「トー横」化する登戸(川崎市多摩区) 藤子ミュージアム、遊園リゾート化、通り魔事件跡・・
先週、向ヶ丘遊園のばら苑に行ったついでに、むかし住んだ登戸・向ヶ丘周辺を歩いてみた。
向ヶ丘遊園については数日前に書いた。
登戸についても、その変化を書いておきたい。
うなぎ・寿司の「新橘」
登戸駅周辺が大開発されているのはご存じのとおりだ。
20数年前、私が登戸に住んでたとき、なじみ深かったのは、下の画像にある「寿司・うなぎ」の「新橘」だ。
登戸に住む前、多摩川をわたって初めて登戸に来たのは30年以上前で、そのとき最初に入ったのが駅前の「新橘」だった。
左から入るとカウンターがあるすし屋、右から入ると居酒屋風のテーブルが並んでいる。どちらから入っても、すしもうなぎも居酒屋メニューも食べられた。
二子玉川もそうだが、むかしの多摩川沿いは、大人たちがちょと市街を離れて遊興するところだったわけで、このあたりは、そういう雰囲気を残していた。この店なんか、まさに雰囲気の体現者だった。
上の写真のように、2022年までは営業していたようだが、現在は以下のとおり、取り壊されている。
おでんの「太田屋」
「新橘」のすぐそば、下の写真の正面にあるおでん・焼き鳥屋さん「太田屋」にも行ったことがある。このあたり、いわゆる大衆酒場が連なっていた。
上の2022年時点で、すでに閉店していたようだが、現在は以下のとおり、このあたり何もありません。
町中華「王チャン」
登戸駅西側の商店街も、庶民的な店が多かった。
下の写真で、右の通りが登戸駅からつづく商店街。左の踏切を渡れば、多摩川だ。
その角に、町中華の「王(わん)チャン」があった。
私が住んでいたときは、別の店だった気もするが、この「王チャン」でも食べたことがある。
まず、2018年段階で、2014年にはあった右の金物店がなくなっている(写真下)
下は2019年の3月。「王チャン」の向い、写真右側の空き地のところに見えるのは「北向地蔵と馬頭観音」。この年の6月に近くの光明院に移された。
下は2019年11月。
そして、下が現在の様子だ。すっかり変わってしまった。
ありし日の「北向地蔵と馬頭観音」
下は、私が21日に撮った写真。「王チャン」があったところには「らぁ麺 流(Nagare)」が入った。その横は、北海道ラーメンの「むつみ屋」。
ほかにもニュータンタンメン本舗など、若者に受けそうなラーメン店がここに集中している印象だ。
これを撮影していたすぐそばで、男女の若者が座り込んでキャッキャとにぎやかに話していた。(カメラは向けなかったが)
トー横みたい、と思った次第だ。
乗り換え客を狙った街づくり
もともと登戸は、飲食・歓楽の街のイメージだったが、大人な雰囲気は消え、新宿歌舞伎町のような、若者向けで、ちょっと無国籍的な雰囲気になりつつあると感じた。
その変化は、向ヶ丘遊園にもある程度、共通する。
私は現在、柿生のような年寄りの多い街に住んでいるから、このあたりの若く華やいだ感じは新鮮だ。
登戸のある多摩区は、川崎市のなかで、タワマン人気の武蔵小杉を擁する中原区につぎ、生産年齢人口(15~64歳)の比率が高い。
向ヶ丘遊園・生田に専修大学、明治大学などがあり、学生が一定数いる。
都心にアクセスがよく、多摩川を越えて家賃も手ごろだから、若いサラリーマンも住む(私もその理由で若いころ住んでいた)。
65歳以上比率が高い、柿生がある麻生区とは対照的に「若者の街」だ。
乗降客数では、小田急線で登戸駅は、新宿、町田、代々木上原につぎ、第4位だ(1日平均約13万人)。下北沢や新百合ヶ丘より多い。
ただ、8割は南武線との乗り換え客だ。
再開発のねらいの1つは、「乗り換え客に立ち寄ってもらう」街にすることだという。
歌舞伎町のようにぎやかになるのは、望むところだろう。
だが、いっぽうで多摩区は、藤子・F・不二雄ミュージアムみたいなファミリー向けアトラクションが強い。向ヶ丘遊園、登戸が最寄り駅で、年間約50万人が訪れる藤子ミュージアムは、いまや川崎市トップクラスの観光施設だ。この地域の治安やイメージの悪化は避けたい。
現在の多摩区の治安は、川崎市の中では中位。工業地帯に近い川崎区や幸区よりいいが、麻生区や宮前区よりは悪い。
犯罪率は神奈川県平均以下だから、いまのところ治安の悪い地域ではない。
登戸が治安の面で「トー横化」しないよう祈りたい。
川崎市HPによると、登戸土地区画整理事業の施行期間は1988年(昭和63年9月16日)から2026年(令和8年3月31日)までとなっている。
あと3年のうちにどこまで変わるだろうか。
遊園跡地リゾート化は幻?
上述のとおり、藤子・F・不二雄ミュージアムは絶好調で、ばら苑に行ったときも、多くの人が来館しているのを見た。(写真下)
藤子ミュージアムも、ばら苑も、2002年に閉園した向ヶ丘遊園の跡地を利用したものである(藤子ミュージアムは、2009年閉館の向ヶ丘遊園ボウル跡地)。
残った広大な向ヶ丘遊園跡地も再開発され、温泉やショッピングモール含むリゾート施設として、2023年度にオープンする、と小田急は発表していた。
向ヶ丘遊園跡地利用計画の概要を決定
「人と自然が回復しあう丘」を開発コンセプトに、2023年度の竣工を目指した計画が始動します
(小田急電鉄株式会社 2018年11月30日)
実現されれば、多摩区はいっそうにぎわうはずである。
ばら苑に行ったとき、その新リゾート施設は、もうおおかたできているのだろうと思っていた。
が、まったく何もできてなくて驚いた。(写真下)
ネットで調べると、コロナで工事が遅れているらしい、という観測はあったが、たしかなことはわからない。
小田急から、まだ中止とも延期とも、正式な発表がないようだ。
まもなく何らかの発表があるのではないか。
登戸通り魔事件の跡
ところで、登戸といえば、2019年5月28日に「登戸通り魔事件」があった。
犯人は朝8時前、私立小学校のスクールバスを待つ子供と保護者に刃物(包丁2本)で襲いかかり、18人が負傷、2名(小6女児、39歳の保護者男性)が死亡した。
現場は駅の西側、上の「王チャン」から少し歩いたところだ。
下は、現場となった登戸新町。
犯人は51歳のスキンヘッドの男。犯行後、その場で刃物で首を刺し、自殺した。
下は、犯行半年前の現場の画像。左の電柱のところに、青色のスクールバス停が見える。犯人は、右のファミリーマートのあたりから襲い始め、スクールバス停に向かって移動し、並んでいる人を刺し続けた。
下は、事件後の現場。スクールバス亭が撤去されている
犯人が自殺したので、動機はまったくわからない。なぜ、この場所だったのかも謎だ。犯人が一緒に育ったいとこが同私立小学校にかよっていたというが、関連はそれだけだ。
犯人は少なくとも10年前から仕事をやめ、自室に引きこもっていた。いまどきの人として珍しく、スマホやパソコンを使った形跡がない。だから、動機をうかがわせる記録が残っていないのだ。
この事件は、被疑者死亡による不起訴で終わった。
近くで起こった大事件、犯人の年齢が近かったこともあり、私は犯行動機に関心をもった。
事件後の6月1日、私は登戸の現場に行った。
事件から数日たっても、献花する人は絶えなかった。(写真下)
私は、犯人が自殺した現場から、当日の犯人の行程を逆にたどり、小田急線に乗って読売ランド前駅の犯人の自宅まで行った。
それで、犯人の動機が少しでもわかるかと思ったのだ。
そのときのことは、2年後に起こった小田急線内での無差別刺傷事件とあわせ、noteに書いた。
両事件の犯人の自宅は、偶然にも近い。
小田急無差別刺傷事件 沿線の地霊? 2年前の事件との付合(2021年8月9日)
2021年8月6日の小田急刺傷事件(36歳の男が牛刀で女子大生の胸を刺し、放火しようとした)も、もう忘れられたかもしれないが、その事件の影響を受け、10月に京王線で「ジョーカー」刺傷事件(ジョーカー風の格好をした24歳の男が刃物で乗客に斬りつけて放火した)があった。
京王「ジョーカー」事件が起こったのは2021年のハロウィンの夜、10月31日だったから、もうすぐ3年目だ。
河川敷
10月21日も、事件現場におもむこうかと思ったが、登戸がすっかり変わってしまったことと、ばら苑帰りの疲れもあったのか、道に迷ってしまい、行く気力がなくなった。
だから方向を変え、多摩川の河原に出て、ベンチで小一時間ぼーっと川をながめていた。
多摩川の河川敷も、若者向けなのか、すっかりこぎれいになっていた。再開発計画でも、河川敷を観光資源として重視している。
この日はたまたま、二子玉川の花火大会だった。
登戸から見えるかもしれないな、と思ったが、それまで待つ気になれず、明るいうちに帰路についた。
(終わり)
<参考>