【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer013【T-55戦車】
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皆さんおはようございます。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。
この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。
今回は世界最多数生産量を誇る、旧ソ連製『T-55戦車』について書きたいと思います。
過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。
【T-55戦車】
1.概要
T-55戦車は、旧ソビエト連邦で開発された中戦車です。
戦後の戦車開発における分類上は『第一世代』にあたります。
その生産台数は約10万両を超え、旧東側陣営における機甲戦闘力の中核を支えた戦車でした。
(生産台数:原型となったT-54、中国でライセンス生産された59式戦車を含む。)
その登場は1958年。西側にその存在が認知された当時は、名実ともに地上に存在するあらゆる戦車の中で『最強クラス』と評価されていました。
後に中東戦争で西側に回収された本車が徹底分析されてからは、弱点や問題点なども明るみに出たものの、大量生産&実戦配備された主力戦車と言う観点からは、驚きのスペックを有していたことに変わりはありません。
1970年代後半頃まで生産が続いた本車は、冷戦時代に旧東側をはじめとする世界各国に供与・輸出され、現在も現役で使用されているものが存在しています。
2.開発経緯など
(1)T-54の開発
第2次世界大戦中、旧ソ連が生み出した『現代戦車の始祖鳥』とも言うべき主力戦車のT-34。
登場時『T-34ショック』と言う言葉も生まれましたが、性能面のアドバンテージも戦場に次々と投入される新兵器に対して、いつまでも有効ではなくなってきます。T-34に代わる新型戦車が必要になるのは言うまでもありません。
第2次世界大戦末期に、現ウクライナのハルキウにあったハルキウ機械製造設計局、通称モロゾフ設計局で、Tー34中戦車に代わる新型戦車の設計・開発がすすめられ、その結果生み出されたのがT-44でした。
せっかく完成したT-44でしたが、登場時点で既に火力が陳腐化していたり、砲塔周辺にトラップショット(砲塔の摺動面付近にある逆テーパー部に命中した敵の砲弾が跳弾となって車体上面に刺さってしまうと言う弱点)があったことから、更なる改良が重ねられ、T-44をベースに主砲を100mm級にアップグレードするなどしたT-54戦車が誕生することになります。
(2)T-55の開発
一言でいうと、このT-55は、前身となるT-54の改良版戦車です。
NBC(核・化学・生物兵器)防護装置の標準装備、エンジン出力の向上、エアー補助機能付きトランスミッション(クラッチ)の追加などが施され、燃料や砲弾の積載量も増加。車体内部配置の再設計なども行われています。
夜間でも昼間のように見える『夜間暗視装置』が戦場に登場しはじめた当時、いちはやく、それら最新鋭の装備も追加されました。
見た目の形はT-55はT-54とほとんど変わりませんが、砲塔上部にある換気扇のカバー(ベンチレータードーム)の有無が識別のポイントと言われていて、カバーありがT-54、カバーなしがT-55と見分けられます。(このほかにも小さな識別ポイントは多数ありますが割愛)
3.運用実績など
(1)多くの戦場に投入された実績
冷戦時代を代表する旧ソ連製戦車のTー55。世界最多生産台数というのもあってか、あらゆる戦争・紛争において使用された実績があります。
現在の3~3.5世代戦車に比較すると、余りにも旧式な戦車であることは間違いありませんが、構造がシンプルで、かつ電子機器は一切使用しておらず、構造上のブラックボックスも存在していないことから、現在も様々な国で使用され続けているとも言えます。
製造当時のまま運用している国も多いですが、東欧諸国では、最新鋭の電子機器を用いた近代化改修を行い、運用している国も少なくありません。
(2)近代的な技術開発のテストベッド
対戦車火器の技術進歩が戦車の装甲防護能力を大きく上回る威力を呈している現代において、その対抗手段の一つとして有効と思われるものの一つに、『アクティブ・ディフェンス』と言うものがあります。
空中を飛んでくる対戦車ロケット弾やミサイルを、空中でレーダなどを用いて補足し、何らかの物理的な手段(機関銃や指向性散弾のようなもの)をもって迎撃するシステムなのですが、その前身となるシステムに、旧ソ連製のドローズド・システムというものがあります。
アフガニスタンで実際に使用され、その有効性が立証されたのですが…。
敵歩兵が射撃してくる対戦車火器の弾丸の殆どを迎撃できたものの、戦車の周辺に展開している友軍歩兵にも甚大な被害が出たことから、その開発は一時的に中止されたそうです。
旧ソ連軍の海軍陸戦隊が装備するT-55に、このシステムを搭載して研究が継続され、最終的には、現在のアルマータシリーズに搭載されている、高性能な直接防護機能などに技術が昇華していったものと推察されます。
また、中東戦争で本車を大量に入手したイスラエルでは、独自の回収を施したTiran(チラン)4/5と言う戦車を今も少数ながら運用しています。
湾岸戦争・イラク戦争、アフガニスタン、リビアやシリアの内戦など、世界各国の紛争地帯で本車は多数が使用されています。
(3)欠点
戦車に必要とされる要素には…
①低車高(シルエットが低い)
②避弾経始(敵砲弾への防護力)
③高火力
④機動性
などがありますが、T-55は登場した当時、それらの全てを具備した『世界最強クラスの戦車』と称されていました。
しかし、中東戦争において実際に東西製戦車同士が直接交戦した結果、「…ん?案外そうでもないよね?」となります。
【欠点】
①車内がとてつもなく狭い
⇒乗員のストレスが大
②砲弾が所せましと並べられている
⇒被弾即大爆発/超危険
③100mm砲(東)>90mm砲(西)
⇒実は威力的には同程度と判明
以上は一般的な評価ですが、個人的に思うところがあるとすれば。
①戦闘車両なんて、東西問わず、その狭さに差はないんじゃないかと。少しでも小さい車体につくれば『被弾面積』がおのずと小さくなるので、生存率の向上にもつながります。よって、この欠点は利点の裏返しにもなりましょう。
②統計上、過去の戦車戦闘では、砲弾の大半が砲塔に集中して命中することがわかっています。このため、旧ソ連製戦車の車内レイアウトは砲弾を車体部に格納していたのではないかと推察します。よって、当たり所がわるければ、そりゃ爆発もします。なので、これを欠点と呼ぶのはどうか?と思います。
(現在では一般的に、砲弾を別区画化されたスペースに集中積載し、被弾時は爆風を外に逃がすことでこの問題点を改善しようとするものが多い)
③ここは欠点と言うよりは、「東西どちらの戦車砲も口径こそ異なるものの、威力などはほぼ同性能だということが分かったんだよね。」程度のことなのかなと。
(その他)
○工作精度が非常に悪い
⇒ギアチェンジがムズい(…チェンジレバーをぶっ叩くため、『専用のハンマー』が車内に常備されていたのだとか)
エンジンを含めたメカ部分の寿命が西側製戦車に比較すると短命だったとも言われています。
例外的にですが、チェコとポーランドで組み立てられたT-55は工作精度・仕上げともに良質なものが多かったとも言われています。
4.最後に…
本車の記事を書くのは、まだ、ちょっと早いかな?と思わなくもありませんでした。何しろ、関連する情報がものすごく多いので。しかし、第1世代戦車を書いていると、避けられないので思い切って書きました。
ソ連戦車の開発系譜は非常に複雑です。
なので『体系的な知識を整理したもの』をいずれは書こうとも思ってます。
毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。
諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。
最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。
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