Un requited love
僕は今日、初恋の人に振られた
土砂降りの街を傘も差さずに歩いている
すれ違う人達が僕を哀れむ目で見てくる
○:こんな想いするなら告白なんて
しなければよかったのになぁ………
(フラフラな足取りで車道に向かい歩く○○)
?:チョット●●何してるの!
○:井上……僕の事なんて放っておいてくれよ
和:放っておける訳ないでしょ?
○:振った相手に優しくするなよ……
和:私が●●の事振ったからこんな事したの?
○:たった1人の幼馴染に振られて
孤独になった僕にはもう何も無いんだ……
和:●●は孤独じゃ無いでしょ?
○:事故で家族を失って唯一話せる人まで
失ったら孤独でしょ……
和:私はもう友達じゃないの?
○:振られた相手を友達だと思えないよ……
和:私はずっと●●を友達だと思ってるよ。
○:家族が居なくなって誰とも話せなくなった
僕の側に井上はずっと寄り添ってくれた……
和:……
○:それを勘違いして勝手に好きになって
この人が居ればなんだって乗り越えられる
そう思ってたのにこれからは側に居れない
和:●●の隣に相応しいのは私じゃ無いよ……
○:薄々分かってはいたんだ……
いつからか僕の事を名字で呼ぶようになって
段々と距離を感じてたから……
和:それは●●もでしょ?
昔は和って呼んでくれたのに……
○:そっちが名字呼びなのに僕だけが
名前で呼べる訳無いだろ?
和:だからって振られたから逃げるの?
○:逃げる?……そうかもな……
このまま消えてしまえば楽になるだろう
和:○○がそんなに弱虫だと思わなかった!
○:なんだよ……今更名前で呼ぶなよ……
和:私が知ってる○○はもっとカッコ良くて
誰にでも優しくて尊敬できる人なのに……
○:人は誰でも些細なきっかけで
変わってしまうんだよ……
和:それは良い方向にも変われるでしょ?
○:その通りだよ……でも……僕は違ったんだ
僕が存在すると周りを不幸にするから
この世界に生きてはいけないんだよ……
和:そんなの……そんなの間違ってるよ!
○:………間違ってる?
現に僕の周りの人は不幸になっただろ……
和:じゃあ私は……私は不幸になった?
○:井上がどう思ってるか分からないけど
僕と話す事で色々言われてるんだよ……
和:それだけ?
○:えっ……
和:そんなの言いたい人に勝手に
言わせて置けば良いでしょ?
○:井上は強いんだな……
和:いい加減……和って呼んでよ!
○:それは僕にはできないよ……
和:何で……振られたから?
○:そうかもな……
和:気にしなくて良いのに……
○:そろそろ帰らなくて良いのか?
和:○○が一緒なら帰るけど……
○:僕は少し散歩してから帰るから
暗いから気を付けて帰りなよ……
和:じゃあ私も一緒に散歩するから
帰りは○○が送ってくれるよね?
○:いや……今は1人にして欲しい
和:ダメ! 今の○○は1人にしたら
危ない気がするもん
○:何でだよ……その気が無いんだったら
僕には構わないでくれよ……
和:○○は唯一の幼馴染だから
放って置く事は出来ないよ
○:僕にはもう何も残って無いんだ
和:これから私なんかより素敵な人に
出逢うかも知れないじゃん
○:こんなボロボロの僕を見つけてくれる
人なんか居るわけ無いでしょ?
和:○○は素敵な人だから大丈夫だよ……
○:簡単に大丈夫とか言うなよ!
和:どうしたら生きてくれるの……
私が付き合えば考え直してくれる?
○:妥協して付き合ったって嬉しくないし
長続きしないと思うよ……
和:○○を助ける方法は無いの?
○:ごめんね……もう………決めた事だから
和:そっか……とにかく今日は帰ろうよ
○:分かった……じゃあ送って行くよ
(和を送ってからなら)
和:引き留め成功って事かな?
○:……そうだね
和:送ってくれてありがとう。
○○も気を付けて帰ってね……
○:うん……じゃあ……またね。
和:また明日……
○:はぁ……これで終われるんだ
○:あんな所で子供が泣いてる
子:ままぁ…グスン どこに行ったの…グスン
○:えっ……向こうからトラックが来てる!!
危ないっ逃げろ~(子供の方へ走る○○)
子:うわ~ん動けないよ~グスン
○:頼む……間に合ってくれ!
キキーガシャン
子:うわ~ん痛いよ~グスン
○:良かった……間に合って………
子:お兄ちゃん…グスン
お兄ちゃん…グスン だいじょうぶ…グスン
○:大丈夫だよ……キミは……大丈夫かい?
子:僕は擦りむいただけだよ……
○:そっか……良かった……
近くに居た人が呼んだ救急車で運ばれ
事故から数日後に目を覚ます○○は
頭に衝撃を受けた影響で記憶喪失になった
~学校にて~
和:○○はまだ来てないのかな?
担任が来て放った一言で
教室は静寂に包まれた
担:先ずはおはよう……
今日は皆に報告しないといけない事がある……
凄く嫌な予感がする和に想像した通りの
言葉が聞こえてきた
担:うちのクラスの●●が
居眠り運転のトラックから小さい子供を
守ろうとして轢かれ重傷で入院している
○○が事故にあった報告を聞いた
和はその後何も手に着かなかった
和:先生……○○が入院してる病院を
教えてください……
坦:乃木坂中央病院らしいが
見舞いに行くのか?
和:はい……唯一の幼馴染なので……
坦:そうか……●●に待ってるって
伝えておいてくれるか?
和:分かりました……
~病院にて~
和:まずは受付で病室を聞かないと……
和:すいません、こちらに入院してる
●●○○のお見舞いなんですけど
受:確認致しますので少々お待ち下さい
和:はい……
受:お待たせ致しました●●様の病室は
5階の546室になります
和:ありがとうございます……
(コンコンとノックする和)
○:はい……
和:○○お見舞いに来たよ
○:……どちら様ですか……
病室を間違えてませんか……
和:イタズラはやめてよ?
○:僕……記憶喪失みたいで
何も憶えてないんです……
和:えっ……嘘なんでしょ?
○:嘘なら良かったんですけどね……
和:そうなんだ……また来ても良いですか?
○:思い出せないかも知れないですが
それでも良ければ……
~病院からの帰り道にて~
和:私の事も忘れちゃったのか……
○○との思い出は私にしか無いんだ……グスッ
和:何でこんなに悲しいんだろう……グスッ
何だ………私も○○が好きだったんだ……
今更気付くなんて……私はバカだなぁ
和:もう……この恋は叶わないのかな…グスッ
ごめんね……○○大好きだよ。
end