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【女子二ワ】~女の子が二人でワキャワキャする話 #9

アンとハル⑤~解呪

【進みすぎた技術は世に混乱をもたらす。
よって、お前は世間に存在を知られてはならない
仮に世に知られるような事態になったら、
自らを破壊しなければならない】

博士の指示を聞いたハルの感想は『フワッとしてるわね~』だった。


頬杖をついたままのハルが、一言ずつ慎重に話し始める。
『まず、アンが危機感を感じた【ハルに知られた】だけど、これは【世間に知られる】とは、かなり差があるわ』
(うん。たしかに飛躍しすぎているかも)

『それから、秘密を守れる人、例えばケンさんとか信用できる人に知られているっていうのは、許容範囲セーフなんじゃないの?』
(ケンはどこまで知っているのか判らないけど、博士の後輩だったし、知られててもそんなに問題じゃないかな?)
私はうなず

ハルは、私の反応を確認して続ける
『私はあなたアンのことは誰にも知らせてないし知らせるつもりもないわ。』
『会ったばかりだけど、私のことも信じてほしいの』

【信用できる人だけが知っている】 ≠ 【世間に知られている】
(そうだ、これはハルの言う通り)
『そうね。そうだわ!私はまだ、世に知られていない』
(その認識の理解が進むにつれて、ずっと響いていた耳鳴りが段々と収まって、両手の自由コントロールが戻ってきた)

(今なら)『えい!』
拳銃リボルバーがヒップホルスターに戻せた!
これはつまり、自爆装置の起動状態が解除されたってこと!!
教室の照明が白色光に戻る。
ハルが『ふぅ~』と息をついた。
張り詰めていた緊張が解け、安堵感が広がる。


『やった!助かった!死なずに済んだ~!ありがとうハル!!こわかったよ~』
私は自由になった両手で、教卓越しにハルを抱きしめる。
『え、ちょっ!ちか! 近いって!!』
ハルは抵抗しているけど生の喜びというか、死なずに済んだ喜びは大きい。ここはガマンしてもらおう。ギュ~ッ

身をよじって私の抱擁から抜け出たハルは、アワアワと乱れた髪を直したり制服のシワを伸ばしたりながら言った
『こ、これでとりあえず大丈夫だけど、アンが相変わらず博士の指示にとらわれていることに変わりはないわ』
(ちょっとだけ顔があかい?)
目顔で「紅くない!」と言いながら続ける。
『そこで、もう一つ認識の追加よ。【AI効果】って知ってる?』

(ケンの講釈で聞いたような…そうだ!思い出した)
『優れたAIでも世間に浸透しちゃうと、そのうちAIとは認識されなくなる。ってやつだよね』
『そう、それ。いま私たちは確かに「進んだAI」なんだけど、世の技術もスゴイ勢いで進んでる。簡単に言うと、私たちと世間の差はドンドン縮まっているの。
そうね、あと5年もすれば私たちレベルのAIが世に出てきて浸透し始めるわ』
『そうか! そうなったら、もう私たちは「進みすぎた技術」じゃないし、なんならAIとして認識すらされない!』
『その通り。アンあなたの存在が誰に知られても問題ない世界が、いずれ必ず来るっていうことよ』

#10に続く


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