定年後の年金生活。生活費を3分の2にして減収に備える。
「そのうち」は自分のためならず 町田貞子さんの言葉が胸に響いて
九州地方に暮らす60代のMさんが『羽仁もと子案家計簿』と出合ったのは30年ほど前。パン教室に通っていたとき、知り合いに全国友の会の家事家計講習会に誘われたことがきっかけでした。
当時、生活研究家として知られる町田貞子さんの講演会にでかけたところ、「片づけの苦手な友人が、そのうちそのうちと言っていましたが、何も片づけないで逝ってしまいましたよ」と話された言葉が自身の家計簿記帳の姿とかさなり、本気で家計簿をつけようと心に決めて以来、記帳をつづけています。
40歳 定年後までのライフプランを立てる
40歳のとき、子どもの大学進学や、夫の定年後は実家の隣に家を建てて住みたいなど希望をいれたライフプランをもとに、65歳までのキャッシュフロー表を作成しました。「教育費や住宅資金、生活準備金も含めた貯金計画が見えたことから、大事にしたい費目にはしっかりとお金が使えるように純生活費を見直し、堅実な生活を送れば、希望通りの暮らしが実現するのだと安心しました」とMさん。
定年後、年金のみで暮らす収支を考える
5年後に夫が60歳で定年退職となる2015年、Mさんは年金のみの生活になることに見通しをもちたいと考えました。40歳でキャッシュフローのプランを考えたときには60歳から年金を受給する予定にしていましたが、2000年の法改正で満額での支給は65歳からになっています。夫は再就職を希望していますが、年金生活に入ると月の収入(可処分所得)は21万円になると試算できました。
2015年のMさん夫婦2人暮らしのひと月あたりの純生活費は33万円なので、21万円はほぼ3分の2の額になります。定年後は、他県で一人暮らしの父(80代)の隣地に住む予定のため、暮らし方も大きくかわります。ひと月21万円で暮らすには? Mさんは縮小する予算を考えました。
暮らしを3分の2にする 各費目の予算
Mさんの純生活費は2015年は月33万円の予算でした。定年後の年金生活を月21万円に縮小するため、各費目ごとに予算を考えます。
食費から順に見ていきましょう。
副食物費:新居の近くに市場があり、魚肉類が安く手に入る。実家や親せきからいただくことも多い。家庭菜園もして7,000円減。
主食費:定年後は、夫婦でその土地のおいしいものを楽しみたいので外食費を増やす。
調味料費:現状維持。
光熱費:新居には太陽光発電を設置し、南向きの間取りを考えているが、年齢を考えて予算は増額。
住居家具費:新居はローンなしの予定。家具は新調しない。電話、水道など必要なもののみ計上。社宅費がなくなることもあり15,500円減。
衣服費:現役時代より少なく。
交際費:兄弟が多くて親戚づきあいが広い。転勤先で出会った方々との交流も続いている。大きくは減らさない。
保健衛生費:消耗品を中心に予算を考えた。いまは夫婦共に健康だが、予想外の医療費は生活準備金で対処したい。
職業費:2015年予算は夫の小遣い月4万円+ボーナス時7万円。定年後は検討の余地あり。
特別費:遠距離介護をしているが、隣に住むことになれば交通費が不要に。
自動車費:軽自動車にして維持費を半額に。
純生活費:費目を合計すると192,000円。年金生活の可処分所得 21万円におさまることがわかった。
まとめ
いかがでしたでしょうか。Mさんは40歳のときから家計簿記帳の習慣ができていたので、ライフプランから作成したキャッシュフロー表を最大限に活用し、教育資金や住宅資金、老後の生活準備金の見通しをもって定年までの20年間を過ごすことができました。今振り返ればその通りではなかった部分もあると話しますが、願い通りに定年前に住宅ローンなしで実家の土地に新居を構えることができ、家計簿が人生の羅針盤となって目標をかなえたともいえるでしょう。
定年後の収入減に対応できそうな目途も立ち、Mさんは「健康が守られれば、老後の備えに関してもさほど不安はありません。人生には想定できない出来事が起きないとも限りませんが、備えをしながらも、心豊かに簡素に過ごしたい」と笑顔で語っていました。
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