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【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer009【M551/シェリダン空挺戦車】

(全2,222文字)
皆さんおはようございます。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。

この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。

今回は米国製『M551/シェリダン空挺戦車』について書きたいと思います。

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。

【M551/シェリダン空挺戦車】


1.概要

M551/シェリダン空挺戦車は、米陸軍で採用された軽戦車で、文字通り『空挺部隊』で使用されました。

ニックネームの『シェリダン(Sheridan)』は南北戦争の英雄、フィリップ・H・シェリダン将軍に由来しています。(米国では陸戦兵器の愛称に歴代軍人の名前をつける風習があります。)

1950年代、米国で採用されたM41軽戦車と、従来装備の空挺部隊用のM56空挺対戦車自走砲の統合計画がスタート。

そこで提案された基本的な構想は

★水陸両用
★空中投下可能
★主砲発射型ATM(対戦車ミサイル)装備

と言う少々ハードルの高い要求が盛り込まれました。

この計画に合計12社がエントリー。
キャデラック社案が採用されます。

★1962年、試作車完成
★1965年、M551として正式採用
★1970年までに1,600両あまりが生産

2.構造・機能など

(1)構造機能

空挺戦車の要求を満たすため、車体を大幅に軽量化。米陸軍で正式採用された戦車では初のアルミ合金のボディー。エンジンにもアルミ合金が使用され、変速装置にはマグネシウム合金が採用されています。(被弾率の高い砲塔のみ均質圧延鋼板の溶接構造←このあたり米国らしい)

ユニークな点として、ボディー側面が中空式になっており、内部には浮航性を確保するためのウレタンフォームが充填されています。

(2)火力など

本車最大の特徴として、152mmガンランチャーを装備しており、MGM51Aシレイラ対戦車ミサイルと、通常砲弾(HEAT-MP/多目的弾)の両方が発射可能です。(通常弾とミサイル合計30発搭載)

この他、副兵装として、主砲同軸に7.62mm機関銃、車長用キューポラに12.7mm重機関銃を搭載しています。

(3)機動力

エンジンはデトロイト・ディーゼル社製のV6液冷却ターボ・ディーゼルエンジン(300馬力)を搭載。シェリダンの軽量な車体との相性は良く機動性は高いです。

また、水上航行用装備の装着は約5分以内での展開が可能で、波の無い河川や湖、沼であれば通常の浮航機動が可能です。(波は水陸両用車の機能を著しく制約)

そもそも『空挺戦車』として開発されたものですから、パレットに載せて輸送機から空中投下が可能という特徴があります。(乗員は別にパラシュートで降下するので、車体のみ無人状態で空中から放出。)

同時期に旧ソ連でも空挺戦車(厳密には対戦車自走砲)として、ASU-85と言う戦闘車両が存在していましたが、こちらは空中投下不可能。本車は地球上に存在する唯一の『空挺戦車』を名乗れるものでした。

輸送機から空中投下されるシェリダン

3.運用実績など

ベトナム戦争に投入された実績があり、当時の北ベトナム軍は戦車を積極的に運用していないとの分析・評価もあって、対戦車戦闘は考慮されていませんでした。敵に鹵獲された時、シレイラミサイルのデータがソ連側に渡る恐れがあったことから、機密保持のためミサイルは未搭載。つまるところ、ガンランチャーが勿体ない状態でもありました。

戦車と言えば、重い車体と強力なエンジンパワーで樹木をへし折ってガンガン進めるイメージがありますが、空挺戦車と言う軽量なシェリダンにはそれはできませんでした。また、キャタピラの幅が狭く、設置圧の問題から、泥寧地での機動力がかなり落ちたとされます。本来想定していた戦場や使い方とは異なる環境下でかなり苦労したと言えます。

悪い面ばかりでもなく、視程の悪いジャングル内の戦闘で、対人用のM625キャニスター弾の威力が絶大で、たった2発の砲弾で敵歩兵120名あまりに損害を与えて撤退させたと言う戦例もありました。

1989年のパナマ侵攻時、1コ中隊10両のシェリダンがパラシュート投下で運用されています。この際、投下~着地時のショックで足回の破損等、諸々の問題が発生、着地後に使用可能だった車両は約半数だったと言われています。

1991年の湾岸戦争では、デザートシールド作戦で緊急展開部隊としてサウジに急派され、貴重な機甲戦闘力として参加。湾岸戦争への参加を最後に、第82空挺師団からも退役して全車両が予備役となっています。

本車輛の後継装備として開発が進んでいたM8軽戦車の計画が中止になり、米軍(世界)で実戦配備されていた、最初で最後の純粋な『空挺戦車』は姿を消しました。

(ストライカーMGSの後継装備のM10ブッカーは分類上は軽戦車のカテゴリーに属するものの、空挺部隊での使用を前提とはしていないため。)

4.最後に…

予備役に退いたシェリダンの一部は外観を加工し、演習・訓練時の『アグレッサー/仮想敵』役として今も使われています。(カリフォルニア/フォート・アーウィンにある、NTC/ナショナル・トレーニング・センター)

毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

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