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(連載小説)「妻へ、夫より」第2話(全3話)

夜・倒れた仁美は、近くの市立総合医療センターに搬送された。息子の拓哉は自分の両親に預けて、すぐに病院に駆けつけた。幸い命に別状はなかったが、医師の石川から診療室で話を聞くことにした。
義明は少し不安げに

「あの、妻は大丈夫なんですか?」

少し石川が暗い顔をして

「工藤さん、奥様は末期の乳がんです」

「乳がん・・・?」

少し言葉を疑った。まさか妻が癌を患っているなんて、以前からそんな傾向は一切見たことなかった。もしかしたら気づいていなかったかもしれない、そう思っていた。
すると石川が

「既に脳に転移しています。既に手遅れな状態です。余命は持って1ヵ月です」

「一か月・・・」

この世の絶望とはこういうことかと思うほど、動揺が襲った。愛する人が一か月も生きられないと今目の前で宣告されたからだ。義明が少し息を荒げながら

「手術もダメなんですか?」

「残念ながら」

仁美になんて言えばいいだろう。あいつは凄く心が弱く、こんなこと言ったら絶望するに決まってる。そんなところは見たくない。そう思い言わないことを決意した義明。
そのまま病室に戻り、まだ眠っている仁美を見て、涙が溢れてきた。こんなに美しくて愛おしい女性があと一か月の命だなんて、もう悲しくて悔しくてたまらなかったからだ。

義明の自宅では、緊急なことで駆け付けた両親が拓哉の世話をしていた。明るくブロックで遊んでいる拓哉を見て、父親が笑顔で

「楽しいかい?」

「楽しいーー」

笑顔で言う拓哉に、少し安心感を持った父親。すると母親の携帯がなり、それに母親自身が出る。

「はいもしもし。あっ義明。どうだった?」

それを聞いた父親も、少し不安げに母親を見る。すると母親は暗い顔をする。

「あらそう。分かった。ありがとう」

電話を切る。父親は不安げになりながら

「どうだった?」

「仁美ちゃん。末期の乳がんだって。一か月も生きられないって」

父親が驚いて目を見開き、近くの椅子に腰かけため息をついた。そのとき拓哉が

「パパから?」

と聞かれたため、母親は泣きながら拓哉を抱きしめた。

次の日の朝、仁美の目が覚めた。隣の椅子に座って寝ていた義明を見ながら、これをひそめながら

「義明さん?」

すると義明が目を覚まして

「仁美」

少しホッとした顔になる義明。仁美は少し不安げに

「ねぇね。私何があったの?」

「急に倒れたんだよ」

「私、重い病気じゃないよね?」

少し動揺しながら聞いてきた。義明は本当のことを言いたかったが、これは堪えながら笑顔で

「大丈夫だよ。ただの熱中症だってよ」

すると信じたのか、少しホッとした顔になって

「あっそうなの。まぁ昨日暑かったからね」

そのまま眠りにつく仁美。でも義明は少しやるせない思いになっていたが、ただ仁美を見つめるしかなかった。
そこから一週間記憶がない。仁美と何を話したか、何をしたか全て忘れている。恐らく良い意味でたわいもないことなどで、印象に残らなかったのかもしれない。だが、皮肉にもあの日だけは覚えていた。

とある日の朝、医師の許可が下りて泊まり込みで看病をしていた。しかし実は仁美の病状は日に日に悪化していたため、ほぼ寝込んでいる状態でだった。

「ねぇね」

苦しそうな声で仁美の声がして

「どうしたの?」

彼女を不安にさせてはいけないと思い、義明はいつも通り笑顔で言った。

「私、このまま死ぬの?」

その一言は、義明にとってとても重い一言だった。本当は強く「違う」と言いたかったが、堪えながら少し微笑み

「そんなことないよ。ちょっと熱中症が悪化しているだけだから。点滴打てば治るよ」

すると仁美が涙目になりながら

「そんなの嘘よ。日に日に具合が悪くなってきてるし、髪の毛は抜けるし、もう死ぬんでしょ。本当は重い病気なんでしょ」

「いい加減にしろ!ただの熱中症なんだから、すぐに治るって言ったら治るんだよ!」

そのまま仕事に行かなきゃいけないため、カバンを持って飛び出るように部屋を出た。仁美の顔は少し落ち込んだような顔だった。

その日の夜・外は雨、いつも通り仕事をしていると、携帯に着信がかかってきた。相手は、自分の代わりに仁美の看病している母親だった。
電話に出る義明。

「もしもし」

母親は少し慌てた声で

「あっ義明。大変なの!」

どうやら仁美の容態が急変し、もう危篤状態だという。義明は急いでタクシーで病院に向かい、病室に駆け込むが、時は既に遅かった。

仁美は既に息を引き取っており、傍で母親が泣いて、拓哉がそばで

「ママー!」

と叫んでいた。父親は義明が来たことに気付くと、母親の肩に手を乗せながら

「義明が来たから、2人にさせてあげよう」

そのまま父親と母親と拓哉の3人は部屋の外に出ることにした。二人きりになる義明と、目を閉じたままもう開くことはない仁美。

「なぁ仁美。もしかして怒ってるのか?朝、あんなこと言ったから、俺をダマしてるのか?起きろよ!!」

そのまま仁美に抱き着きながら号泣した。今まで経験したことのない涙を流した。

~終~

ちょっと短編小説だけど、結構難しいな。

感動系はあまり書いたことないから(笑)

でもご覧いただきありがとうございます

また近日中に最終回を執筆しますのでお楽しみに!!

柿崎零華でした!!

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