【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer020【T-80戦車】
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皆さんこんにちは。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。
この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。
今回は、旧ソ連時代最後の究極戦車、『T-80』について書きたいと思います。
過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。
【T-80戦車】
1.概要
戦車大国(旧)ソ連が威信をかけて開発したT-80戦車は、本戦車が出現した当時、地上に存在したあらゆる国の戦車の中で、最も先進性を備えた量産型戦車と言っても過言ではない存在でした。
冷戦崩壊直前、旧ソ連では数百種類にも及ぶ陸戦兵器の試作設計案が存在したとも言われています。複雑な兵器開発系統の頂点に上り詰めたT-80は、旧ソ連戦車開発技術が生んだ最高傑作と言っても過言ではないでしょう。
西側各国の主力戦車と比較して、軽量・コンパクトで被弾率を極限した低車高なシルエット。そして、戦車を評価する3要素は、従来の旧ソ連戦車の開発系統で蓄積された様々なノウハウが凝縮されたものになっており、文字通り最高傑作にして最強の主力戦車と言えました。
走:高出力ガスタービンエンジン
攻:125mm滑腔砲+砲発射ATM
守:複合装甲+ERA(爆発反応装甲)
積極的に同盟国などに輸出・供与された、T-55やT-62、T-72などとは異なり、T-80はT-64と同様、ソ連軍内に限定配備され、対NATOの重要正面とされた東ドイツ駐留部隊などに集中配備されていたとされます。
生産台数は、高性能なため、やや少なく、約5千両程度といわれています。
2.構造・機能など
(1)構造機能
T-72やT-64の開発過程で蓄積された技術をもとにした複合装甲を採用。ソ連軍のみに限定配備されていた各種戦車と同等の防護力をもちます。
T-80BV以降のタイプには、「コンタークト1」爆発反応装甲が追加され防護力が向上。その後に登場するT-80U型には更にアップデートされた「コンタークト5」が装備されています。
一般的に、爆発反応装甲は、HEATやHESHのような化学エネルギー弾には有効とされていましたが、APFSDS弾のような運動エネルギー弾には無効とされてきました。ですが、この「コンタークト5」は、当時の西側各国で装備していた120mm級の徹甲弾が無効なことが判明しています。(ソ連崩壊後の調査による。)
尚、T-80の最終進化型であるT-80BVMには、更に防護力が向上したレリークト爆発反応装甲が装着されています。
(2)火力など
1978年以降、レーザー測距機と連動したFCS(射撃統制装置)を搭載したT-80Bタイプに生産ラインが変更され、砲発射型ATM/9K112コブラ(1985年以降、新型9K119レフレクス/レーザ誘導方式に更新)の搭載とも相まって、対戦車戦闘能力が大幅に強化されています。
(と、簡単に書いてはいますが、1970年代後半当時の技術レベルで考えると極めて高度な戦車射撃能力を有していたことになります…。)
主砲は2A46M-1/125mm滑腔砲を搭載、西側各国の主力戦車が搭載しているラインメタル社製L44/120mm滑腔砲と威力はほぼ同等とされます。(最新型のT-80BVMでは、更に威力を向上させた新型APFSDS弾に対応した2A46M-4に換装)
T-80U型からは、車長用全周視察装置を搭載し、ハンターキラー能力が大幅に向上しています。
夜間暗視能力は微光増幅装置で約850m、当時の西側戦車と比較するとやや劣りました。その補完用に、砲塔に「ルナ」赤外線投光装置が装着されています。夜間暗視装置の開発にはそれなりのコストが必要というのもあり、高性能な装置は指揮官車両タイプにのみ集中装備されていたようです。
T-55/54、T-62を除く旧ソ連製戦車にはおなじみの「自動装てん装置」ですが、T-80ではT72方式の水平装填式ではなく、T-64と同形式の砲弾を垂直状態から装填する形式。分離装填ではないため、砲の発射間隔はT-72系車両と比較すると非常に高速で、公開情報では約6秒半程度とされます。(機械的信頼性はT-72のカセトカ式の方が優れるとも言われている。)
(3)機動力
米国がM1エイブラムス戦車でガスタービンエンジンの実用化に成功し、本格的な装備化が開始されたのが1980年に入ってから。その数年前、既にこのT-80が量産体制に入っていたことを考えると、旧ソ連は常に戦車開発技術において世界の最先端を走っていたとも言えます。
旧ソ連においては1960年代半ばから既に戦車用ガスタービンエンジンの開発がすすめられていました。T-64の開発が遅延していたとはいえ、その開発途上で蓄積された技術がT-80に生かされたのは言うまでもありません。
初期型エンジンで1,000馬力
T-80Bの改良型で1,100馬力
T-80Uでは1,250馬力
米国製M1エイブラムス戦車が約1,500馬力なのに比べると、ややエンジンパワーの数値は劣るものの、車重が約40t少々であることから、同等以上のパワーウェイトレシオの計算になります。(戦車はデカくて重ければ良いというものではありません。)
余談になりますが、第3世代戦車の多くが1本もののバイク型のようなハンドルなのに比べ、T-80では昔ながらの2本のレバー操作で方向操作する方式をとっています。
3.運用実績など
(1)1994年第一次チェチェン紛争
本車の本格的な実戦投入は、当紛争における戦例があげられます。ただし、約150両が投入されたものの目覚ましい戦果は挙げられていません。理由は、戦場のほとんどが市街地メインであったこと、敵対勢力が人員が主な構成のゲリラ戦であったことなどです。ソ連製戦車の泣き所である砲の上下俯角が大きく取れないなど、「得意とする戦い方」ができる戦場ではありませんでした。
そもそも、広大な欧州大陸を主戦場として想定していた旧ソ連の戦車開発のポリシーに基づいて設計された戦車に、市街地戦闘、しかも対人戦は想定外だったと言えます。
特に激戦となったグロズヌイの戦いにおいては多数のT-80が撃破され、本紛争以降、同国は本車を実戦投入していません。
(2)ウ国
T-64の開発元であったハルキウのモロゾウ機械設計局では、エンジンを対向ピストン方式のディーゼルエンジンに換装したT-80UDが開発されており、指揮用戦車T-80UDKなども存在しています。
旧ソ連崩壊以降、ウ国では同設計局を中心にT-80UDの改良が積極的に行われており、パキスタンなどへの輸出実績あり。その後、自国用T-84Uオプロートや、輸出仕様のT-84-120(NATO標準120mm砲搭載型)なども登場。2009年にはタイ陸軍がT-84UBMを採用しています。
(3)露国
露本国におけるT-80の改良は低調と言われていますが、T-80の砲塔(要は優秀な射撃システムそのもの)を信頼性の高いT-72と合体させたことによって、安価で高性能な戦車であるT-90が誕生したことが理由のひとつだったのかも知れません。(T-80Uをベースとした改修型が少数試作されたものの、いずれも採用には至っていないことからも、ガスタービンエンジンの運用が一つのボトルネックとなった可能性も否めないかと個人的には考察)
1990年代末、露軍次世代戦車計画「チョールヌイオリョール/T-80-UM2」が存在したものの財政難から中止。その後、2015年のT-14登場まで新戦車の開発は事実上ストップしています。
T-72B3、T-90MSなどの技術を応用したT-80の最終進化型とされるBVMは、北極圏のような極寒地域でもガスタービンエンジンであれば運用が可能との利点が再評価された証左かも知れませんが、その生産量は2020年当時の段階で約数十両とされています。
(4)バリエーション
T-80:最初期型、T-64に1,100馬力ガスタービンエンジンを搭載
T-80A:T-80初の改修型、生産台数はごく少数
T-80B:T-80を大幅に改修したモデル。特筆すべきは優秀な射撃システムと砲発射型ATMの搭載。また、装甲も新型複合装甲に換装
T-80BK:T-80Bの指揮型戦車。ナビゲーションシステムや通信装置を強化
T-80BV:T-80Bの派生型、コンタークト1ERA(爆発反応装甲)を装着
T-80U:砲発射ATMを9M119レフレクスに更新。砲塔まわりの設計を大幅にアップデート。ERAをコンタークト5に変更。エンジン出力が1,250馬力に強化。
T-80BVM:2017年発表。T-80系最新型。T-72B3、T-90MS、T-14などの技術をバックフィット。新型APFSDS弾対応の新設計砲2A46M-4を搭載。ERAを新型のレリークトに更新。(北極圏での運用を想定)
4.最後に…
最後に、本記事は、戦車と言う陸戦兵器がどんなモノなのかというのを淡々とつづるだけの記事のつもりです。
私自身、一般の本屋さんで手に入る関連書籍や、ネットで知ることができる範囲の情報を参考に記事を書いていますので、ネットでググれば似たような情報が一瞬で大量に出てくると思います。なので、この記事自体に、さほど特別な価値は無いのかも知れません。一般的に公開されているものと殆ど代わりばえの無いものばかりです。
ぶっちゃけ「wikiと変わらんよな」と言われても、情報を収集してまとめ、順序良く並べれば似たようなものになるのは当たり前じゃないか?と開き直ってもいます(笑)
ほんの少し個人的な見解やコメントは追記してもいますが、一番言いたい事があるとすれば…
西側のあらゆる戦車に先んじて、T-80と言う究極の戦車の完成形を生み出し、少数とは言え量産体制まで持って行って、実際に実戦配備していたことに驚きを隠せません。
近代戦史上では、旧ソ連製戦車の脆弱性が書かれているのが多く見られますが、湾岸戦争や中東戦争など、どれもがモンキーモデルと言われる複合装甲も持たない輸出仕様モデルとの戦例ばかりです。本来の性能よりもグレードダウンしたものばかりでした。「想定していた設計思想とは異なるやられ方」によるものが多かったとも言い替えれます。
現代の戦場は戦車同士が正面から正々堂々と殴り合うような戦場ではなくなりつつあるのかも知れません。しかし、陸戦における戦車の位置づけが変わりつつあるだけで、その存在が即無くなることは無いと個人的には思ったりもします。
歴史と科学を勉強し、未来を予想・創造するのは何事にも大事なのかなとも思うところです。
毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。
最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。
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