失われゆく遠井村
遠井(とい)村とは…
雄大に自然に包まれ、巨大な岩や樹への自然崇拝が息づく山村。かつて弘法大師空海がこの地を真言密教の聖地に定めようとしたこともあり、数々の空海伝説が色濃く残る場所です。また、ぶどう山椒の発祥地でもあります。
遠井村には、誰も知らないけど、とても深い由緒がひっそりと存在しています。
遠井村の概略
⑴位置
和歌山県のほぼ中央に位置する山村で、約1200年前に弘法大師 空海が開創した天空の聖地「高野山」の領地でした。
現在は和歌山県有田郡有田川町の編成されています。
⑵伝説・歴史
小さな山村の集落ですが、伝説や歴史がとんでもなく多く存在します。
その代表例が以下。
[伝説]真言密教(高野山)の候補地だった
空海は真言密教の聖地を求め、遠井村付近で護摩を焚いて祈祷したという記録があり、さらに聖地を求めて遠井村を調査して回った伝説があります。
そのことを村人に聞くと「昔っから、そんな話しやわな」と言います。
[歴史1]ぶどう山椒発祥の地
江戸時代に勘右衛門(かんえもん)という人がやたらと大きな粒をつける山椒を発見し、それを増やしていったことが「ぶどう山椒」の始まりとされています。
しかし、もっと遡った平安時代、朝廷や高野山に山椒を献上していた歴史書が存在していることから、ぶどう山椒はかなり深い歴史があると思われます。
[歴史2]御三家・紀州徳川家お気に入りの場所
二人の将軍を出した紀州徳川家。
そのお殿さまは、しょっちゅう遠井村で鷹狩や鮎狩り、寝泊まりをしたそうです。
お世話をした村人には、お殿さまから馬やお茶碗などのお礼をもらったのだとか。
[歴史3]龍神街道の要衝地
紀州徳川家の祖 徳川頼宣公が湯治を目的に整備された「龍神街道」。
この道はお殿さまのいる和歌山城を発し、遠井村を経由して日本三代美人の湯「龍神温泉」に至ります。
かつての遠井村は、人々や物資が多く行き交う重要な役割を担いました。
街道に「茶役所」という関所もありました。現在は廃道となっていて、人の姿はありません。
⑶遠井村のいま
総人口が40人。
60歳以上が80%を占める限界集落で子どもは0人です。
たくさんの棚田を形成して栄えた遠井村ですが、時代の流れで至る所に植林をしたこともあり、いまは集落が木々に飲み込まれそうな薄暗い村となってしまいました。
project_toi 発足
誰も知らない深い歴史と伝説…そして脈々と受け継がれてきたぶどう山椒という産業。
「失われゆく遠井村の地域文化を後世へつないでいきたい」とひとりの男が立ち上がり2021年に発足したのが「project_toi」です。
これから遠井村を存続させるために、さまざまな企画を立ち上げ地域の文化などに触れる機会を創出していきます。