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聖杯の作り方1 FXに逆神はありや? 季節の統計分布モデルを添えて



「あの時、逆のポジションを持っていれば今頃爆益だったのに……」

相場に関わったことのある皆さん、
誰しも一度はそう思ったことはありませんか? 

私もよくそう思います。相場がゼロサムゲームであるならば、勝者の反対側に敗者が立っている。

つまり、損をしている我々の反対側には、厭らしい笑顔で利益をせしめる何者かが居るはずです。


とすると、もしトレーダー各人の損益を集計して示したグラフなるものを作成すれば、おおよそ正規分布の形を描くと予想できます。


(正規分布のグラフhttps://www.biwako.shiga-u.ac.jp/sensei/mnaka/ut/sozai/prob.html


FPSや将棋など対戦ゲームの勝率を考えれば分かりやすいですね。どれだけ下手なプレイヤーでも40%を下回るのは稀ですし、逆にどれだけ活躍しても60%を超えるのは至難の業です。



しかし、それと対称的にFXに参加した90~95%のトレーダーは利益より損失の方が大きいという話もあります。

この話の出典は分かりませんが、これが正しいとするなら損益の集計は正規分布に当てはまらないわけで…………


これだけで正確なグラフを導き出す事はできないのですが、思い当たる中ではパレート分布に近い形になるかなと思います。


(パレート分布https://ja.wikipedia.org/wiki/冪乗則



で、今回の本題はこの矛盾した2つの統計分布モデル、そのどちらが正しいかという証明です。

まあ、答えは自明だったりするんですが、世の中往々にして結果より過程の方に価値があったりするので書いていきます。

それではちょっとお時間よろしいですか?






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           閑話休題
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さて、という訳でトレーダー各人の損益を集計して示したグラフの統計モデルを予測すという突飛な課題を達成する必要があるのですが、

まさかトレーダー全員にアンケートを募る訳にもいきません。


そこで今回は相場がゼロサムゲームかどうかという基準に立ち返って統計モデルを判定することにしました。

何気に難易度が上がった気がしますが、それほど複雑な話ではありません。要は敗者の反対側に居る勝者、逆神を味方につけた何者かの存在を否定できればそれで十分です。

検証用のコードは10分少々で完成しました。

それでは結果発表です。


適当に作った取引プログラム。環境によっては見えづらいかもしれませんが残高の7割を吹き飛ばすいい感じの敗北者っぷりです。


そしてこれがその逆にポジションを取るEA、相場がゼロサムゲームであるならこちらは逆に勝っているはずですが………


現実はそうなってませんね。約1600ドルのマイナス、つまりは敗北者です。


なのでFX相場はマイナスサム、敗者の反対側に居るのはまた別の敗者、トレーダー各人の損益を集計して示したグラフの統計モデルはパレート分布でQ.E.D.となります。


まあ、これだけだと「素人質問で申し訳ないのですが~」とか言う本当に素人のゼロサム派がゾンビの如く湧いてきそうなので、塩を撒く代わりに少し解説していきましょう。



まず、逆ポジEAが収益を挙げられない理由。

それはテスト結果をよく見ていただければ分かるのですが、オリジナルと逆ポジEAを比較した時、損失の値幅は20ポイント増加し、逆に利益は20ポイント減少しています。

ちなみにスプレッドは10ポイントです。一応言っておきますが、これは単なるバグじゃないですよ?

まあ言葉で書いても納得して頂くのは難しいと思うので図を用意しました。
はいどーん!


これは縦を値幅、横を時間としてスプレッドを加味した取引の損益を可視化したものです。

同じ色の左右、そして交差している2本に注目してください。

これら全て動いた値幅は同じなのですが、その向きとポジションに応じて、実現する損益はそれぞれ変化します。

つまり勝った利益はより少なく、負けた損失はより大きくなるので、単なる逆にはなりません。

結果的に見れば、オリジナルで7651ドル負けているEAでも、実質的な損失はそこからスプレッドを引いた4039ドル。

そしてその逆ポジEAが実現する利益は、そこから更にスプレッドを引いて427ドルという訳です。

テスト結果がマイナスに振れてるのはスワップの影響だと思いますが、まあ些細な問題でしょう。


つまり導き出される結論としては「勝たない、負けない……」とか言うラザルス・カインドみたいなやり方をFXでやってみると普通に負けるよって話ですね。

常に勝つって言うのは潜在的リスクがデカ過ぎて論外だとしても、時たま大勝する位の勢いじゃないとスプレッドの引力に引っ張られて墜落します。


その問題を解消するためにはいくつか方法があるのですが………

それはまた次回、お楽しみに



記事の内容に一部、不適切な表現があったことを深くお詫び申し上げ、今後の再発に努めます