤いバラを見る

I see them bloom for me and you
 それらは僕と君のために咲いてるように思うんだ

And I think to myself
 そして 胸の中で思うんだ

What a wonderful world
 なんて素晴らしい世界なんだろうって

I see skies of blue and clouds white
 青い空と白い雲

The bright blessed day, the dark sacred night
 祝福された眩い昼間 神聖な暗い夜

And I think to myself
 そして 胸の中で思うんだ

What a wonderful world.
 なんて素晴らしい世界なんだろうって

The colors of the rainbow so pretty in the sky
 空にはとても素敵な虹が架かる

Are also on the faces of people going by
 行き交う人々の顔にもね

I see friends shaking hands saying how do you do
 友だちが「お元気ですか?」って握手する

But they’re really saying I love you.
 でも 本当は「愛してます」って言っている

I hear baby’s crying I watched them grow
 赤ちゃんが泣いて 僕は彼らの成長を見守る

They’ll learn much more than I’ll ever know
 彼らは 僕よりもずっとたくさんのことを学ぶだろう

And I think to myself
 そして僕は胸の中でこう思う

What a wonderful world.
 なんて素晴らしい世界なんだろうって

Yes, I think to myself what a wonderful world.
 そう 僕は胸の中で思うんだ

What a wonderful world.
 なんて素晴らしい世界なんだろうって

  かっこちゃん、
いつも喜んでいよう
絶えず祈っていよう
そして
すべてのことに感謝しよう。

  たとえ、そんな風に思えない状況であったとしても、
僕たちはそうやって生きていくんだ。
 世界は素晴らしいのだから。
そして、すべてはいつかのいい日のためにあるのだもの。

    またね、かっこちゃん。

         赤塚高仁

 
 
 

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