【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer026【レオパルト2】
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皆さんこんにちは。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。
この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げて紹介してみたいと思います。
今回はドイツが世界に誇る主力戦車『レオパルト2』について書きたいと思います。
過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。
【レオパルト2/独】
1.概要
レオパルト2は、陸軍大国にして、現代戦車戦術の始祖を切り開いたドイツが生んだ、『NATO標準規格の代名詞的な第3世代主力戦車』です。
本格的に主力戦車として運用が開始されたのが1979年。今から45年前と、実に長い歴史を感じます。
めまぐるしく変化する戦場環境に柔軟に対応できたのは、単純な改修やアップデートのみでは生き残ることは困難です。レオパルト2は、その基本設計の優秀さ故、懐の深い潜在的な戦闘能力を秘めていたからではないかと個人的に思うところです。
40年以上もの間、世界中の戦場で戦い続けてきた本車ですが、基本的な設計は古いものの、過酷な戦いに耐え得るだけのキャパシティーを十分に持っていたことの証左なのかも知れません。
簡単に言うと、『非常に完成度の高い戦車』だったことが伺えます。
レオパルト2には多くのバリエーションが存在していますが、大きく2つの設計・開発グループに区分されます。
①レオパルト2A4型までと、②A4以降に生産されたレオパルト2A5以降の車体です。
この2つの系統上の大きな違いは、砲塔の形状です。A4型までは、ほぼ垂直の複合装甲で砲塔が形成されていますが、A5以降のタイプは、横から見た時に『くさび型』の追加装甲が設けられています。
2.レオパルト2の歴史
第二次世界大戦後、ドイツは東西に分離され、東西冷戦の最前線に位置することになりました。
第2次世界大戦後のドイツは、国防軍の再編にあわせて、強力な機甲部隊によって編成された、ソ連地上軍を中核とするワルシャワ条約機構軍との対峙を余儀なくされます。
当時、地上最大にして最強と言われた旧東側諸国の大戦車部隊。
ワルシャワ条約機構軍は、最も多い時で十数万両にも及ぶ主力戦車を装備し、その何倍もの装甲戦闘車両を保有していました。
(NATO軍が保有していた戦車の総数はその半分以下)
常に先進的な最新技術を惜しみ無く大量生産される戦車につぎ込んできたソ連に対して、西側諸国も負けじと開発競争に挑みます。
そんな中、1965年、西ドイツで戦後初の国産戦車「レオパルト」が誕生します。(レオパルト1と言う名称は、レオパルト2が採用された後に区別するために呼称が変更されたもの)
しかしながら、ソ連では次々に新型戦車が登場し、性能的な均衡を保持するためには、120mm級戦車砲を搭載した新型戦車の必要性が認識されるようになります。
ちょうどその頃、ドイツでは米国との次世代新戦車『MBT-70』(ドイツ側の名称はKpz-70)の共同開発計画がスタートしていたため、自国での後継装備開発は断念されます。
鳴り物入りでスタートした新戦車の共同開発計画でしたが、米国とドイツのそれぞれの運用思想の違いや、次世代戦車に要求する意見の相違などもあり、残念ながら計画は1971年に正式に中止されます。
Kpz-70計画の中止をもって、ドイツ国防省は正式に新型戦車の開発指示を出します。
1970年代前半に初期の試作車が完成、各種試験を経て、120mm滑腔砲+新型複合装甲を装備したレオパルト2が、第3世代戦車として産声を上げます。
いくつもの砲塔の試作や車体テストを経て、最終的にレオパルト2の主契約企業はクラウス・マッファイが生産管理を行う主契約企業となり、約1,800両の発注を受け、1979年10月25日、初期生産型が納品されています。
3.構造・機能など
(1)基本スペック
★全長:10.9m
★全幅:3.7m
★全高:3m
★重量59.7t(A5型)
★足回り:トーションバー方式
★速度:72km/h
★行動距離:約500km
★乗員:4名
1980年代後半に、旧東側戦車の性能向上にあわせて、レオパルト2の戦闘力を強化するための改良計画が持ち上がります。
KWS1:火力の強化/主砲を44口径から55口径へ。
KWS2:索敵能力、防護力の強化/砲塔まわりに追加装甲を装着(くさび型のスペースドアーマー)、戦車長用の熱線映像式の視察装置を追加。
KWS3:主砲の140mm化
このうち、140mm戦車砲を搭載した試作車は存在するものの、正式採用には未だ至っていません。
これは個人的な見解ですが…
多くの文献などから読み取るに、現在の120mm級の戦車砲は、その威力が物理的限界に近いとされ、140mm級の戦車砲にしても砲弾1発あたりのサイズが大きくなるだけでメリットが無いなどが理由ではないかと推察されます。
しかしながら、戦車が敵戦車”だけ”と戦うことが前提とされた90年代から2000年初頭と、今は戦場環境が大きく異なっており、戦車に求められる役割が多様化していることを考えると、戦車は『敵戦車だけを撃てば良い』という役割ではなくなってきました。
このことから、将来的に、戦車砲が120mm級以上の大きさのものに代わる可能性は十分にあるものと予想もされます。
(2)火力など
レオパルト2はラインメタル社製120mm滑腔砲を搭載していますが、これは、後に西側諸国の主力戦車がこぞって装備する戦車砲のベストセラーとなります。
レオパルト2A5までは44口径でしたが、A6以降は55口径のものに換装されています。単純に砲身長が伸びただけでなく、薬室も強化されており、砲弾の初速・威力が向上していて、防護力が年々強化されつつある最新の戦車を撃破するために十分な火力を有します。
余談ですが、1.3mほど砲身が長くなったことで、換装直後は砲塔旋回時に砲身が木などに引っ掛かるなど、『とりまわし』に難があるので戦車兵からは『やや不評』とのうわさもあります。
(3)機動力
堅牢で信頼性の高いMTUフリードリヒハーフェン社製V12気筒ツインターボディーゼルエンジンを搭載しています。
第3世代の主力戦車の平均的な重量は、約数十トン前後が平均的でしたが、その重量で時速70kmの機動力を発揮するためには、約1,500馬力級のエンジンが必要でした。
4.その他
主力戦車の代名詞と言っても過言ではない本車は、生産国であるドイツ以外の国でも多数が運用されています。(欧州で13か国、欧州以外の国にも多数輸出)
一説では東西冷戦崩壊に伴いドイツから中古の車体が安価に供給されたから流行ったんだという意見もチラホラ見ますが、本車輛が優秀で完成度の高い戦車だったことは間違いないと思います。
2010年ころから、ドイツとフランスの間で戦車共同開発の話は何度か持ち上がったようですが、現状では2030年頃を目途に車体部をドイツが(レオパルト2ベース)、砲塔部をフランスが(ルクレールベース)、それぞれ担当して、共同で次世代戦車の開発を試みると言う話も存在しているようです。各国が得意とする分野の技術を提供し合うことで、この種の兵器開発は成功する例もあれば、それぞれの意見がうまくかみ合わずに中止になった例もあります。現段階では明確に言えないところもあるのでご了承ください。
5.最後に…
レオパルト2のドイツ語での読みはレオパート・ツヴァイ。
響きがメチャクチャカッコいい!
すみません、
好きな戦車ランキング上位なので、
つい感情がにじみ出ました(笑)
子供の頃、母が誕生日プレゼントに買ってくれたレオパルト1のラジコン。中学生になってもそれでちょいちょい遊んでたのが懐かしいです。思えば、私がドイツ戦車のファンになったキッカケだったのかもしれません。
毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。
最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。