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大統領暗殺こぼれ話 暗殺と映画など

トランプ暗殺未遂について、わたしの主な主張は別の記事に書きましたが、個人的なつまらない思い出などをこっちに残しておこう。


わたしは、世代的に、J ・F・ケネディ暗殺(1963年)は物心つく前なので、憶えていません。

やっぱり思い出したのは、レーガン暗殺未遂事件(1981年)ですね。


それについては、半年前に書いたところでした。


安倍さんが亡くなったあと、レーガンの事件のドキュメンタリーを見直していました。

1981年3月30日、レーガン大統領は、ワシントンのヒルトンホテルで講演後、ホテルを出たところで銃撃されます。

撃たれる直前のレーガン(wikipedia)
撃たれた直後


SPたちは急いでレーガンをリムジンに乗せ、ホワイトハウスに戻ろうとしたのですが、無傷だと思っていたレーガンが、跳ね返った銃弾を胸部に受け、出血していることに車中で気づく。

なので、予定を変更して、現場近くの病院(ジョージワシントン大学付属病院)に運びこまれた。たまたま近くにあった病院ですから、普通に市民が出入りしています。

このとき、レーガンも70歳と高齢だったのですが、病院の前でリムジンを降りるさい、自分を抱えようとするS Pの手を振り払って、自分の足で歩いて病院に入ろうとしたんですね。


今回の暗殺未遂で、トランプが、SPの手を振り払い、拳を振り上げるポーズをしたのを見て、それを思い出しました。

つねに人目に「強いリーダー」を印象付けようとする、政治家の本能みたいなものですね。


でも、レーガンは、数歩歩いて病院に入ったところで崩れ落ち、結局スタッフたちによって運ばれました。

弾丸は、脇から入って肺を貫き、心臓のそばにとどまっていた。うまく摘出しないと危険な状態でした。


このときレーガンは、病院でジョークを連発して、周囲をなごませました。

駆けつけた妻(ナンシー)の顔を見たとたん、

「ハニー、しゃがむのを忘れてたよw(Honey, I forgot to duck.)」とか。

銃弾を取り出す手術で、麻酔をかけられる前に、執刀医たちに言った、

「君たちみんなが共和党員であることを願うよ(I hope you are all Republicans.)」とか。

どれも有名なものですね。

執刀医のチーフは民主党員でしたが、「大統領、今日はみんな共和党員です (Today, Mr. President, we are all Republicans.) 」と答えました。

それで手術は成功、無事回復し、レーガンの支持率が急伸したのは言うまでもありません。

ロナルド・レーガン第40代アメリカ大統領


大統領暗殺の映画といえば、オリバー・ストーンの「JFK」(1991年)を思い出しますが、ストーンはレーガン暗殺未遂事件のテレビドラマ「The Day Reagan Was Shot」(2001年)も製作しています。

このドラマは、レーガンが手術中、ブッシュ副大統領が遊説中だったため、一時的に「権力不在」となったホワイトハウスで、国務長官のアレグザンダー・ヘイグが権力を握ろうとする姿を、政治サスペンスとして描いています。

目の前に世界一の権力が突然ぶら下がり、焦ったりビビったりするヘイグを、名優のリチャード・ドレイフェスが演じていました。ただ、ご承知のとおり、正副大統領が不在のときは、下院議長に権限がありますから、国務長官に権限があると思ったヘイグは間違いで、それはドラマの中でも指摘されます。

「レーガンが撃たれた日」のブルーレイパッケージ


レーガンと、腹心の元CIA長官のブッシュ(シニア)が、裏でいろいろ汚いことしていたのは、みんな知っていました。

まあ、レーガンも、左翼からボロクソ言われた大統領ですよ。

民主党のジミー・カーターを負けさせるため、当時イランで起こっていた大使館人質事件を長引かせるよう仕組んだことなど、最近になっても取り沙汰されていました。


でも、病院での振る舞いのような、レーガンの憎めないパフォーマンスで、レーガン=ブッシュのタカ派の長期政権がつづき、それで冷戦が終わります。

レーガンは、「撃たれたのに死ななかった最初の大統領」と言われました。

撃たれても死ななかった、ということで、今回の暗殺未遂では、まずレーガンを思い出すのは自然でしょう。



でも、今回の件で、アメリカ大統領暗殺史というのを、日本の新聞も載せていましたが、トランプは現職大統領ではないので、ちょっとちがう気もしました。

その意味で、J・F・ケネディより、大統領候補だったロバート・ケネディが殺されたときに近いのでは。


前述のとおり、レーガンは、「撃たれたのに死ななかった最初の大統領」と言われました。

ということは、撃たれたら、たいがい亡くなっているということです。

それは、大統領候補も、例外ではありません。


今回、ジョージ・クルーニーが、民主党の大物支持者として登場していますが、彼の伯母のローズマリー・クルーニーは、そのロバート・ケネディの熱烈な支持者でした。

ローズマリー・クルーニーは、1951年の「カモナ・マイハウス(家においでよ)」の大ヒットで知られたジャズ歌手です。

兄のJ・F・ケネディ政権で司法長官を務めたロバート・ケネディは、1968年大統領選の民主党候補として、党内予備選挙を勝ち進み、大統領選でも有望とされていました。

しかし1968年6月6日、予備選のキャンペーンを一緒に回っていたローズマリー・クルーニーのすぐ目の前で、ロバート・ケネディは暗殺(銃撃)されました。そのショックで、彼女は7年間活動不能になったんですね。


演説するロバート・ケネディ(右)とローズマリー・クルーニー(左)


この暗殺で、民主党は大混乱におちいり、リンドン・ジョンソン政権の副大統領だったヒューバート・ハンフリーが民主党の大統領候補となりましたが、共和党のリチャード・ニクソンに敗れます。

ローズマリー・クルーニーはその後復活し、「ER」で甥のジョージと共演したりして、2002年に74歳で亡くなりました。

とにかくクルーニー家は、民主党熱烈支持の家系です。で、ちょっと暗殺と縁がある。


話がそれましたが、同じく大統領候補の暗殺ということで、ヒューイ・ロングが思い出されます。

こちらも民主党で、しかも暗殺されたのは1935年と、古い話ではありますが。

彼は、フランクリン・ルーズべルトのライバルで、暗殺されなければ、ルーズべルトの代わりに大統領になっていたかもしれません。

そうなれば、第二次大戦や世界のその後がどうなっていたか、など、よく話題になります。


ヒューイ・ロング(wikipedia)


ヒューイ・ロング暗殺事件は、映画やドラマになっていますね。

彼の暗殺までを描いた映画「オール・ザ・キングスメン」(1949年)は、アカデミー作品賞をとったのですが、「アメリカ政治の暗黒面を見せてはならない」と、GHQが日本で公開させなかったことで知られます。2006年にショーン・ペン主演でリメイク(というか、同じ原作で映画化)されました。

ヒューイ・ロングは、民主党とはいえ、独立系のポピュリストで、そこがトランプと似ています。彼のようなタイプは、大統領になる前に潰されることが多い。


アカデミー作品賞を受賞した「オール・ザ・キングスメン」(1959)。主役のブロデリック・クロフォードは主演男優賞を受賞した


ショーン・ペン主演のリメイク(2006年)。オスカー狙いの映画(Oscar bait)と言われたが、批評・興行ともかんばしくなかった


TVドラマ「キングフィッシュ」(1995年)でヒューイ・ロングを演じたジョン・グッドマン
「キングフィッシュ」でロングの秘書兼愛人役を演じたのが今は亡きアン・へッシュ。彼女の出世作の一つでした




トランプが「撃たれても死ななかった最初の大統領候補」と言えるかどうかは、わかりません。


というあたりで、わたしの知ったかぶりのタネが尽きました。


<参考>


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