見出し画像

【ガイドブックに載っていない韓国旅行案内】(番外編)本『죽음을 넘어 시대의 어둠을 넘어』

2024.5.28

 『죽음을 넘어 시대의 어둠을 넘어』(チュグムル ノモ シデエ オドゥムル ノモ)という本をご存じですか?
 韓国で1980年5月に起きた光州民主化運動(5.18民主化運動、光州民衆抗争などとも呼ばれている)の証言記録と言える本です。
 日本語にすると、『死を超えて、時代の暗闇を超えて』となるでしょうか。
 この本には、1985年に発行された版と、それを全面改定して2017年に発行された版があります。
 2017年版について、教保文庫(교보문고)のホームページでは、次のように紹介されています。

〈5·18民主化運動に対する初の体系的な記録物!
1985年の出版当時「地下ベストセラー」として多くの人々が息を殺して読んでいた本『死を越えて時代の暗闇を越えて』が32年ぶりに全面改訂版で出版された。この本は5·18民主化運動に対する最初の体系的な記録物で、抗争に参加した光州市民の視角と証言を完全に盛り込もうと努力しただけでなく、最近までに公開された5·18当時の戒厳軍の軍事作戦内容と5·18関連裁判結果を反映して歴史的·法律的性格を糾明することにも努めた。また、抗争の当事者の他に当時現場を取材していた内外信記者たちの証言と記事などを通じて立体的で客観的に記述しようと努力した。
今回の改訂版は主に抗争被害者の証言を土台にした初版とは異なり、戒厳軍の軍事作戦関連文書、被害補償など行政機関文書、1868件に及ぶ抗争参加者の証言資料、5·18裁判資料、検察捜査記録、聴聞会資料など広範囲な資料を基に初版出版以後に明らかになった「戒厳軍の軍事作戦」内容と5·18裁判で明らかになった「歴史的、法律的性格」を明確にすることに焦点を合わせた。特に戒厳軍の場合、光州聴聞会でなされた鎮圧作戦参加軍人たちの証言と国会提出軍資料、12·12、5·18裁判と捜査記録などで明らかになった新軍部の内乱謀議と実行過程の不法性、加害者たちの不法行為に対する法律的判断を扱った。
この本の初版が出版された1985年は、5·18抗争の加害者である新軍部が執権していた時期だったので、筆者たちは資料収集に多くの制約を受けるほかはなかった。そのため、筆者たちは加害者である新軍部、被害者である光州市民、そして観察者である記者と宣教師など抗争関連者の中で一つの軸だった被害者の証言を中心に、当時まで生産された各種印刷物と入手可能な裁判記録など限られた資料だけを土台に執筆をしなければならなかった。しかし、政権の厳しい監視の中であるにも関わらず、ついに抗争5周年に合わせて出版され、大学街の書店で秘かに売れていく「地下ベストセラー」となった。〉

教保文庫のホームページより

 私はこの2017年版を、昨年(2023年11月)、ソウル市内の書店で購入しました。
 出版社は창비(チャンビ)。奥付を見ると、初版1刷は2017年5月15日発行。私が買ったものは、2021年6月20日発行の初版22刷のものです。1刷で何部が印刷されるのか知識がありませんが、3年間で22刷ですので、発行部数がかなり多い本になるでしょう。頁数601ページ。価格は28,000ウォン。

全面改訂版

 このあと紹介する1985年版は310ページなので、頁数で比較すると、全面改訂された2017年版は2倍近い分量になったことになります。
 日本語には翻訳されていません。
 3か月ほどかけて、最近、読み終わりました。

 1985年に韓国で「地下ベストセラー」となった最初のものも読んでみたくなり、調べてみました。
 その最初の『죽음을 넘어 시대의 어둠을 넘어』は、1985年5月1日の発行で、出版社は풀빛(プルピッ)。頁数310ページ。
 絶版になっています。

 この1985年版を日本語に翻訳したものが、『光州5月民衆抗争の記録 死を越えて、時代の暗闇を越えて』で、発行は「日本カトリック正義と平和協議会」。1985年10月1日に発売。頁数238ページ。
 これも絶版になっています。

 これとほぼ同じ内容の翻訳が、『全記録光州蜂起80年5月 新版:虐殺と民衆抗争の10日間』で、発行は「柘植書房」。もとは、1985年11月に発売されたようです。柘植書房は、現在は「柘植書房新社」になっています。柘植書房新社のホームページで確認すると、次のような説明があります。

〈本書は、1985年11月、柘植書房から出版されたものの新版です。
韓国映画「タクシー運転手」の公開で、再び光州事件に光があてられ、旧版(品切れ)への問い合わせがあり、要望に応える形で、旧版を画像で取り込み、新版として出版しました。〉

現在、入手できる日本語版(1985年版)

 この『全記録光州蜂起80年5月 新版:虐殺と民衆抗争の10日間』(柘植書房新社)が、現在、日本語のもので入手可能なものです。2500円+税。書名に「新版」という文字が入っていますが、内容は1985年版ですので注意してください。
 この本で、1985年版の内容を知ることができそうです。読み始めたところです。

 韓国語の書籍を読むことに慣れている方は、全面改訂版の『죽음을 넘어 시대의 어둠을 넘어』をお読みになることをお勧めします。601ページという分量で、光州民主化運動について、詳細に知ることができます。
 インターネット上には、光州民主化運動についてふれた日本語のページがいくつもあります。しかし、この本にふれた日本語のページがあるのだろうかと検索しても、ほとんど見つけることができませんでした。
 誰が、いつ、どこで、どう行動したか。そして、軍部にどう殺されたか。この本の内容の大部分は、そういう内容で占められています。収録されている写真は少ないですが、実名で登場する一人一人の市民の証言によって、光州民主化運動について多元中継を見ているように知ることができます。
 と同時に、権力に立ち向かって、危険を冒してでも記録を残そうとした、関係の方々の勇気と行動に、心が揺さぶられました。

 韓国語を学ぶ目的は、ひとそれぞれ、さまざまでしょう。
 私は日本語に翻訳されていない、この本を読んで、韓国語を学んできて良かった、と思いました。

いいなと思ったら応援しよう!

かきあげどん
よろしければ応援お願いします!いただいたチップは、今後の取材費用に使わせていただきます。