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【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer023【ルクレール戦車】

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皆さんこんにちは。

毎週木曜日の昼は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する時間にしております。

この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。

今回はフランス製『ルクレール戦車』について書きたいと思います。

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。

【ルクレール戦車】


1.概要

ルクレールはフランス製の第3/3.5世代の主力戦車です。AMX30主力戦車の後継として開発され、フランス陸軍が400両、アラブ首長国連邦が約400両(フランス本国仕様とはエンジン形式が異なる改造車体)、ヨルダン陸軍がアラブ首長国連邦から譲渡された車両80両を保有しています。

1971年:基礎研究開始
1986年:試作車輛完成
1989年:量産試験車両完成
1992年:フランス陸軍に導入

本車開発当時、米国ではM1エイブラムスが、西ドイツではレオパルト2がそれぞれ配備状態にあり、それらから少し遅れてデビューした本車は、後から出て来ただけに最新の各種技術が盛り込まれた次世代戦車として注目を浴びました。

2.構造・機能など

(1)構造機能

○ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンのハイブリッド方式パワーパックの搭載による小型軽量化に成功
○長砲身の独自開発戦車砲の採用
○コンピュータ制御による弾丸選択機能つき自動装てん装置の搭載
○新型サスペンションの搭載による車体安定性能の向上
○走行間射撃が非常に高性能(3kmで90%以上の命中率)
○データリンク機能の搭載

【最大の特徴】
本車は、当時としては非常に先進的なデータリンク機能を有していました。このリンク機能の有無が第3世代と第3.5世代を分けるとの見解もあります。

従来の陸戦では、友軍同士での意思疎通は主に無線(音声)と視覚情報を頼りに行っていました。戦闘中は複雑な状況があちこちで発生しますので、戦闘がすすむと友軍同士の連携がとりにくくなり、最悪の場合は同士討ちが発生してしまうことも少なくなかったと言われます。

この問題は、データリンク機能の実用化によって劇的に改善されることになります。リアルタイムに友軍の正確な位置を相互に共有できることによって、敵・味方の識別が正確になったためです。

アニメや漫画を見ていると「なんだそんなことか」と簡単に考えてしまいそうですが、実際の戦場では敵・味方の識別がものすごく難しいとされます。そもそも戦車は敵と味方で形が違うから簡単に分かるだろう的な考えもあるかも知れませんが、距離2~3kmも離れた場所にあるカモフラージュされた戦車が敵か味方かと言う識別は容易ではありません。

リアルタイムで電気信号によって同一画面上で友軍の戦車の位置が明確に把握できる。これは陸戦における極めて大きな進歩と言っても過言ではなく、1990年代当時にこの機能を搭載していた本車は、事実上、世界最先端の機能を有した最新鋭戦車であったことは間違いありません。

(2)火力など

F1/52口径120mm滑腔砲は、当時西側各国の主力戦車が搭載していた西ドイツ・ラインメタル社製の44口径のものと比較して長砲身であったことから、砲弾に与えるエネルギーが大きく、飛距離・パワーともにこちらの方が強力で高性能な砲と言われていました。(現在は、ラインメタル社製の戦車砲で55口径砲が登場しています。)

使用砲弾は、一般的なAPFSDS弾(徹甲弾)、多目的対戦車りゅう弾、通常榴弾など。搭載できる砲弾の数は、砲塔後部の自動装てん装置内に22発、車体本体内に18発、合計40発です。

本車の特徴の一つに自動装てん装置があげられます。砲塔後部の弾倉に格納された砲弾は、あらかじめコンピュータに、どのレーンに何の弾が載せられているか入力作業が必要ではありますが、砲手が指定した弾を素早く全自動で装填できるという非常に優れた装置です。当時世界でこのような仕組みを持った戦車は存在していません。(日本の90式をのぞく)

当時トレンドになりつつあった、レーザーを用いた距離計測機能や夜間暗視装置等も標準装備しており、非常に正確な射撃性能をもっています。

また先進的な機能で、砲手と同じ砲塔操作用コントローラが戦車長席に設けられており、砲手が目標を発見・射撃している最中に、戦車長がボタンひとつでその制御をオーバーライドすることもできます。この機能とコンピュータへの目標の補足・指定入力によって、1分間に6個の目標を同時に追尾・射撃することが可能とも言われています。

(3)機動力

【エンジン】
本車はとてもユニークな、ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンの複合機関を搭載していたことで話題になりました。このエンジンは、主機側のディーゼルエンジンを停止し、ガスタービンエンジンのみを起動すると補助動力装置として利用できます。

近年の戦闘車両は様々な電子機器を搭載していることから、電力を通電させるためにはエンジンを回さなければなりません。米M1戦車は深刻な燃費問題から、急遽砲塔横に追加で補助動力装置が装着されたほどです。フランスは非常に先見の明があったと言えます。

また、この非常に小型・軽量のコンパクトなエンジンは、戦車の泣き所である車体全体の小型化にも恩恵を与えています。

当時は高性能な対戦車火器がどんどん実用化され、中東戦争では対戦車ミサイルによる効果が大々的に取り沙汰されていた時期でもありましたので、戦車の機動性は残存性の向上に必須の性能でもありました。

デメリットも、もちろんありました。非常に高性能なエンジンは、機械的に複雑でメンテナンスが非常に難しかったことです。戦場で破損や故障が発生した場合は、エンジン・変速機などを一挙に交換する必要があり、整備性と言う面ではやや効率がよくありませんでした。

アラブ首長国連邦へ輸出された車体は、この問題を改善するため、複合エンジンではなく、従来技術のディーゼルエンジンに換装されています。

【サスペンション】
シトロエン社製の自動車技術を応用した特殊な懸架装置を装備しており、車体の安定性を向上させています。ただし、これは日本の74式や90式、10式のような姿勢制御をすることはできません。

(4)防護力

【装甲】
車体と砲塔の前面にモジュール化した複合装甲を装着しており、被弾などでダメージを受けた際は素早い部品交換が可能とされています。

車体や砲塔そのものは鋼鉄製の装甲板にかこまれていますが、内外の板の間に複合装甲が詰め込まれており、ドイツ製レオパルト2や日本の90式のような垂直形状の装甲と言われています。本車の特徴的な丸みを帯びたフォルムは、その装甲板の外側に設けられた鉄製の箱によるもので、それ自体には防護機能はないとされています。

【アクティブ防護機能】
Galix戦闘車両防護システムが装備されており、砲塔に装着された発射装置から、目的に応じた射出体を撃ちだすことができます。

左右9発づつ合計18発の弾がこめられており、赤外線遮断効果のある発煙弾、空中で破裂して敵歩兵を攻撃する近接防護用てき弾、赤外線誘導方式の対戦車ミサイルを誤魔化すためのフレアなどがあります。

3.最後に…

かつて、第二次世界大戦後にフランスはドイツとの間で主力戦車の共同開発に挑戦したことがありました。

残念ながら当時は各国の意見があわずにそれぞれでAMX30とレオパルト1を別々に開発・導入したという結果になったものの、次世代の欧州標準戦車となる可能性が大いに期待できる計画が現在すすんでもいます。

私個人の意見にはなりますが、車体や砲塔の機械的な設計・製造技術において世界随一の高いレベルを有するドイツが本体を設計し、ルクレールで優れた戦車戦闘機能を具現化したフランスが砲塔内部の仕組みを電子装置を含めて手掛けることで、究極の陸戦兵器である戦車の決定版が生まれることは間違いがないのかなと思います。

毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

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