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【初心者向けミリタリー】装甲戦闘車両の歴史あらかると/AFV001【M113装甲兵員輸送車】

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皆さんこんにちは。

毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。

今日は、いつもの戦車の小話から離れて、ちょっと違う小話をしたいと思います。戦車とは切っても切れない関係の装甲車についてです。

この『AFVあらかると』シリーズでは、世界各国の歴代の装甲戦闘車を”単品”で取り上げてみたいと思います。

世界各国陸軍が装備している装甲車は戦車に負けないくらい豊富なラインナップがあるので、その全てを紹介するのは難しいですが、とりあえず特徴のあるものからボチボチ取り上げてみたいと思います。

今回は米国製『M113装甲兵員輸送車』について書きたいと思います。

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。

【M113/装甲人員輸送車】


1.概要

M113装甲兵員輸送車(M113-APC/ Armored Personnel Carrier)は、戦場で兵士を輸送するために開発された車両で、通称『戦場タクシー』と呼ばれる装甲車です。

車体は小火器程度の攻撃に耐えられるよう装甲化され、道路の無い路外での機動に適したキャタピラ駆動方式を採用した米国製の車です。

キャタピラ方式なので、タイヤ式の車にくらべて路外機動力が高く、タイヤでは通行ができない凸凹した路面や、泥濘化した地面でもある程度の機動力を発揮することができます。

また、この車には『浮航能力』があり、川や湖沼地帯などでは車体を浮かせて移動することができる水陸両用機能も備わっています。(外洋などの波が高い環境では航行が困難)

西側製の陸戦兵器の中で大量に生産された兵器の一つでもあり、総生産台数は約8万両以上と言われています。一般的な自動車だと大したことないと思われるかもですが、一台あたりの単価が高い軍用装甲車では異例の数だと思います。さすが工業大国アメリカですね。

そんな本車は1950年代に設計開始、1960年代から本格的に導入。その後も様々な近代化改修が施されながら、60年以上たった今も運用されています。

各種派生型車両のベースにもなっていて、地対空ミサイル発射機や、キャビンを拡大した移動指揮車両など、様々なタイプも存在しています。(本記事では純粋な兵員輸送車両のことをメインに書きます。)

2.基本スペックなど

車体はアルミニウム合金で、見た目の重厚さとは裏腹に、鋼鉄製の車両に比較するとやや軽量です。重量は約12t少々と、最新型のM2ブラッドレー歩兵戦闘車の約半分。同じ輸送機でブラッドレー1両しか運べないところ、M113だと2両載せることが可能です。

ただし、防護力はあくまでも敵小火器(突撃銃や機関銃などの射撃)や、砲弾の小さな破片から耐えられる程度の装甲しかありませんので、対戦車火器に撃たれるとさすがに撃破されます。

【カタログデータ】
○全長:4.86m
○全幅:2.69m
○重量:12.3t
○乗員:2名(車長・操縦手)+歩兵11名
○武装:12.7mm重機関銃
○速度:時速64km
○エンジン:ディーゼル275馬力
○足回り:トーションバー方式
○走行可能距離:約480km

3.『機械化歩兵』誕生の経緯

第1次世界大戦以前の戦場は、大砲の登場によって籠城(城にたてこもって時間稼ぎをする戦法。攻める側が圧倒的に不利だった)が無意味となり、戦いの決は大規模な歩兵による突撃によって敵を撃破するのが主流でした。

しかし、機関銃の登場によって歩兵による突撃ができなくなると、戦場は塹壕を掘って睨み合う『膠着状態』へと突入し、長期間互いに決着のつかない泥試合へと移っていきます。

そこへ、第1次世界大戦中、イギリスが塹壕戦に終止符を打つ決戦兵器を投入したことで、陸戦はふたたび固定的な戦闘から機動戦へとシフトします。これまでの常識を覆す戦場のゲームチェンジャー『戦車』の登場です。

戦車が穿った敵陣地の穴を広げ、敵中深く突進するという新たな戦法『電撃戦』もドイツによって考案され、戦場の環境は激変します。

ただ、ここで少々問題が発生することに。

戦車は無敵かと言われるとそうでもなく、分厚い装甲は正面だけ。側面や後方から撃たれることは余り想定していません。装甲で囲われているため死角も多く、近距離からの不意な攻撃には意外と脆い一面もありました。戦場の主役が歩兵から戦車に取って変わっても、敵歩兵から戦車を守るため歩兵のサポートが必要なことが明らかともなります。

また、それだけではなく、突破口を開いたあとの成果を広げるためには、高価な戦車は台数が全然足りませんので、陸上戦闘力の骨幹は、やはり歩兵部隊であることにかわりはありませんでした。

何が言いたいかと言うと、結局のところ陸戦では大量の歩兵が必要なのですが、戦車の機動力に徒歩で移動する歩兵は簡単に着いて行くことができません。

つまるところ、戦車の持つキャタピラによる機動力と同じ機動力を歩兵も必要としたということです。

戦車戦力を中核とし、その側面や背後を高い機動力と装甲防護力を持った車両で移動可能な歩兵が随伴できる、近代的装備で機械化された陸軍。『機甲部隊』の誕生です。

機甲部隊の基本的な運用方法や編成装備の基礎を築いたのは言うまでもなくドイツでした。技術将校ハインツ・グデーリアン氏は有名ですが、彼が言うには「戦車戦力1に対して、戦車の力をフル活用するためには2倍以上のの歩兵が必要、つまるところ装甲車が2両とそれに乗る歩兵が要る」と言ったそうです。
(大昔に読んだ本に書いてあったくだりなので記憶は曖昧です、すみません)

近代的な先進国の陸軍の編成/装備が本当にそうなっているかどうかはさておき、少なくとも戦車だけでは地域制圧能力は足りなくて、どうしても歩兵が必要になることは事実です。

そういった経緯から、世界各国の陸軍は主力戦車の開発にしのぎを削る一方において、戦車だけでは足りない力を補完するために不可欠だった歩兵の近代化もあわせてすすめる必要性に迫られます。

その結果、歩兵は従来の徒歩移動、鉄道移動、自動車移動といった機動方式から、戦車に密接に協力できるようにと、装甲化された車に乗って移動するというのがトレンドとなっていきます。

今回ご紹介した米M113装甲兵員輸送車が、その運用上の必要性から生まれた『歩兵の戦場タクシー』と呼ばれるゆえんでもあります。

4.最後に…

本車輛が設計された数十年以上昔は、まだ、今のように歩兵が軽易に持ち運びできる高性能な対戦車火器が大量に存在していなかったことから、要求される防護力がこの程度で大丈夫だったと言うのもありますが、2024年現在ではさすがに防護力に不安があるのは否めません。

増加装甲による防護力の強化は、重量の増大にもつながり、つまるところエンジン出力も不足することになるため、車体の基本設計(特に車体容積)などの問題から、無尽蔵にエンジンをパワーアップすることもできません。どうしてもアップデートに限界はあります。

M113は現在でも使用され続けているベストセラー装甲車であるのは間違いないのですが、いかんせん古すぎるため、まもなく新型装甲車の導入も計画中です。(その話はまたの機会に…)

よく、戦車単体の話になると、『○○式は重量が軽いから弱い、使い物にならない』と言った魑魅魍魎的な意見がちらほら出てきます(笑)

視野の狭い考え方をもとにすれば、やれ『火力ガー』とか、『装甲ガー』とか、『重量ガー/馬力ガー』などと言った話に終始しがちにもなりますが、陸戦兵器の設計や開発には、それらを使用する場所の特性や、相対する敵個体の戦闘能力だけでなく、陸上戦闘を取り巻く全体的な視点での考え方が不可欠になります。(時には空や海の領域のことも考える必要がある)

そう言った意味で、毎回、私の大好きな戦車だけのことだけを淡々と語るのも楽しいのですが、それ以外の陸戦兵器のことも少しづつまとめてみたらどうかと思って書き始めました。

毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

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