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【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer030【オブイェークト148/T14戦車】

(全3,333文字)
皆さんこんにちは。

毎週木曜日の昼は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する時間にしております。

この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。

今回はロシア製の最新鋭戦車、『オブイェークト148/T14戦車』について書きたいと思います。

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。

【オブイェークト148/T14戦車】


1.概要

オブイェークト148/T14は、ロシア製の第4世代に相当する最新鋭の主力戦車です。(第4・第5世代の定義があいまいなので、詳細は割愛します。記事では第4世代と書きます。)

2015年、モスクワのパレードで初公開
2017年以降に量産開始
2020年まで2千両余を導入予定

ロシアからの公式発表が上記の流れでありましたが、当時の同国の経済状況を考慮すると、『やや現実味に欠ける』との評価もあったようです。

東西冷戦崩壊以降に立ち上がった次世代戦車の開発計画は、主に予算面の問題などから中止・延期が相次ぎましたが、本車の計画がスタートしてからは、約5年で開発を終えています。

もとは90年代末に既に存在していたT95(T80戦車の後継)のコンセプトがもとになっているので、技術的な制約面がクリアできれば形にするのは難しいものではなかったかと推察されます。(戦場環境が著しく変化した昨今では、むしろ次・次世代のことを考えることの方が難しくなってきてもいます。)

現状において、世界各国陸軍の戦車は第3.5世代が最新ですから、本車は事実上、世界初の次世代型戦車ということになります。

プラモデルなどでは、本車はよく『アルマータ』と言う通称で呼ばれることが多いのですが、アルマータは戦車の名称ではなく、『重プラットフォーム』の総称であるT14のことを指します。

…なんだか、少々ややこしいですね(汗)

話が混乱しますので、ここで、一旦ロシアの最新鋭装甲戦闘車両のカテゴリ整理をしておきます。

★軽量プラットフォーム
”タイフーン”(軽装甲車両など)
★タイヤ式軽量級プラットフォーム
”ブメラーンク”(装輪装甲車など)
★キャタピラ式中量級プラットフォーム
”クルガニェッツ”(各種戦闘装甲車など)
★キャタピラ式重量級プラットホーム
”アルマータ”(戦車、自走砲、歩兵戦闘車など)

この区分で旧兵器の近代化改修のコストを極力下げつつ、当面はT14の取得に重点を置き、次世代戦闘車両の開発に注力するというのが、当時のロシアの方針だったのではないかと思われます。

余談になりますが、東西冷戦崩壊直前の旧ソ連内には、試作兵器の開発計画(紙だけのものや試作品が出来上がっているなどの幅はあったものの)は、無数のプランが存在していたとされ、それらを整理・統合する形で、厳しい予算面での課題をクリアしようとしているのが現在の状況のようです。

2.構造・機能など

(1)構造機能

本車は、世界に先駆けて無人砲塔を導入した先進的な設計が注目されました。世界中の戦車設計の常識を覆すとまでは言いませんが、無人砲塔の導入は、かなりハードルの高い挑戦だったことは間違いありません。

戦車兵は戦車長が直接外に首を出して、自分の眼で見、耳で聞き、鼻でかぎ、その他、ありとあらゆる感覚を研ぎ澄まして戦場の状況を把握するものとされてきました。それが無人砲塔になると、戦車長の状況確認に何かと支障が出ます。現在は各種センサーの性能が向上しているからと言う解釈もできますが、バトルプルーフされるまでは未知数としか言えません。

【主な特徴】
★完全無人化砲塔
★砲塔内に戦車砲弾の殆どを搭載
★自動装てん装置
★乗員は戦車長、操縦手、砲手の3名
★乗員は車体内の装甲カプセルに乗車
★先々は、140mm級砲への換装が予想
(当初T95では135mm~152mm級戦車砲の搭載を予定)
★次世代型ERA+新型装甲の採用
★アクティブ・プロテクション・システムの搭載
★遠隔制御による無人車両化を考慮した設計

【基本スペック】
★重量:55t
★全長:10.8m
★全幅:3.5m
★全高:3.3m
★乗員:3名
数字にすると、へえそうですか。みたいな感じになってしまいますが、かなり、軽量コンパクトな戦車です。少なくとも、70tや80tにまで肥大化してしまった西側各国の主力戦車に比較すると、重量では極めてアドバンテージが高い。道路や橋に制限を受けないというのは大きな利点です。

(2)火力など

従来の旧ソ連製2A46から、新設計の125mm滑腔砲/2A82ーM1を搭載。発射速度が1分間に10~12発とやや高めになっており、有効射程はセンサーや射撃統制システムの性能向上とも相まって、カタログ上は数Km以上とされています。(湾岸戦争での英国の最長戦車射撃距離を超える能力に相当)

従来の2A46戦車砲が『分離装填方式』だったことから、APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)の貫徹体の全長を伸ばすことが困難でしたが、新型の戦車砲専用に開発された砲弾では大きく改善されています。(距離2km程度でRHA換算1m程度の装甲を貫通可能とされ、これが本当であればかなりの脅威になります。)

尚、無人化された砲塔には、45発の即応弾薬を搭載可能であり、徹甲弾のほか、榴弾、対空・対地兼用の新・砲発射型誘導弾も使用可能。自動装てん装置には、32発が格納されます。

パレード用車両はフル装備で行進していないようですが、重機関銃と汎用機関銃をそれぞれRWS(リモート・ウェポン・ステーション)に搭載しており、車内から遠隔操作で射撃することが可能です。現代ではごく一般的な装備ですね。

(3)機動力

ディーゼルエンジン/ChTZ12H360(A-85-3A)を搭載。これは、戦車用エンジンにしては珍しくX配置のピストン構造のもので、前後の幅は比較的コンパクトなのですが、高さがかさばるものです。完全無人化砲塔の導入等によって大幅な軽量化が可能になったことから、エンジンそのものものも小さくできましたが、何かちょっと気になります。

これは私個人の予想ではありますが、砲塔を完全無人化したことと、3名の乗員を車体前方の装甲カプセルに搭乗させること、ゆくゆくは完全無人化での運用を視野に入れていたことなどが関係するのではないかと予想しています。

優れた自動変速機が装備されており、最高速度はおよそ時速80~90km程度とされます。

(4)防護力

近年、装甲防護力の指標として良く用いられる言葉に、スタナグ/STANAGというのがありますが、T14は、これで言うとレベル5に相当すると言う、かなり高い防護力を有します。

砲塔の無人化による全体的な軽量化と、乗員が搭乗する装甲カプセルを集中防護すると言うコンセプトが成せる技なのかも知れません。装甲カプセルと言うコンセプト自体は、T95戦車の構想が持ち上がった当時からあるものですが、このおかげで重量を減らして防護力を上げると言う理想的な設計が可能になったと思われます。

T14には、このほか、次世代型ERA、アクティブ・プロテクション・システムなどの防護機能も充実しており、従来使用してきたスモーク等も装備されています。

3.最後に…

先進的技術が多数導入されていることに注目した記述が続きましたが、つまるところ、戦車は…

走る・撃つ・耐える

この三つがバランス良ければそれで良かったのが、90年代までの話でした。2000年代に入ってからの非対象的脅威との戦いも決して無視はできませんが、これからの課題は…

人工建築物が密集する都市部での戦闘環境に対応
(そもそも上は撃てません)

安価・大量に飛んでくる安物ドローンへの対応
(いつまでもイイ気になるな玩具たち)

戦車以外の敵に対応
(戦車殴っとけば褒められた時代は終わった)

でしょうか。

T14戦車は世界に先駆けて、それらを検証すべく実証実験を重ねているのではないかと思われます。

毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

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