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98 僕の中に心があるんじゃない、心の中にぼくがあるんだ かっこちゃんへ

 かっこちゃん、一回飛ばしのお返事、とてもうれしいよ。
順番まってるあいだに気持ち消えていってしまう。
だから、書きたいときに書こうよ。
とはいうものの、相手の言葉をかみしめて続けてきたから文通。
どうしても書きたいというかっこちゃんの気持ちが、僕の心を熱くする。
もう一度言うよ、とてもうれしい。

  今日、台湾から帰って来ました。
9年ぶりの台湾でした。
とても大切なことを思い出させてくれる旅だったよ。
 ちょうど新しい総統、頼清徳さんが就任したときで、何だかにぎやかでした。
参政党の神谷くんも台湾に来てたようです。
それぞれが、それぞれの為すべきことをしっかり果たしてゆけばいい。
そう思う。
僕たちは政治には、どうやら向いてないようだから。

 かっこちゃん、かつて戦争に負ける前、日本で一番高い山はどこだったと思う?
3952mのニイタカヤマ、台湾にある玉山だったんだ。
だって、台湾は日本だったんだからね。
富士山より200mほど高い。
 台湾は、古き良き日本がいまも息づいている。

台湾の人の一番の称賛の言葉は、

「あなたは、日本人のようだね」

そんなふうに言ってもらえるほど、僕たちの先輩たちは台湾の人に尊敬されていたんだ。
僕は、そんなこと何も知らずに生きてきたけれど、知れば知るほど誇らしい気持ちになる。

 台北から台南に走る新幹線が大好きです。
心は小松へと飛んでいくよ。 いつか、三重にも新幹線の駅が出来たらいいのにな。

 かっこちゃん、乗ってみたい?
台湾の新幹線は、ずっと昔に僕たちが大切にしていた宝物を思い出させてくれる。
タイムカプセルのようだ。

 そんなタイムトラベルのお伴が、かっこちゃんの著書「宇宙の約束」でした。
かっこちゃんと初めて旅したイスラエルの物語。
レバノンから数千発のミサイルが飛んでくる中、旅したイスラエル。
その旅が、僕たちの間柄も深めてくれたように思う。

 18年前のことでした。
当時、養護学校の教師だったかっこちゃんは、海外に出られるのは夏休みだけ。
かっこちゃんが発表する本の愛読者や講演を聞いた人たちが旅に参加されていました。
 かっこちゃんは、そんな旅を独自の感性で物語に紡ぎ、本にしていましたね。

そんな中で、僕はかっこちゃんに出会った。
「魔女モナの物語」を読んだときに、本当のことが書かれていることがわかったんだ。
僕が、誰にも言えず、いや、もしかしたら僕の方が間違っていて多くの人たちが言うことの方が正しいのかも知れないから心を閉ざそうと思って閉じた扉。
 その扉をノックしたのが、「魔女モナの物語」なんだ。

 いつの間にか大人になった自分が、子どもだった自分に出会う。

そう、時間が一方的に誕生から死へと進むのではなく、
いまこのときに一切があるという感覚。

 誰にも言わず・・・いいえ、誰にも言えずにいたことが書かれている。
ああ、この人は時間の秘密を知っているんだ、と思ったのでした。

 映画「1/4の奇跡」の映画の中でも、僕は言っていっています、時間の秘密のこと。

かっこちゃん、
僕は思うんだ。

   時間なんて本当は存在しないって。

 前の手紙にも書いたけれど、死ぬっていうことは誰にもわからないし、永遠の謎。
だって、生まれたことも誰も自分で決めたことじゃないのだから。
気づいたら始まっていたんだよ。
この宇宙に僕がいたんだよ。
何ということだろう。
そして、僕は今、生きている。

驚くべきことだ、

 かっこちゃん、僕はね、人は生まれてから死に向かって進むものだと思っていた。
どうして生まれて来るんだろう、どうせ死ぬのに、と思っていた。
ということは、生きることは苦しみだということになるよね。

 でも、「魔法の文通」にかっこちゃんは書いてくれた。
生れるのは喜び
老いるのも喜び
病むのも喜び
そして死ぬのも喜び

 人は自分が無くなるのを「死」とイメージする。
だけど、「無」は存在しない。
「無」を考えたら、それは「無」ではないね。
無いものは考えられないから。

 人は死があるから、生まれてから死に向かって時間が流れているように思う。
社会もその前提で動いている。
しかし、真実はそうではないのです。
この世界に「死」はないのです。

 だって、生きている者に死は体験できないのだから。

「死」を知った気になるのは、誰か他の人の「死」を見たから。
でも、それはその人の「死」であって私の者ではありません。

 いくら死体を見たからといっても、それは死ではないのです。

死に向かって時間は流れると思い込んでいましたが、
死がないとわかったとき、時間が流れなくなりました。
すると、現在しかなくなります。
過去も未来も現在にあるのを感じます。
現在という、いま、ここの瞬間に時間が層をなしています。
現在を味わうコト、過去を味わうコト。
歳をとるって、現在を味わい過去をも味わうことができるんだね。
とても不思議で素晴らしい。

 「宇宙の約束」を改めて新しい本にしよう。
バラさんと話しながら書くよ。

  これもきっといつかの、良い日のために。

       赤塚高仁
 

   

 

 

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