「新人類」たちの盛衰 福田和也、高市早苗、ダンプ松本、今上陛下の世代
逝く人、来る人
20日に亡くなった文芸批評家の福田和也さんは1960年(10月9日)生まれ。「新人類」と呼ばれた世代です。
27日の自民党総裁選に臨む高市早苗さんは1961年(3月7日)生まれ。早生まれだから、学年は福田さんと一緒です。
同世代で、この世での仕事を終えて去る人もいれば、これから頂点をきわめようという人もいる。
逝く人、来る人、という感じで、ちょっと感慨があるんですね。
ちなみに、Netflix「極悪女王」で脚光を浴びるダンプ松本さんも1960年(11月11日)生まれ。
「新人類」とは、1950年代後半〜1960年代前半生まれ、1961年〜1970年生まれ、という、二つの定義があります。
狭く定義するなら、両定義が重なる1960年代前半生まれ、とすべきでしょう。
私はここでは、中核となる1960〜62年生まれを「新人類」としたいと思います。
来るか「新人類ジャパン」
「新人類」とは、「従来とは異なった感性や価値観、行動規範を持っている」世代として、栗本慎一郎が命名した言葉でした。
もともとは、朝日ジャーナル1985年の「新人類の旗手たち」という企画から広まりました。
この企画で取り上げられたのは、以下の人たちです。
高市さんが総裁になれば、「新人類」世代が初めて国のトップになります。
今上天皇も1960年生まれですから、日本は、元首も最高権力者も新人類の「新人類ジャパン」になるのです。
でも、どうも石破さんが強そうですね。
石破さんと、立民党の野田さんは、同じ1957年生まれ、67歳。
岸田文雄首相も1957年生まれ、67歳ですから、石破VS野田では、若返り感はありません。
1957年生まれと1960年生まれは、そんな違いがないように思えるかもしれませんが、1960年に近づくほど、急激に「サブカル成分」が増えてきます。
岸田さんや野田さんにはほとんどサブカル味はない。野田さんにはドジョウ味しかない。
でも、高市さんにはサブカル味がありますね。若い頃はヘビメタバンドのドラマーだったり、バイカーだったり。まあ「クールジャパン」担当大臣でもあります。
石破さんも、例外的にオタク風味が強いですが・・・。
それはともかく、野田さんと代表選をあらそった枝野幸男さんは1964年生まれ、60歳ですから、彼が立民党の代表になっていたら、私のいう「新人類」世代はバイパスされ、飛び越えられることになりました。それはそれで寂しい。
立民党の「新人類」といえば、なんと言っても朝日ジャーナルで取り上げられた元祖・新人類の辻元清美さん(1960年)でしたが・・
あと、長妻昭さん(1960年)とか、安住淳さん(1962年)がこの世代。
自民党では、野田聖子さん(1960年)も「新人類」。稲田朋美さんが1歳上(1959年)ですが、この人も早生まれなので、学年は1958年生まれと同じ。
新人類の出世パターン
どんな世代でも、能力があり、馬力があり、野心がある人から「出世」して行きます。世の中に名前を知られるようになる。
でも、自分が持って生まれた性質と、時代の流れが必ずしも合わない場合があります。
あるいは、出世しかかったところで、時代の流れが変わって、ポシャったりすることもある。
とくに明治維新とか、1945年の敗戦とかがあった場合、福沢諭吉の「一身にして二生を経るが如し」のようになって、人生が屈折します。成功がふいになったり、思いがけずチャンスが訪れたり、「転向」したりします。
「新人類」の場合も、そのような屈折がありました。彼らが30歳前後の頃に冷戦が終わり、その前と後で世界が変わります。
また、30歳前後までは高度成長とバブルを経験し、それ以降は経済の長期低迷期を体験します。
それを加味し、私はこの世代の有名人を、「早く来た人(earlycomer)」「ちょうどいい時に来た人(comer in time)」「遅く来た人(latecomer)」の3つに分類しています。
早く来た人(earlycomer)早成型
1980年代に「新人類」という言葉が生まれた時は、まだ冷戦期で、日本のマスコミはほぼ左翼一色。左派的世論に適合的な人が「出世」する傾向がありました。そもそも「新人類」は、朝日ジャーナルという左翼雑誌が生み出したものですから、上の世代である全学連や全共闘の生き残りたちが「かわいい」と思える若者が引き上げられました。
典型的には辻元清美さんで、香山リカさん(1960年生まれ)、宮台真司さん(1959年生まれ)、島田雅彦さん(1961年生まれ)もここに入ります。いとうせいこうさん(1961年生まれ)、中森明夫さん、野々村文宏さんたちも左派系のサブカルで、当時のニューアカ(おフランス左翼)ブームと連結して活躍します。
この人たちは、若いときに有名になり、その後、伸び悩みます。
ちょうどいい時に来た人(comer in time)
冷戦が終わり、1990年代になると、保守系の若手が時代の前面に出てきます。冷戦の終わり、保守化の始まり、脱イデオロギー、という時代の流れにうまく乗れた人たちです。
保守系では、福田和也さん、宮崎哲弥さん(1962年生まれ)、小谷野敦さん(1962年生まれ)といった人たち。
思想とは関係ありませんが、三谷幸喜さん(1961年生まれ)もここに入ります。80年代の小劇場時代から、90年代に大きく抜け出して、大劇作家になりました。
作家では他に石田衣良さん(1960年生まれ)がいます。90年代から2000年代に欠けてヒットを生みました。
遅く来た人(latecomer)晩成型
作家の中には、50代でデビューしたり有名になったりする百田尚樹さん(1955年生まれ)、山口恵以子さん(1958年生まれ)のような人たちがいますが、「新人類」世代にはあまり見当たらないですね。
私は、真田広之さん(1960年生まれ)もここに入れていいのではないかと思う。子役時代から活躍した人をlatecomerというのはおかしいですが、60歳を過ぎてエミー賞を受賞するなど、大器晩成型なのではないでしょうか。
庵野秀明さん(1960年生まれ)もそうかもしれない。90年代に「エヴァンゲリオン」で一世を風靡したとはいえ、50代で撮った「シン・ゴジラ」などでオタク界隈を超えた達成を見た。
同じような意味で、高市早苗さんも、ここに入れていいのではないかと思うのです。
この人たちは、50代、60代になって、さらに伸びた人たちです。
新人類の墓碑銘
ところで、この世代にも、すでに多くの物故者がいます。
最後に、この世代で亡くなった有名人たちの名をあげ、彼ら彼女らを偲びたいと思います。
偲ぶという意味で、違和感があるかもしれませんが、宮崎勤やオウム真理教関係者など死刑が執行された犯罪者も入れました。亡くなれば仏ですし、同世代として、忘れられない人たちだからです。
リストアップのために、「年号ワイン.com」などのサイトを参照させていただきました。(一部改変しています)
1960年生まれの有名人物故者
渡辺英樹(享年55歳) C-C-B 1960年 2月1日
深浦加奈子(享年48歳) 女優 1960年 4月4日
野沢尚(享年44歳) 脚本家・推理小説家 1960年 5月7日
北天佑勝彦(享年45歳) 大相撲力士 1960年 8月8日
山口美江(享年51歳)タレント 1960年 9月20日
久和ひとみ(享年40歳) ニュースキャスター 1960年 9月25日
岡崎一明(享年57歳)オウム真理教死刑囚 1960年10月8日
福田和也(享年63歳)文芸評論家 1960年 10月9日
ディエゴ・マラドーナ(享年60歳) サッカー選手 1960年 10月30日
国本武春(享年55歳) 浪曲師 1960年 11月1日
井之上隆志(享年56歳) 俳優(劇団カクスコ) 1960年 12月27日
燕真由美(享年62歳) ザ・リリーズ 1960年 12月7日
1961年生まれ有名人物故者
上島竜兵(享年61歳) お笑い芸人(ダチョウ倶楽部) 1961年 1月20日
渡辺徹(享年61歳) 俳優 1961年 5月12日
ダイアナ妃(享年36歳) チャールズ王太子の元妃 1961年 7月1日
1962年生まれ有名人物故者
三五十五(享年52歳) お笑い芸人(電撃ネットワーク) 1962年 3月16日
中尊寺ゆつこ(享年42歳) 漫画家 1962年 5月28日
三沢光晴(享年46歳) プロレスラー 1962年 6月18日
ナンシー関(享年39歳) コラムニスト 版画家 1962年 7月7日
高見知佳(享年60歳) 女優 歌手 1962年 7月9日
宅八郎(享年57歳)コラムニスト・タレント 1962年8月19日
宮崎勤(享年45歳)連続殺人犯 1962年8月21日
黒岩よしひろ(享年55歳) 漫画家 1962年 9月9日
<参考>
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