
激渋ジャズ喫茶「ガロ」の内部(川崎市・向ヶ丘遊園) モダンジャズとつげ義春の世界
いやー、これはまいったね。
向ヶ丘遊園のジャズ喫茶「ガロ」を訪問した韓国人(らしき人)のルポ動画。昨年末にYoutubeに投稿されたものだけど。
エラ・フィッツジェラルドが流れる、89歳のオーナーの小さなジャズバー(도쿄 산책이야기_ 재즈 바, 킷사텐=東京ウォーキングストリート、ジャズバー、喫茶店 2024/12/29)
私が近くに住んでいた時、2年間くらい店の前を行き来しながら、ついに入る勇気がなかった激シブな外観。


中はこうなっていたのか。初めて知りました。
ある意味、想像どおりというか。
でも、ちょっと人生観に影響するくらいの衝撃の光景。
昨日この動画を見て、実際、夜に夢に出てきましたw
初めて見た日から、ずーっと心の中で気になっていたお店です。
1年半前、久しぶりに向ヶ丘遊園に降り立ったとき、私はこの店の前をとおって、以下のようにnoteに書きました。
最初に見に行ったのは「ジャズ喫茶ガロ」(多摩区東生田1)だ。知る人ぞ知る、激シブの喫茶店である。
ここは昔から、トタンの古ぼけたバラック風で、どう見ても外からはつぶれているのだが、実はたまに営業している、という店だった。
今回、店の前まで行って、さすがにもう完全に閉店した様子だったので、そのまま通り過ぎた。
しかし、あとでネットを見ると、閉店という情報はなく、2021年に、まだたまに営業しているという情報があった。
(「変わりゆく向ヶ丘遊園」2023/10/25)

幸いにして、閉店していなかったわけです。それを知っていれば、上のような失礼なことは書かなかったが、お許しいただきたい。
周りの店はほぼなくなったようですが、この店だけは続いていたのでした。
動画によると、現在は夕方からの営業で、ジャズ喫茶というよりジャズバーに近いのかもしれない。
料金は、これも動画によると、ビール、コーヒーなど、600円だったのが、2025年から700円に値上げしたらしい。
上の動画の説明文のハングルを、そのままGoogle翻訳すると、以下のとおりです。
駅内列車接近音がドラえもんメロディーであるこちらは向ヶ丘遊園。
徒歩15分先にドラえもんミュージアムがあります。
神奈川県川崎市ですが、新宿から20分しかかからない所です。
駅南口から7~8分ほど歩いたのでしょうか。
府中街道の下に隠れたように立っているジャズキッサがありました。
1967年に開業し、現在89歳のおばあちゃんが飾られている所です。
いっぱい錆びた錬鉄板の外観とは異なり、慎重に扉を開けて入った店内は黄色い光のとても暖かい空間でした。
エラ・フィッツジェラルドの甘いリズムに身を乗せてしばらくそのように座っていました。
*ドラえもんミュージアム=藤子・F・不二雄ミュージアムのこと
動画そのものが、村上春樹を引用しつつ、文学の香りたっぷりで、感心してしまった。まさに短編小説のよう。
向ヶ丘遊園のあのあたりの「異界」ぶりが、よく記録されています。
かつて行楽地として栄えた向ヶ丘遊園が閉園したあとも、ギリギリ残っていた界隈です。
いま、登戸からの大開発中で、いよいよ滅びる寸前の光景かも、と考えると、より味わい深いです。
店名「ガロ」の由来が、漫画雑誌「ガロ」であるのも想像どおりでした。
まさに「ガロ」の世界、つげ義春の世界がそのまま保存されている感じ。
このお店が開店した1967年は、1964年に創刊した「ガロ」につげ義春が傑作を発表し始めた頃でした。
お店には、開店した1967年10月の「ガロ」が飾ってあります。つげの名作「紅い花」が載っているはずの号です。

動画を見ながら、私はなぜか、つげの「オンドル小屋」を思い出しました。韓国、暖かさ、といったキーワードで・・。「オンドル小屋」が「ガロ」に掲載されたのは、このジャズ喫茶開店の翌年1968年4月。「ねじ式」は同6月。
このYouTuberは、東京周辺のジャズ喫茶やジャズバーばかりをルポしているみたいですね。
以前、クーロン黒沢が、日本の地方に残る「昭和」な純喫茶のルポをやっていましたが、「ジャズ喫茶」はさらにマニアックで、(愛好家以外には)敷居が高いですね。
この動画は、すでに視聴数4万を超えていて、よく見られている。
ハングルでのコメントもたくさんついていて、「ぜひ行ってみたいです」というのが多いみたい。
このYouTuber自身も、「韓国でこの店を勧められた」と動画の中で言っています。
もしかして、あの「ガロ」に、いま韓国からのお客さんが殺到してる?
そうだったらいいな、と思います。
<参考>