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(連載小説)「妻へ、夫より」第1話(全3話)

~現在~
青空の下、一人の男性が空を見上げて立っている。彼の名前は「工藤義明」。隣には小さい愛するわが子を連れていた。
今思うと、あの時は大変だった。もしかしたら今の自分はいなかったかもしれないほど、きつく辛かった日々だった。

「パパ」

可愛い3歳になる息子の「拓哉」の声だ。笑顔で見下ろしながら

「どうした拓哉」

でも息子を見ていると、なんだか良い意味で一人の人物を思い返した。可愛くて愛おしい妻の事を。

~1年前・夏~
夏の暑い昼のこと、2階建て一軒家の自宅では、妻の「仁美」が笑顔で洗濯物を庭で干している。

「はぁ暑いわね」

青空を見上げながら言う仁美。縁側では2年前に生まれた息子の拓哉が一人でおままごとをして遊んでいた。
本当に可愛いなと思いながら見つめる。
20歳で今の夫と結婚をし、不妊治療をし続けて、結婚18年目である2年前に拓哉を授かり、生まれてきたときはこの世で一番の幸せを感じた。それから2年たった今も、笑顔で遊んでいる拓哉を見ると、凄く幸せと喜びを自分でも感じていた。
すると、何か頭痛を感じたが、気のせいだと思って、遊んでいる拓哉に

「何してるの?」

拓哉は、ちょっとカタコトだが笑顔で

「おままごと~」

夜・夫の義明が笑顔で帰ってきた。玄関だったため大きな声で

「ただいま」

彼は大手IT企業である「スマイルグローバル」の営業本部長を若いながら担っているエリートである。仁美との出会いは恥ずかしながら、今でいう合コンだった。それも仁美は義明に一目ぼれして、逆ナンをされ付き合い、告白やプロポーズも全て仁美という、少し珍しい経緯だった。
大きな声が届いたのか、少し走りながら拓哉が

「パパー」

目の前に来たため、義明は拓哉を抱き上げる。

「おう、良い子にしてたか?」

向こうから、微笑みながら仁美が来て、

「良い子だったもんね~。おかえりなさい」

「ただいま」

笑顔で言う義明。拓哉を下ろしてスーツから着替えるため、少し2階へと行った。
しばらくして着替えを済ませた義明は、リビングに入ると、小さいテーブルにはいつも通り仁美手作りの美味しそうな料理が並んでいた。それをいつも見るのが、一つの楽しみであるかもしれない。
笑顔でキッチンに行き、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。

「仁美。今日大事な話があるんだ」

「え?」

少し驚きながら不安な顔をする仁美。

「大丈夫だよ。クビとかそんな話じゃないから」

「ならよかった」

仁美は少し安心した顔をして、リビングに向かっていった。しばらくして義明がリビングの絨毯の床に座る。既に座っている仁美と拓哉に

「よし、実はパパな。来月付けで副社長になれるんだ」

それを聞いた仁美は、今までで一番の驚いた顔で

「嘘ー!本当?」

「本当だ」

笑顔になる義明。仁美は思い切り義明に抱きついた。少し涙目になりながら

「おめでとう義明さん」

「ありがとう」

この若さで異例の副社長出世。会社のナンバー2になれるわけだから、こんなに名誉なことはない。義明も仁美もとてつもない笑顔で喜んだ。
すると疑問に思ったのか拓哉が

「ねぇね、ふくしゃちょうってなに?」

仁美は義明から離れて、笑顔で拓哉に

「2番目に偉い人で、パパはそれになったの」

「それってすごいの?」

仁美は涙目で頷く。すると拓哉が笑顔で

「おめでとうパパ」

「ありがとう」

義明が微笑みながら言った。仁美が涙を拭きながら立ち上がった。義明が少し心配そうな顔で

「どうしたの?」

「お義父さんとお義母さんに伝えなきゃ」

仁美にとって、義明の父と母は実の両親みたいに思っていた。妻の両親は交通事故で二人とも幼い時に失っており、長年施設で育ったため寂しさもあったのだと思う。でも義明の両親もとても温厚で優しい人物なため、温かく迎えてくれたため、義明は良かったと思っていた。
確かに拓哉を妊娠したと分かった時も、すぐに仁美は、義明の両親に電話したこともあったなと、思い出し少し微笑んでいた。
すると何か大きな音がして、振り向くと、固定電話が置いてある棚の前で仁美が倒れていた。

「仁美!!」

慌てて仁美を抱えるが、既に意識がなかった。

~第1話終わり~

ちょっと、相棒の麻衣さんが感動小説書いてたので、自分も書いてみました。

たまに小説などを書くのでぜひよろしくお願いいたします。

柿崎零華でした。

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