映画ドラえもん 3期(26~42)活躍度
■まえがき
2024年3月公開の「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」までに全作見ておこうという個人的目標を、ギリギリで達成できた。
声優総交代というイベントで、あるいは単にドラえもんを必要としない年齢になったので、遠ざけていたわさドラ。
中年になって総覧できてよかった。
【注意】
以下、ひねくれた大山ドラ好きによる、多少口汚い表現あり。
■凡例
項目は8分類。
ドラ:
のび:
しず:
ジャイ:
スネ:
ゲスト:
メモ:
好み:
活躍度の採点は3段階。
2 強烈
1 まずまず
0 言っちゃ悪いがいるだけ
好みの採点は、
A 大好き
B 好き
C まずまず
■26 2006 のび太の恐竜2006
ドラ:1 あたたかい目(良くも悪くも、不気味な)。コミカルというかクネクネした動き。
のび:2 鼻からスパゲッティは変わらず。なのに、ジャイを助ける。涙鼻水ダラダラ。
しず:0 萌え作画。よし。
ジャイ:1 日本まで歩いていいぜ、と原作準拠に。
スネ:1 食べるならジャイア〜ン。実は終盤に、最後まで頑張ろうよと言い放つ、成長。
ゲスト:0 ピー助/黒マスクの男/ドルマンスタイン。
メモ:あの伝説をリメイクという蛮勇は評価したい。が、出来は好みではない。クネクネしすぎ。[監督:渡辺歩、脚本:渡辺歩、楠葉宏三]
好み:B
■27 2007 のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜
ドラ:1 鼠美夜子へ、鬼は外ビーンズ。猫美夜子にメロメロ。タケコプターで飛んでいるときにヒゲがそよぐ。台風の直前のザワザワを表現。
のび:2 洞窟内での美夜子さんとの会話は温存。活躍ではないが、最ものびっぽいシーン。銀のダーツ「僕が!?」。
しず:2 美夜子の髪を梳く。花の冠。いい。
ジャイ:0 歌で悪魔を撃退シーンがなくなった。「頼んだぜ名投手」がなくなった。
スネ:0 デマオンを前にして月光灯を思い出す。
ゲスト:2 美夜子/満月牧師/メジューサ/デマオン/ドラミ。
メモ:美夜子の母のくだりが改変。ここはあってもなくてもどっちでもいいと思ったが、美夜子ー静香の関係を丁寧に描いたのは、作品の魅力倍増。風の描写に意味がある、作画力向上も。[監督:寺本幸代、脚本:真保裕一]
好み:A
■28 2008 のび太と緑の巨人伝
ドラ:0 道具をほとんど修理に出してしまった。
のび:1 「正義って、いいことなのに……いいことのためにどうして喧嘩をするの?」水やりして全身溶ける。
しず:0 「偉い人の一言でみんなの意見が決まっちゃうのね」。
ジャイ:0 少し漢気。
スネ:0 ズボンずり落ち。
ゲスト:1 キー坊/リーレ姫/大臣シラー/長老ジィ。
メモ:かつての立役者渡辺歩監督が、最後に残したヤケクソの作。臆面もなくジブリの真似。酷い。ポジショントーク式にある意味凄いと言えなくもないが、ドラ映画でそれをやらないでくれよ。[監督:渡辺歩、脚本:大野木寛]
好み:C
■29 2009 新・のび太の宇宙開拓史
ドラ:0 中学生から、邪魔だタヌキ!
のび:2 ギラーミンとの決闘あり。原作での描き直しをリスペクト。だが無駄な要素を足したせいで焦点がぼやけ。「もうひとつの宇宙開拓史があったんだね」という台詞の、とってつけた感。
しず:0 旧作と同じか。
ジャイ:0 旧作と同じか。
スネ:0 旧作と同じか。
ゲスト:1 ロップル/チャミー/クレム/モリーナ/バーンズ博士/ギラーミン/バカラ/ダウト/ウーノ。モリーナって……要らなかったんじゃ……。
メモ:旧作が原作と違うだけに、原作を再現するだけでいいのに、無駄な付け足しがあるので、そこだけ原作準拠部分から浮いている。改悪といってもいいくらい。第三の星とか、出す必要あった?[監督:腰繁男、脚本:真保裕一]
好み:C
■30 2010 のび太の人魚大海戦
ドラ:1 あたたかい眼。マナティア→ドラティアになりきれず。
のび:1 ビニールの剣を、人魚の剣へ偽装(インスタントパール)、という発想の柔軟さ。
しず:2 ソフィアのティアラと、カチューシャを交換。テキオー灯の効果ギリギリ。百合の芽(、とボソリと言ってみたい)。
ジャイ:0 歌で撃退。
スネ:0 パラオでダイビング。
ゲスト:1 人魚族姫ソフィア/ハリ坊/女王オンディーヌ/メジーナ博士/サッカーナ/ブイキン/トラギス/ドラミ、活躍。
メモ:百合ポテンシャルがあるだけに、場当たりな展開が勿体ない……。14年ぶりの武田鉄矢起用も微妙……。出木杉ウォッチャーには眼福だけど。[監督:楠葉宏三、脚本:真保裕一]
好み:C
■31 2010 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜
ドラ:0 のびが前面に出るのに対し、背景化。
のび:2 ピッポとの交流で、前景化。とはいえ旧作で空気と言われつつも、リルルを撃てないシーンが全ドラ映画で屈指だと思う者にとっては、そのシーンにピッポが割り込んでくるのが、痛し痒し。
しず:2 間違いない。
ジャイ:0 何してたっけ。
スネ:0 何してたっけ。
ゲスト:2 リルル/ピッポ=ザンダクロス。ミクロスよ……。
メモ:ひょっとしたら「恐竜」以上に怖かったであろうリメイクを、堂々と達成。のびピッポを足したのは、のび感動路線が求められているからだろう。そんな要請から、しずリルルを聖域として守ってくれた制作陣には、感謝しかない。リルルのキャラデザは至高。瞳のハイライトの有無だけで、こんなにニュアンスが変わるとは。[監督:寺本幸代、脚本:清水東]
好み:A
■32 2012 のび太と奇跡の島〜アニマル アドベンチャー〜
ドラ:0 道具を修理中。というのもマンネリ。
のび:0 何してたっけ。なんか崖でなんかしてた。
しず:0 何してたっけ。
ジャイ:0 何してたっけ。
スネ:0 人質になっても口を割らない。
ゲスト:0 ダッケ=のび助/少女コロン/ドードーのクラージョ/ケリー博士/ゴンスケ/シャーマン。
メモ:反則に近いゲストの駆り出しを行ったにもかかわらず、存在感を薄くする悪手。ゴールデンヘラクレスがどうとか、ベレーガモンド島の設定とか、あまりに場当たり的で、ルックにも展開にも設定にも魅力がない。ダッケ=のび助の声(野沢雅子)とケリー博士の声(田中敦子)だけが見所。[監督:楠葉宏三、脚本:清水東]
好み:C
■33 2013 のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)
ドラ:2 鈴がないとノラネコ化。のび太との初対面の過去。映画ではのびに奪われがちな主役を、ついに。いや、ダブル主役ということか。
のび:2 探偵への憧れ。程よき友情。ドラ「どこにあったの?」と嬉しそうな問いに対して、のび「僕の靴の中! なんてね」という機微。
しず:0 お色気の最後。
ジャイ:0 何してたっけ。
スネ:0 何してたっけ。
ゲスト:1 ロボットの怪盗DX/博物館ガイドのクルト・ハルトマン/不思議生物ポポン/ペプラー博士/ジンジャー/フィークス館長。クルトとジンジャーに素直に萌え。
メモ:割と重要な指摘だと思うが、F先生の携わる原作において、のびが「ドラえもーんひみつ道具だしてー」と言ったり、たとえば「ぼくのひみつ道具に頼ってばかり」とドラが言ったりするシーンは、ない。「ドラえもん」という作品を送り出すにあたって、半ば公式に、コロタン文庫とかアニメの挿入歌とかで「ひみつ道具」と言っていても、原作では単に「道具だしてー」だ。要は「ひみつ道具」という言葉は、コマーシャルなフレーズだった。それを公式が堂々とタイトルに持ち出したのは、時代が変わったのだか、コマーシャル路線に擦り寄ったのだか。が、ドラ老害は泣いてしまった。実にそっけない友情、長ったらしいストーリーもお涙頂戴な設定もないのに、ただドブに落とした鈴を拾おうと頑張ってくれただけののび太に対して、「君は、勉強も駄目。運動も駄目。根性もない。でも。でも、君はいいヤツだな」。[監督:寺本幸代、脚本:清水東]
好み:A
■34 2014 新・のび太の大魔境〜ペコと5人の探検隊〜
ドラ:0 本作においては、ドラが無用な活躍をせず、ジャイやしずやのびに譲るのが、いい。未来から来たドラがタケコプターで巨神像内を道案内するが、それくらいがちょうどいい。
のび:1 名刀電光丸でVSサベール。電池が切れても諦めない。
しず:2 先取り約束機はもちろんだが、スーパー手袋でゴリラを投げ飛ばすときの服がノースリーブなあたり、スタッフ「分かってる」。
ジャイ:2 裏主人公。
スネ:0 旧作通り。
ゲスト:1 ペコ=クンタック王子/チッポ/ブルスス/ダブランダー大臣/サベール隊長/コス博士/スピアナ姫。無駄な新ゲストを作らないという、リメイク最適解。
メモ:手堅いリメイク。[監督:八鍬新之介、脚本:清水東]
好み:B
■35 2015 のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)
ドラ:0 石頭。
のび:1 あやとりは役に立たない。毛糸の投網が発動するが、どうもあやとりっぽく思えない。
しず:1 アクアビーム←風呂好きだから。それって特技か?
ジャイ:1 肉弾戦。母ちゃん直伝・無限ビンタ。
スネ:1 腕がドリルに。そして頭脳役。
ゲスト:1 バーガー監督/アロン/イカーロス/ハイド/メーバ/オーゴン。能登かわいいよ能登。
メモ:ミラクルヒーロー銀河防衛隊は「ミラ・クル・1」が元だが、対象年齢はNHK「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」くらいかなと思った。満遍なく特技で活躍するシーンが割り振られ、ゆえに全体的に可も不可もなく。[監督:大杉宜弘、脚本:清水東]
好み:B
■36 2016 新・のび太の日本誕生
ドラ:2 神隠しの説明は控えめ。ヒカリ族に無駄に文明を齎さないという自制(不介入)。ギガゾンビのショックスティック(23世紀)に対して、ククルの石槍を投擲する。エンディングにて、ノリノリでドラゾンビのメイクをする姿。
のび:1 大筋は旧作と変わらないが、マンモス=TPの棚ボタ救援ではなく、ククルの犬笛からペガグリドラコの救助を得たにしても、ドラたちを助ける前にヒカリ族の脱出路を確保するなど有能。
しず:0 旧作と変わらず。
ジャイ:0 建設大臣を任じられて、まっかされよーではなく。序盤で「俺は母ちゃんの奴隷じゃないっつーの」があったからこそ、ヒカリ族がクラヤミ族のもとは高化されているのを見て「奴隷は許せないっ」と言っていた、のだと初めて分かった。
スネ:0 旧作と変わらず。
ゲスト:0 ククル/ペガ、グリ、ドラ/ギガゾンビ/ツチダマ数種類(!)。
メモ:手堅いリメイク。未来人不加入な文明論としても。[監督・脚本:八鍬新之介]
好み:A
■37 2017 のび太の南極カチコチ大冒険
ドラ:2 石像ヤミテムの擬態した姿が、不気味で可笑しくて。もちろん本来のドラも、タイムスリップに関する機転。こうじゃなくっちゃ。
のび:2 ドラとの信頼や優しさ。ヤミテムと本物ドラを前にジャイスネから「どっちが本物か決めろよ」と迫られて、「決められない」と保留する。これぞのびの美点。
しず:0 カーラとキャラかぶりのためか? あまり目立たず。
ジャイ:0 勝手に探索。のびに詰める。漢気ゼロ。
スネ:0 勝手に探索。のびに詰める。
ゲスト:2 ヒョーガヒョーガ星人のカーラ/ヒャッコイ博士/パオパオ(「宇宙開拓史」コーヤーコーヤ星の!)のモフ助とユカタン/巨兵ブリザーガ。
メモ:ポスターイメージの刷新。10万年前の古代都市というロマン。それがラヴクラフト味つけ、クトゥルフ味つけ。オーパーツのリングを探すというオカルトだかSFだか、高度な世界観。キャラの活躍よりも世界観の作り込みをしたことで、むしろキャラの魅力が増す。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ばりのタイムスリップギミック。作画的には氷の描き方。ドラ本流だったはずの渡辺歩が、「緑の巨人伝」で(ジブリに影響されて)生み出した駄目なところを、ジブリ出身の高橋監督が豪腕で書き換えた、と見立てたい。また、あえて泣きシーンを外したという監督の潔い英断も、アンチ渡辺の趣き。[監督・脚本:高橋敦史]
好み:A
■38 2018 のび太の宝島
ドラ:0 ポケットなんかないか芸→イカとかタコとか。
のび:1 テーマの都合上パパと喧嘩。
しず:2 さらわれた先で元気!
ジャイ:0 東京湾に自作イカダで。男らしさへのこだわり。
スネ:0 いたっけ。
ゲスト:0 少年フロック/オウム型子守ロボットのクイズ/しずに似ている姉セーラ/海賊ビビとガガ/海賊シルバー。
メモ:宮崎駿や庵野秀明の猿真似。ミニドラ出しゃ売れるっしょな志の低い映画。[監督:今井一暁、脚本:川村元気]
好み:C
■39 2019 のび太の月面探査記
ドラ:0 宇宙船を改造。外れただけで死ぬような道具を渡すなや……。
のび:1 バッジが外れて、あわや死?
しず:2 後半「鉄人兵団」っぽい→解決策が「大魔境」っぽい。ハイレベルなオマージュ。バッジを外したり付けたり。
ジャイ:1 アルの歌声に感動。
スネ:2 ルナに惚れる。橋の上の川に映る月を見て決心する場面は至高。
ゲスト:2 ルカ/姉ルナ/少年アル/亀のモゾ/ムービットのノビット(すべてアベコベ)/ウサギ怪獣/隊長ゴダート/ディアボロ。姉弟が好ましい性格。
メモ:難解な設定だが、すべては「想像力」というキー概念のために。脚本の辻村深月は素晴らしい仕事。[監督:、脚本:辻村深月]
好み:A
■40 2020 のび太の新恐竜
ドラ:0 なにしてたっけ。
のび:1 恐竜の親代わり。しかし根性論。逆上がりができない自分と、成長途中のキューを重ねて。きつい。
しず:1 のび太への告白みたいなセリフ。うーん作り手の志の低さが、あざとい。
ジャイ:0 ともチョコでゴルと。
スネ:0 ともチョコでトップと。
ゲスト:0 キューとミュー/恐竜博士/ジルとナタリー長官。
メモ:新恐竜という安直さ。「竜の騎士」のリメイクを予め潰す凶悪さ。根性論で感動を押しつけ。[監督:今井一暁、脚本:川村元気]
好み:C
■41 2022 のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)2021
ドラ:0 思い付きで大気圏に突っ込む危険なやつ。
のび:2 チーターローションは省略。石ころぼうしが脱げずにいるうちに脱出。単独で処刑場を目指す。パピとの友情。
しず:2 メルヘン映画撮影は省略(残念)。ピイナの面影をパピに思い出させる。
ジャイ:0 旧作と同じ展開。
スネ:2 2回ヘタレる。パピとの関係。
ゲスト:2 パピ/ロコロコ/ゲンブ/姉ピイナ/ギルモア/ドラコルル。
メモ:2021と銘打ったために、コロナてんやわんやで一年公開延期したがタイトルはそのまま、という時代性を反映。オリンピックはどうでもいいが、たまたま似た関係。内容としては、リメイクかくあれかし。パピを、完璧ではなく悩める少年として描き直す。[監督:山口晋、脚本:佐藤大]
好み:A
■42 2023 のび太と空の理想郷(ユートピア)
ドラ:2 タイムツェッペリン。道具制限。ソーニャとの友情。
のび:1 しずジャイスネの異変に気づく。パーフェクトから遠いからこそ。
しず:0 頑固と言われる。なるほど。
ジャイ:0 洗脳される姿が怖い。
スネ:0 怖い。
ゲスト:1 パラダピアを警護するパーフェクトネコ型ロボットのソーニャ/学級委員長ハンナ/賞金稼ぎのマリンバ→テントウムシ/三賢人/レイ博士
メモ:ゲストキャラとの友情はのび太担当が多いが、なんとドラが。洗脳の恐怖。善さの疑念。[監督:堂山卓見、脚本:古沢良太]
好み:B
■43 2024 のび太の地球交響楽(シンフォニー)
現時点で未鑑賞。[監督:今井一暁、脚本:内海照子]
■あとがき
採点してみる。
満点で 2×17=34
ドラ 11点
のび 23点
しず 16点
ジャイ 5点
スネ 6点
ゲスト 17点
2期で不遇をかこったしずの再興。まあ、観測者が萌え豚で百合アンテナが高いせいかもしれないが。
1期では拮抗していた、というよりコンビ芸だったジャイスネの比率が、2期でジャイ>スネになったのに、3期では1点とはいえジャイ<スネとなったのは、ちょっと気になる。
1期と、満点も、各キャラの比率も、似ているといえば似ている。
個人的好みとしては、Aが多かった1期、Bが多かった2期に対して、AもBもCも入り乱れ、乱高下。
少し時間をおいて、全期を振り返ってみたい。
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