(連載小説)「殺人授業~岡部警部補シリーズ~」第1話(全3話)
とある日の事だった。男子大学生の伏山浩太と、同じ大学に通っている親友・久保田祐樹は伏山の自宅でゲームをしていた。
伏山の父親は警察官僚。そのため自宅は大豪邸に住んでいる。かなり頭がよく、成績は大学の中でもトップクラスに入るほどだ。
久保田は父親が総合病院の副院長を務めており、その繋がりもあったのか伏山と親友同士になり、こうして休日は旅行したり、自宅でテレビゲームをして過ごしていた。
ゲームの途中、久保田が
「なぁ、同じ授業受けてた岡山さん。めっちゃ可愛くない?」
するとゲームを一時停止し、少し間を開けてから
「可愛い!」
久保田が笑顔になって
「やっぱりそうだよな。でもさ、こうちゃんと岡山さんめちゃくちゃ仲良かったよね?」
「あぁ、卒業論文の内容がほぼ一緒なんだよ。ほら、岡山さんのところも警察のエリートだからさ」
伏山は将来警視庁にいくために、必死に司法試験の勉強をしており、今回の卒業論文に関しても、警察内部をまとめた論文と犯罪学についての論文を書いていた。
岡山の父親は警視庁の管理官をしており、かなりのエリートだし、彼女も警察関係の論文を書いているみたいで、それで仲が良くなった。
「へぇ、なるほどね」
久保田が納得の顔をすると、伏山はあることを思いつきながら
「あっそうだ。ここに呼ぼうか?岡山さんも休みって言ってたからさ」
「え?マジで!?」
少し興奮気味の久保田。それもそう、久保田はあまり女子と話した事がなく、相談をするとしても会話をするとしても、このプレイボーイの伏山しかいないからだ。
すると伏山は携帯で岡山に電話をかけた。
「あっもしもし。俺だけど、うん。今日暇?え?ちょ、どうしたの?うん、分かった。いいよ。俺の住所知ってるよね?うん、玄関で待ってるから」
電話を切る伏山。少し戸惑った表情をしている。久保田は何事か分からずに、少し心配そうな顔をして
「どうしたの?」
「いや、岡山さん途中で泣き出しちゃってさ。すぐにここに来るって言ってるからさ」
「大丈夫なの?」
首を傾げる伏山。確かに泣いてる理由は分からないし、岡山の全部を知ってるわけじゃないため、推測しにくいし、少し分からずにいた。
しばらく伏山が玄関近くで待っていると、岡山が道の奥からやってくるのが分かり、自分が手を振ると、岡山も手を振り返した。
近くまできて
「どうしたの?」
少し心配そうな顔をして伏山が言うと
「うん。ちょっとあってね」
「いいよ、中入って」
中に入ると、岡山はまさかもう一人久保田がいるなんて思いもしなかったため、少し驚きの顔をすると、伏山が戸惑いながら
「あぁ、これ俺の親友。大学で見たことない?久保田って言うんだけど」
すると岡山が思い出した顔をして
「あぁ、よく伏山君の隣にいる方?」
「そうだよ。ほら挨拶しろよ」
途中で久保田に挨拶を促すと、少し唇を震わせながら
「あっ、ど、どうも」
どんだけ人見知りが激しいんだよと、少し思いながら、伏山は少し岡山から話を聞くことにした。
「え?DV?!」
2人はつい口をそろえて言ってしまった。岡山が裾をめくると、そこにはたくさんのアザがついていた。
まず岡山に恋人がいたなんて、それもそれで驚きだが、一番はその恋人がかなりのクズだってことだ。
その時、何故か伏山の頭の中に何かがよぎり、岡山に
「なぁ岡山さん。その彼氏とは別れる気持ちがあるの?」
すると岡山が怯えながら
「無理よ。何回も別れ話したことあった。でもその度に暴力振るわれて、別れられないよ」
すると伏山が重い顔をしながら
「だったら一つ方法がある」
久保田は少し気になりそうな顔をしながら
「なんだよ」
「完全犯罪だよ」
久保田と岡山が驚きの顔をする。でも伏山の顔を見れば、冗談を言ってるようには思えない。本気が伝わってくる。
でも久保田は少し戸惑いながら
「こうちゃん。まさか、それって」
「あぁ、殺すんだよ。その彼氏を」
岡山は少し動揺しながら
「何を言い出すの?殺人はダメだよ」
すると伏山が立ち上がり
「今なら絶対上手くいく。その彼氏には借金がある、それを苦に自殺したことにしよう。そうすれば、今そいつが死んでも、誰も殺人とは疑わない」
「でも無茶よ」
岡山がそう言うのも無理はない。何故なら殺人と言うのはこの世で一番重たい犯罪であり、即地獄行きの大事だ。それもお互い親が警察官僚、ばれたら大問題になる。
でも伏山が少し考えながら、岡山に
「だったら、このまま暴力を振るわれて人生棒に振るか。犯罪を犯す覚悟で幸せな人生歩むか。どっちがいい」
すると岡山が悩みだしてから
「そ、そりゃ、もちろん幸せな方だけど」
伏山が微笑みながらも
「よし、実行開始だ。ちょっと待っててな」
そう言い伏山がしばらくして持ってきたのは、「ストリキニーネ」猛毒薬だった。
当然総合病院・副院長の息子である久保田は、すぐにこれがストリキニーネだと分かり、驚いた顔で
「こうちゃんそれ」
「ストリキニーネ・毒薬だよ。親父が結構前に捜査の一件で後輩から貰ったみたいなんだけど、捨て方が分からなくてさ。結局残ってるってことさ。親父には無くしたと言えば、大丈夫だからさ」
本当は使いたくなかったが、色々と実は計画が浮かんできていた。これをそのクズ男に飲ませれば、岡山がどんな苦痛を味わっていたが知るはずだし、この世にいてほしくない、そう思いその場で計画したことだ。
すると岡山が心配そうな顔で
「本気なの?」
伏山は堂々とした感じで
「もちろん本気さ。岡山さん、住所案内して、今すぐ行こう。そうしないと時間がどんどん無くなる」
岡山も少しの決心がついたのか、頷きながら
「分かった。案内するね」
伏山と久保田は、岡山の自宅に向かうことにした。少し住宅街に入ったところに、7階建てのマンションがあり、そこの最上階に彼女は住んでいる。
伏山は絶対にばれないという意気込みの中行くため、自信満々の顔をしていた。しかし久保田は不安の中、めちゃくちゃ心配そうな顔をしながらも、エレベーターに乗り、部屋に向かうことにした。
インターホンを鳴らすと、岡山の彼氏である・琢也が出てきた。完全にチャラく、不良そのものの格好をしていた。
「どこ行ってたんだよ」
岡山が少し不安げな笑顔で
「ご、ごめんね。少し出かけてた」
琢也が傍にいる伏山と久保田を見て
「誰だ、こいつら」
「私のお友達。ちょっと琢也に話があるって」
すると琢也が舌打ちをして
「めんどくせぇな。とりあえず入れ。ここだと目立つからよ」
3人が部屋に入る。部屋はほとんど散らかっており、自分たちの家とは大違いと思いながらも、伏山と久保田は実行のために、少し緊張気味で座った。
変な雰囲気が続く中、岡山が口を開き
「麦茶入れてくるね」
そのままキッチンの方に向かった。手にはストリキニーネのカプセルを持ちながら、その間に琢也が不機嫌そうな顔で
「で、お前らは何なんだよ」
伏山は少し笑顔で
「私は岡山さんと同じ大学に通ってるものです。彼女が警察官僚だってことはご存知でしょうか?」
「あぁ会ったこともあるよ」
「では、そのお父さんに今のこの状況、話せますか?」
「は?」
完全に琢也の顔色が変わったのが分かった。すると偶然キッチンの方を琢也が見たとき、大きな声で
「おい、その薬なんだ!」
やばいと思い、とっさに伏山が琢也を羽交い締めにした。
自分は警察官の息子のため、剣道・柔道・空手には自信があった。伏山が大きな声で
「早く薬持ってこい!!」
岡山は慌てて薬を持ってきた。しかし激しく抵抗する琢也に仕方なく、横腹を殴りつけた。
すると琢也は次第に抵抗が無くなり、その間に久保田に口を開かせ、岡山が持ってきた薬を入れて、無理やり噛ませた。
すると琢也は次第に苦しみだし、そのまま死亡した。
既に疲れ切っている伏山と久保田。すると岡山が怯えながら
「し、死んだんだよね」
息を切らしながら伏山が
「当たり前だろ。完全に予想外だったな」
伏山が立ち上がり、手袋をはめて何か部屋の中を物色し始めた。その間にも岡山は傍で死んでいる琢也を見ていた。
「これで良かったのかしら」
すると伏山が岡山をバッドで殴りつけた。そのまま倒れこみ死んでしまった。
その光景を見た久保田は驚きながら
「ちょっと、何するんだよ」
伏山は冷静な顔で
「いいか。このクズ男はこの女を殴り殺してから、薬を飲み自殺した。元々その計画でいたんだけど、さっきのは予想外だったな。もしこの女を生かしたとしても、俺に警察の内部極秘情報を簡単にばらすやつに、他言無用なんて通じないからな」
「で、でも、何も殺すことは」
完全に怯えている。すると伏山が声のトーンを低めにしながら
「いいか。お前もこの光景を見ているだけだから、お前も共犯者なんだよ。別にばらしてもいいぞ。そしたら、俺たちだけじゃない。お前の父親も俺の父親も人生台無しだ」
久保田が少し考えた顔をしてから
「わ、分かったよ。協力するよ」
「よし、始めるぞ」
2人は偽装工作を行い、無理心中に見せかけた。
これで全ては完璧だった。あの女が来るまでは・・・
~第1話終わり~