小さな会社が自主制作本『A GUIDE to KUROISO』を一年かけて作った理由(1)
1年以上前から制作していた栃木県・黒磯のガイドブック『A GUIDE to KUROISO』がようやく完成しました。クラウドファンディングでご支援いただいたみなさん、改めてありがとうございます。
全国47都道府県を好奇心の旗振りだけで雑多に取材してきたHuuuuですが、そろそろ「ひとつの町に絞って取材したい。そして本を作りたい」と思いついたのは2年ぐらい前のこと。そして出会ってしまったのが、美意識の高いお店がひとつのストリートに連なっていて、自分たちの町は自分たちで作るDIYな精神性が強く鋭く宿った「黒磯」です。
ただのガイドブックを作りたい気持ちはぜんぜんありません。この町に根付いている「自分たちの未来は自分の手でつくる姿勢」。この精神性を一冊の本に落とし込んで、どこの地域の人たちにも伝わるような、若者たちが地元をボトムアップでおもしろくできるような、大人たちの背中を届けたかったんです。
「あたりまえに未来が生まれる町」
これは僕が考えた本のメインコピーです。
社会や行政など、他者のだれかに委ねない。自然と未来がポジティブにつくられる時代はもうありません。ひとりひとりの意思と決断。無謀な挑戦だと思われるかもしれない、確固たる強い気持ちが町の風景をひとつ作り上げていく。その連鎖が個性ある町を形成していくんじゃないかと思っています。
出版レーベルの立ち上げ
そして、この本を皮切りにHuuuuの出版レーベル『風旅出版(ふうりょしゅっぱん)』を立ち上げます。ロゴやウェブの制作はこれから着手予定。これまでウェブメディアを軸に編集してきましたが、「いやいや、ウェブより紙の編集の方がすげーよ?」というマウンティングを何度も見てきたんですよね。僕のスタンスは、「どっちの方がすごいとか関係なくて、両方やったほうがよくない? 」です。だから、やる。
もちろんフィジカルとして形に残る本の魅力に惹かれているのは言うまでもなく、Huuuuとして作品づくりに挑んでいきたいのが本音かもしれません。
しかし、自主制作で0から10まで本を作り上げて、在庫を抱えて、倉庫を手配し、流通と営業のルートを開拓する。いざやってみたら想像の120倍ぐらい大変でした(笑)。クラファン支援の方々に360冊をお届ける発送作業は、訂正紙の印刷→2つに折る→ビニール袋に入れる→封筒に入れる→宛名を貼るをスタッフ総出(東京から長野に社員召集)で対応。
丸一日かかったんですけど、普段ポチっとamzonで本を買ってる人間からすると「物流に対してマジ感謝…」となりました。最近構えたオフィス「MADO」があるからそもそも在庫確保もできたし、発送作業も対応できたんですけど、もしスペースがなかったら詰んでましたね…。
いやいや、日本の出版・取次の仕組みすげーな?と。こんなにもお金と手間がかかる本なのに1000円代で普通に売られてるのおかしくないか?と。ベストセラーを生むような博打的な側面は理解しつつも、高度経済成長の豊かさと知識への欲求が下支えしていたんだなと、実践の流れで気づくことが多々あります。だから、やってこはやめられない。
ここでお願いがあります!
独立系の書店はもちろん、大手書店まで、ただの町のガイドブックじゃないからこそ、全国の若者たちに届けたいと思っています。3000円の本を3000部売り切ることの難しさは重々承知の上で、魂を込めて作り上げた『A GUIDE to KUROISO』を販売してもらえないでしょうか。制作コストをかけすぎて基本8掛けの買い切りでやってます。ご了承ください…!
また、雑誌やラジオ、テレビなどメディアで取り上げていただけるようにPRも頑張っていかなければなりません。「気になる!」って人がいたら献本もお送りできますのでご連絡ください。やるしかねえ。届けるしかねえ。売るしかねえ。自社初のPR TIMESも打ってみました。3万円です。一冊の利益が600円しかないのに、このリリースだけで50冊販売しないといけません。売上のために作ってないけど、いちいち「おや?」と考える度に死ねる。
一冊単位での購入は現状、シンカイのECサイトが早いかと思います(取り扱い店舗は今後リストにして共有していきます)。シンカイやっててよかった…。地道なお店の機能がここにきて活きてます。今後の発送作業はシンカイスタッフの長崎くんが、時給発生中に対応してくれる予定です。そうなんです。その作業も人件費がかかる。自費出版レーベルは茨の道。
改めて書籍概要です
主筆はHuuuuに1月から入社した乾くん。ボロボロになりながら完成まで粘り強く作り上げてくれました。デザインは杉本さん。写真は八木咲さん。イラストは小松佑さん。新しいチームで挑んだ制作は、燃え上がる一晩の祭りのような感覚がありました。
そして印刷は、おれたちの藤原印刷!!
前代未聞のお願いごとまで対応してもらって、最後までやってこ精神で伴走してもらいました。ありがてええ。取材にご協力いただいた皆さんも、改めて改めてありがとうございました。いやー、これから売るタイムです。果たして3000冊も売り切ることができるのか? はじめての経験だらけで、39歳になっても脳に良いシナプスが走っていけそうです。
みんな、買ってこ!
できれば10冊単位で仕入れてもらえると嬉しいです!!
1982年生まれ。全国47都道府県のローカル領域を編集している株式会社Huuuuの代表取締役。「ジモコロ」編集長、「Gyoppy!」監修、「Dooo」司会とかやってます。わからないことに編集で立ち向かうぞ!