【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer002【Ikv91/水陸両用軽戦車】について
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皆さんおはようございます。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。
この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。
今回は、スウェーデン陸軍が1960年代に装備していた、『IKV91水陸両用軽戦車』について書きたいと思います。
よろしければお付き合いください。
過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。
IKV91水陸両用軽戦車
1.概要
IKV91(Infanterikanonvagon91)は、旧ヘグルント社(現在のBAEシステムズ・ランド・アンド・アーマメンツに吸収合併)が開発・製造した、水陸両用軽戦車です。
この戦車は、対機甲戦闘を主任務とする『主力戦車』ではなく、歩兵への火力支援や威力偵察などを主任務とした運用を前提に開発されました。
軽量・高機動をコンセプトとし、特筆すべきは高い浮航性を備えており、湖沼が多数存在するスウェーデンと言う国の地形的な特性にピッタリとフィットする装備と言えます。
本戦車の開発年表は以下の通り。
1969年:試作車輛完成
1974年:先行量産型完成
1975年:量産開始
(1978年までに210両生産)
1960年代当時、完全ではありませんでしたが、部品の多くを国産でまかなえていたのは凄いことです。
複雑な工業製品の結晶である戦車という兵器を、単一の企業(純国産)で、設計・製造できた例は少なかったとも言われています。
本戦車は、永世中立国としての立場を貫いたスウェーデンと言う国の防衛構想に、高い次元でフィットした象徴的な装備でもあるとも言えます。
2.構造・機能・運用
(1)車体・砲塔など
スウェーデンは山林や湖沼が多かったことから、路外機動(道路外の泥濘地などを走ること)を徹底追求した設計になっています。
このため、防弾性能は一般的な装甲兵員輸送車程度なのですが、そのおかげで、湖や沼を、『浮航』(水面を浮いて航行)して移動可能でした。
砲塔と主砲の駆動は油圧式ですが、砲を安定させる機能はオミットされています。これは、恐らく歩兵への火力支援任務が主体の運用構想だったことから、行進間射撃機能が必要な戦闘場面を前提としていなかったことが伺えます。
乗員は4名で、操縦手が車体中央前方、砲手が砲塔右側、その後ろに戦車長、砲塔左側に装填手が配置されており、一般的な戦車と同じレイアウトです。
砲塔左右には片側5本づつ、発煙弾発射機が装着されており、NBC(対核・化学・生物兵器)防護機能も標準装備されていました。
(2)機関部・駆動系など
エンジンはボルボ社製、約330馬力、直列6気筒液冷式ディーゼル・ターボエンジンを搭載しており、整地走行能力は当時の戦車としては高速の65km/hを誇ります。
変速機のみ米国製トルクコンバーターを使用していますが、トーションバー方式の足回りやクラッチ、ブレーキなどの駆動系は同国が装備していたPbv302装甲兵員輸送車のものと共通化を図っています。
水上走行はキャタピラで水をかいて推進する方式。時速約6.5km/h。
(3)兵装
主砲はスウェーデンのボフォース社製90mm低圧砲。戦後の西側各国の第1世代戦車とほぼ同等の火力を持つ。尚、先に述べた通り、砲身の安定化装置はついていない。砲弾は合計59発搭載。(対人用の榴弾と対戦車榴弾の2種類のみ。徹底している。)
FCS(射撃統制システム)は、当時の主力戦車とほぼ同じ機能を全て装備(レーザー測距機、AGA社製弾道計算コンピューター等)
夜間暗視装置が無いため、夜間戦闘は不可能。砲塔に照明弾発射装置を装備しているタイプの車体が存在している。
副武装に7.62mm機関銃を主砲と同軸部に装備、装填手用ハッチにも同機関銃を装備している。
主砲を105mm戦車砲に換装する案もあったが、試作のみで採用されていない。(東西冷戦の終了、後継装備のCV90に統合等の影響があったものと推察)
(4)運用
製造された全部で210両の車体は、全車両がスウェーデン陸軍に装備され、Sタンクとともにスウェーデンの武装中立の一翼を担いました。
2000年代にStrf90歩兵戦闘車に換装され、現在は全車が退役しています。
3.最後に…
主力戦車のSタンクといい、スウェーデンの兵器体系は非常に興味深い。
いらない機能は徹底して排する『思い切りの良さ』がスウェーデン製兵器には良く観られますが、『あれもいる!これもいる!』で、結局は丸まってしまい、『特徴が無いのが特徴』のような中途半端な兵器になっていない。
文字通り『尖った』装備体系には熱いロマンを感じます。
毎度のことながらですが、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますが、どうかご容赦ください。
最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。
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