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柿生のヤクザとスズメ

昨日は久しぶりに天気がよかった。

そして、今朝も気持ちよく晴れている。

今日(10月12日)は、柿生(川崎市麻生区)の、「桜まつり」に並ぶイベント、「柿まつり」の日である。柿生の駅前は狭いが、好天で人が押し寄せ、盛り上がるのではないだろうか。


昨日は、よい天気を無駄にしたくなくて、とりあえず自転車に乗って漕ぎ出した。

そして、

「そうだ、早野にスズメを見に行こう」

と思った。

スズメは、個体数が減って、絶滅危惧種だという。


スズメが減っているという話は、少なくも20年前からあるが、いよいよ危機的なようだ。

野鳥が多いうちの近所(上麻生)でも、滅多に見ない。今年2月に、スズメの群れを近所で見たので、珍しくてnoteに書いたくらいだ。


でも、下麻生の早野地区では、私の知る限り、いつでもスズメがいた。

早野は、聖地公園(墓地)を中心に、田園が広がっていて、天気がいい日には、いつ行っても気持ちのいいところだ。

スズメは、ああいうオープンフィールドが好きなのだ。


麻生区の組事務所


そして、ついでに、あれを見てこようと思った。

早野には、暴力団事務所がある。

稲川会系四次団体、新井総業ーー

早野には何度も行っているが、そんなものがあるとは気づかなかった。このあいだ、YouTubeの動画を見て、たまたま知ったのだ。


【新百合ヶ丘】高級・新興住宅街の組事務所を見学して参りました。(神出鬼没SANPO 2022/6/4)


暴力団とはいえ、人が住んで仕事をしているところを、見世物のように思うわけではないが、興味を惹かれた。

神奈川といえば稲川会で、川崎はとくにヤクザが多いイメージがあるかも知れない。だが、組事務所はほとんど海側、川崎区に集中している。

山側の麻生区にも、ヤクザはいるだろうが、現役の組事務所があるとは知らなかった。

麻生区は、歓楽街がないし、工業・商業も乏しい。老人と子育て世代が多い土地柄だから、ヤクザ屋さんもシノギが厳しいだろう。それが、治安のよさにつながっている。


双子のヤクザの伝説


この新井総業のことを、ネットの範囲だが、調べていくと、双子のヤクザの話が出てくる。

新井智幸、新井秀幸という、新井兄弟だ。

新井総業は、稲川会三本杉一家系で、初代の組長は新井智幸氏だった(双子の兄だった?)。

現在の組長は新井秀幸氏で、2代目を名乗っている。


この双子のヤクザ、新井兄弟は、三本杉一家の若手として、当地で有名だったようだ。

兄弟が活動していた当時、三本杉一家は稲川会の二次団体。世田谷区発祥で、川崎の多摩区・麻生区まで勢力を持っていた。


しかし2001年5月9日、新井智幸氏は、三本杉一家の身内に射殺される。享年33歳だった。


警視庁組織犯罪対策4課と町田署は9日、暴力団組長を殺害したとして、川崎市多摩区枡形、指定暴力団稲川会三本杉一家系組幹部、近内有(27)と同市麻生区上麻生、同、平良誉士丈(26)ら3容疑者を殺人などの容疑で逮捕したと発表した。同課は、ほかに3人が関与していたとみて、同容疑などで逮捕状を取って行方を追っている。 
調べでは、3人は共謀し、01年5月9日未明、東京都町田市原町田2のマンションで、外出先から帰宅した同一家系新井総業の新井智幸組長(当時33歳)を拳銃で殺害した疑い。近内有容疑者が実行役とみられるが「知らない」と否認しているという。平良誉士丈容疑者ら2人は新井組長の行動などを事前に近内容疑者に知らせていた。

(毎日新聞 2003年6月7日 )


この事件のいきさつはよくわからないが、三本杉一家はその後もゴタゴタが続き、稲川会二次団体から降格されて、碑文谷一家の預かりとなった。

そして2022年に、三本杉一家から三本杉組に改名。碑文谷一家傘下となっている。

新井総業、新井秀幸二代目組長は、三本杉組の若頭を務めている(三本杉組の組長は空席らしい)。


その新井秀幸氏も、一昨年、コロナ給付金詐欺容疑で逮捕されている。


新型コロナウイルス対策の持続化給付金を詐取したとして、警視庁は、指定暴力団稲川会系組幹部新井秀幸容疑者(55)=川崎市=や税理士横沼弘晴容疑者(61)=神奈川県葉山町=ら7人を詐欺容疑で逮捕し、9日発表した。同庁は、新井容疑者らのグループが12件計1900万円の不正請求に関わり、その一部が暴力団の資金源になっていたとみて調べている。
(朝日新聞デジタル 2022年9月9日)


暴力団は、ご承知のとおり、暴対法などで追い詰められていて、いろいろ大変のようだ。コロナ給付金詐欺事件にも、その窮状がうかがえる。


新井智幸氏が存命で、「双子の新井兄弟」として勇名をはせていたのは、ヤクザがまだ「元気」だった時代だろう。

稲川会初代会長、稲川聖城の伝記映画「修羅の群れ」(東映)が公開されたのが1984年だった。主演は松方弘樹。

この映画については、以前触れたことがある。松方弘樹生涯の代表作で、その後のヤクザ映画やVシネに大きな影響を与えた。


だが、ヤクザを英雄視する、こんな映画は、現在のコンプライアンス社会では、もう考えられない。

新井兄弟は、そういう、ヤクザがまだカッコいいと見なされていた時代に、ヤクザの世界に入ったわけである。


この新井兄弟や、当時の三本杉一家のことを調べていると、私にとっても、いろいろ恐ろしいことがわかってくる。

当時、新井兄弟は、上麻生、つまり柿生駅近辺にも事務所を持っており、現在の私の家のあたりも行動範囲だった。

なんでも、発砲事件もあったという。私が引っ越してくるはるか前の話なので、まったく知らなかった。

かつては、柿生周辺の祭りなどにも、三本杉一家は大きくかかわっていただろう。

どんどん怖い話になるので、調べるのはこのあたりで切り上げた。


早野のスズメ


で、昨日見に行った早野のスズメだが、以前ほどは見かけなかった。

いないわけではないが、かつてのように大量に群れをなして現れない。

早野ですら、スズメは減少気味なのか。


スズメの姿を探して、自転車で早野を回っていると、一箇所だけ、スズメがうるさいほど鳴いている場所があった。

それが、くだんの組事務所のそばの建物だった。組事務所と関係があるかは不明。

「チュンチュン」というより、「ギュアンギュアン!」というほど、鳴き声が激しい。

その建物の軒下に、大量にスズメが潜んでいるらしい。

姿を見せたスズメを見ると、ふっくらとしていて、もう冬支度の福良スズメなのだろうか。



スズメが、追い詰められて、ヤクザの軒先に逃げ込んでいるーー

瞬間的に、そのように見えた。

そのように見ると、スズメの鳴き声も「チュンチュン」でも「ギュアンギュアン」でもなく、「オラオラ」「ブイブイ」に聞こえてくる。

「オラオラ、てめえ何見てんだオラ!」

と、太ったヤクザに威嚇されているように思えた。


あんなに可愛かったスズメが、全然可愛く見えない。

お前に何があったんだーー


そう思ったが、歓迎されてないことは確からしいので、早々に引き上げてきた。

そこで一句。


早野なる ヤクザもスズメも 絶滅種


いや、絶滅はしてほしくないものである(少なくともスズメには)。



<参考>


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