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【Netflix】「ティハールの看守」監獄を舞台にインド社会の機微を描く傑作ドラマ
【概要】
ティハールの看守
Black Warrant(2025)
16+
ヒューマンドラマ
ティハール刑務所に職を得た、正義感の強い新米看守。刑務所内にはびこる腐敗と非情な現実を目の当たりにした彼は、この惨状に改革をもたらすことを誓う。
出演: Zahan Kapoor、ラフール・バット、パラムヴィル・シン・チーマ
制作: ヴィクラマディティヤ・モトワニ、サティアンシュ・シン
(Netflix公式サイトより)
予告編(原語ヒンディー語、英語字幕)
【評価】
1月10日に世界公開されたインド産のNetflixオリジナルドラマシリーズ。
約40分×7回
インド・デリーのティハール中央刑務所を舞台に、1980年代に看守を務めた若き法学士「スニル」の奮闘を描く。
実話をもとにしたドラマ。実在した犯罪者たちが登場する。
インドのドラマは、つい見てしまう。
前にも書いたが、別世界すぎて面白い。
しかも監獄が舞台というから、面白いにちがいないと思った。
100点満点で82点。いいドラマだと思う。
英語圏のレビューを見たが、やはり評価が高いようだ。
期待したような激しいバイオレンスやドラマ性があるわけではないが、実話ならではの生々しいディテールの積み重ねで、引き込まれた。
インドならではの貧富の差、賄賂の横行、ギャングの抗争などが描かれる。
貧しい犯罪者が多いので、保釈金が払えず、弁護士も雇えず、未決のまま出られない者が多いのが特徴だ。そのため、定員800人なのに、収監者1300人以上に膨れ上がっている。
インディラ・ガンディーが首相の時代。
1983年のインドのクリケット・ワールドカップ優勝や、カシミール独立運動、パンジャブ地方のシーク教徒独立運動なども触れられる。
(刑務所の中で特徴的なターバンを巻いているのは、看守も囚人もシーク教徒だと覚えておいた方がいいーードラマの中で説明されないから)
原題(英語題)の「ブラック・ワラント black warrant」とは、死刑執行令状のことで、死刑の様子も描かれる。
やっぱり、日本のそれとはだいぶちがっていて、面白い(面白い、というと語弊はあるが・・)。
物語は、基本的に1話完結ながら、シリーズをとおして、主人公「スニル」の人間的成長と、法学士として刑務所を改善しようとする努力が描かれる。
最初は、大学出を鼻にかけた、生真面目な男で、ちょっといけすかない。かっこ良くもない。
でも、役者の演技がうまいのだろう、だんだん感情移入して、応援したくなっていく。
彼とチームを組む仲間の個性も、それぞれ面白い。
全体としては、過剰にセンチメンタルにも、社会派の告発調にもならず、フラットなトーンを貫いているのがいい。
乾いたユーモアもある。
視線が冷静だから、インド社会の縮図としての監獄の権力構造がよくわかる。
インドの、貧しい者も、富んだ者も、平等に見ている感じで、だから人間的に共感しやすい。
社会には、恵まれている者も、恵まれていない者もいる。インドのような社会では、とくにそうだ。そのリアリティを描いている。
「感動作」とかいうのではない。
でも、サプライズが待っている最終回の最後まで、これまで見たインド作品の中で、いちばんあか抜けていると思った。
ちなみに、第3話で、囚人100人以上が大量脱獄する、というエピソードがある。
その方法が、チェスタトンも驚くような、意外なトリックである。
インドならでは、というか・・インド以外の人は、ミステリー作家でもなかなか思いつかないだろう(でも実話なのだろう)。
一応、ヒントが事前に描かれているので、これから見る人は、ドラマ中で種明かしされる前に、トリックを推理してみてはどうだろう。
<参考>