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「新卒争奪戦」内定辞退増加中の歩留まりに思う

このnoteは、2023年7月12日にカケハシスカイソリューションズのメールマガジンで配信されたコラムをもとに作成しています。
コラムは、専務取締役の圡井が執筆しました。

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2024年卒の新卒採用戦線は、コロナの影響も収まってきた中、平時を取り戻し争奪戦の様相を呈しスタートしたと言われています。リクルート社による調査では、2024年卒大学生の就職内定率が3月1日時点で30.3%(7月1日時点では65.1%にまで伸長)(※)。昨年の同じ時期を7.7ポイント上回り、一般紙などでは早期から「企業の採用意欲高く、学生優位の売り手市場か」などと幾度となく報道されてきました。
※参考:就職みらい研究所 就職プロセス調査(2024年卒)「2023年7月1日時点 内定状況」

しかし実態はそうではないでしょう。リクルートワークスの4月データを見ると、2023年卒大学生の求人倍率は1.58倍(※)。これだけ見るとやはり売り手市場ですが、従業員が5,000人以上の大手企業では0.37倍しかなく、従業員が300人未満の中小企業は5.31倍でありその差は歴然です。就活生サイドでもこれと同じような二極化が起こっています。常に有利に就活を進め複数の内定(内々定)を取れる、いわゆる「就活強者層」も一定数は確かに存在します。彼ら・彼女らにとっては確かに今の採用市場は売り手市場に映るでしょう。一方で、就職活動がうまくいかず、不安を感じている学生も非常に多いのが実態です。
※参考:リクルートワークス 大卒求人倍率調査(2024年卒)

もちろん、企業から人気なのは前者の就活強者層です。しかし多くの企業(特に中小企業)が彼ら・彼女らに対して内定を出しても、辞退になる可能性は大きいでしょう。需要と供給のバランスで、熾烈な競争は免れないからです。そのような中で一定数の人材を確保しようとするならば、重要なのは後者の比較的就活に対して不安のある学生の採用と言えます。

後者の層に対しては、目線を下げたポテンシャル採用をおこなってみることも大切になってくるかもしれません。アピールできるような輝かしい実績を持っている学生は決して多くないからです。ましてや、学生生活がコロナ禍の真っ只中だったことを考えれば、そうなるのは当然なのです。であれば、歩留まり第一主義で「ガクチカ」などといった既存の指標を重視するのではなく、単に「直向きさや柔軟さがある」「うちの仕事に本当に興味を持っている」「やる気がある」「やさしさを感じる」など、これらだけで十分なのではないでしょうか。採用担当者は視座を広げて、学生の「心根」を見る。心根採用が求められています。

「地頭がいい」「切れがいい」「リーダーシップがある」「周りを巻き込む力を持っている」「器用さが優れている」「機転が利く」「勘が鋭そうだ」など、そのような視点は横に追いやってみてはいかがでしょうか。面接で上手く立ち回れなくてもいい。学生が大事にしている「価値観」や「志向」や、これからの仕事で成長に繋がる「熱意」や「可能性」などを感じ取り、そして入社してから成長させればよいのです。

直近では、以上の話を全部ひっくり返すような「AIでの選考」という採用手法も出てきていますが、これには落とし穴があります。AI選考は既存のデータから能力や性格、活躍する可能性のある社員を推測するものです。言い換えれば、それは「現在活躍している社員」から抽出された活躍基準でしかありません。十年ひと昔どころか、3年であっという間に変化する現代に、今いる社員が本当にベストなのかどうかは未知数です。その時に活躍できる社員のタイプは変わるかもしれませんし、AIが不合格と判断した学生も、実は活躍できる可能性があります。事業環境が変われば活躍できる社員の中身も変わっていくのが必然です。AI最適化だけが全てではありません。人間がおこなう選考の「曖昧さ」があってこそ結果的に偶然的なよい化学反応が起こる場合があると思います。

ここのところ耳にしない日はないChatGPTなどの生成AIたち。新卒採用にもAIの技術を用いて開発されたサービスが出始めています。それどころか新卒社員の配属までAIで決めている企業も存在します。しかし、就職活動の全体がオートマチックに、完璧に、最適化をAIに任せられる世界が来ると私は思いません。いつの日も大事なのはAI(えーあい)でなく、AI(あい・愛)なのです。

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