貸本時代のマンガの話
夏になると思い出すのは、マンガの貸本屋だ。
1960年代、夏休みに親の田舎に行くと、退屈なので、近くの貸本屋でマンガを借りて読みふけっていた。
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もちろん、夏に限らず、マンガの貸本屋はそこら中にーーとまではいかないが、新刊書店の3店に1店の割合くらいでは、あった気がする。
ちゃんとした「店」ではない。掘建て小屋みたいな中で、お婆ちゃんが1人で店番しているイメージ。狭すぎて、万引きもできない感じだ。
いわゆる貸本漫画、貸本屋向けのオリジナル漫画は、もう私の時代にはほとんどなかった。市販のコミックスを置いていた。
借り賃はいくらだったろう? 覚えていないが、3〜5冊で100円くらいではなかったか。当時は100円でラーメンが食べられた。
小学生を信用して、よく本を貸すな、と今では思うが、そういう商売だった。子供も、マンガを返さないでおこう、などとは考えない。なぜなら、返さないと、次が読めないから。
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覚えているのは、望月三起也と、古賀新一のマンガのほとんどを、貸本屋で読んだことだ。当時の彼らは、私が読んでいないマイナーな漫画雑誌や、少女漫画雑誌で書いていたので、コミックスで初めて読んで新鮮だった。
望月の「ワイルド7」以前の作品、「秘密探偵JA」や、古賀の「エコエコアザラク」以前の作品、「のろいの顔がチチチとまた呼ぶ」なんかを貸本で読んだ。
楳図かずおも貸本屋で読むことが多かった。怖い話をたくさん読んでいたので、貸本屋と夏がイメージでつながるのかもしれない。
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私が中学生になる頃、1970年代の前半で、マンガの貸本屋は消えた。
そして、私が高校を卒業する頃、1970年代の終わりには、かつて貸本屋があったところに、インベーダーゲーム機が置いてあった気がする。