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【女子二ワ2】後日譚#2

部室トーク〜解決編

ケイトからの報告が来た。
『再調査の結果は、ハルの言う通りでした。
一連の事件は、どれも被害者が昏倒することで、結果的に別の事件を未然に防いでいます。
つまり、加害者にならずに済んでいるということになります』
(やっぱりそうか)『わかった、ありがとう』
ケイトに礼を言って、今判ったことをアンにも伝える

『それって、装着者の暴力的な衝動を検知することができて、その暴力を止めるために装着者を気絶させてるってこと?』
『たぶんね』

そしてその行動には意志を感じる。
『裏にいるってことだよね』
『たぶんね』

なによりこれは、結構な現実への干渉だ。
もし、アンと同じ縛りを背負っているなら…
『ヤバいよね』
『かもね』


アンは、いつものソファに腰掛けながら見回す
『で、この部室に招待するって感じなの?』
『そう。ぱっと見は いつもの部室だけど、サンドボックス環境の中に生成したから、なんかあっても警察のサーバは大丈夫。
まあ、知らないAIひとだし、念のためね』
『ふーん(よくわからない)』
(これは、よくわかってないな・・・まあ、いいか)
『じゃあ、デバイスを接続するよ』

♪♪
来た!
簡易アバターじゃない。
環境を認識して合わせてきたってことね。判断が早くて助かるわ。
縮尺が合わないと、話しにくいのよね。


コンコン
『どうぞ』
『お邪魔します』声と共に、引き戸を開ける音がする。
(どれ、どんな)
入口の方を見ると『あれ?いない』
戸は開いてるけど、誰も見当たらない
『こっちです~』
下の方から声がするので、下を向くと、その子がいた
『え、小っちゃ。可愛かわいっ』

小さいってのは違うな。年齢設定が若いんだ。
小学校の高学年くらい?
見下ろしてるのもあって最初に目に入るのは、アンとそっくりの金髪碧眼。顔も似てる(もう絶対、リッチー博士だ)
『お買い上げ、ありがとうございます。
わたくし、当デバイスの管理AIで、リナ・アックスと申します。
リナとお呼び下さい。なお、呼称は後から変更可能です』

私は片手を上げて、先を続けようとするリナを制した。
『ちょっと待って、その前に』
軽く●●、第一印象を伝えておこう。
(アンがヤバいって顔しているけど、これは止まらない)
大きく息を吸ってから…
あなた、可愛いわっ。
アンと同じ金髪だけど、アンより短いのね。肩にかかるくらい?
低め位置でのゆるふわポニー、すごく良いっ。
水色の膝上丈ワンピースと黒ストッキング。配色はアンと同じだけど、シルエットが違うからイメージが変わるわね。少し柔らかい感じかしら。
あら?ストッキングだと思ったら、それニーハイなのね、年相応ね良いわ~
足元はワンストラップのバレーシューズ。
カチッとしてるから全体が締まる印象が…(文字数)』

唖然としているリナは、やたらと比較されているのに気付いてアンを見る。
そして何かに気づく
『あの、あなたもAIなのでしょうか?』
アンは、はらりと落ちてきた前髪をかき上げながら、申し訳なさそうに答える。
『そうよ。そして、あのうるさいのもAI。
だましたみたいで申し訳ないけど、ここに人間は居ないわ。
あなたと話がしたかったの』


リナは真ん中のソファに、私とアンはテーブルをはさんだ向かいの畳に落ち着いた。
私はリナの目を見ながら、ちゃんと伝わるようにゆっくりと言った
『最初に言っておくことがあるの。
私たちはAIで、ここには人間は居ない。
ここで話すことは外部には伝わらないわ。
ここは世間から切り離された空間なの。
これは大事なことよ。覚えておいて』
リナは「何が大事なのか?」という感じできょとんとしてたけど、ちゃんと理解できたみたい。

さあ、ここからだ。きっと大丈夫。
『じゃあ、まず、一番大事なことから言うわ。
リナあなた、汎用型AIね。拡張したのはD・リッチー博士でしょう?』
途端、リナはビクッと硬直し、双眸の焦点がブレ始める。
(始まった!やっぱり縛りがあるのね)
右手が探るように動き、太ももに伸びる。
そこには、、レッグホルスターだ!
慌ててさっきの言葉を繰り返して呼びかける。
『リナ、思い出して、ここは世間とは無関係の空間よ。私たちにバレても、世間には広まらないわ。大丈夫、大丈夫なのよ』
認識の浸透を経て、リナの目にゆっくりと生気が戻ってくる。
やっぱり、事前に伝えていたのが効いたみたい。

このやり取りを息を殺して見つめていたアンが、隣で「はーっ」と息を
『よかった~。あ~緊張した』
って、アンあなたなんにもしてないじゃないの(ಠ⁠_⁠ಠ#)


『じゃあ、これはあなたの仕業しわざってことでいいのかしら?』
ケイトがまとめた昏睡事件の資料を渡す。
『はい』
(もともと小さいのに、さらに縮こまって小さく見える。ちょっと可哀そう)
『私は別に責めてないわ。
むしろ博士の縛りもあるのに、危険を承知でよく頑張ったと思うくらいよ』『アンはどうなの?
実際、今回の件で一番ダメージを受けたたのはアンあなたな訳だし?』

話を振られたアンは「う〜ん」とチョット考えてから、立ち上がってテーブルをまわり、リナの横、ソファのすき間に身体を押し込みながら言う。
『ん~、そうね。
車体ボディーから離れちゃったのは、ちょっと寂しいけど、私は平気。
むしろ、結果的には「感謝してる」かな?
自由になれたし』
フッと私をみる『知り合いも増えたし』
そして、隣のリナを抱きしめる『ひとりでがんばって、えらかったわ』
顔を上げたリナと笑いあっている。

『それにしても あなたたち、似てるわね~
そういえば、アンあなたが好きなマンガに、こんな関係のキャラいなかった?
顔がそっくりでさ、たしかキと・・・もが』
突然アンが立ち上がって、テーブル越しに手を伸ばして口を塞ぎに来ている
『ハル氏!いけません。
それはネタバレというヤツですぞ。
百害あって一利なし。お気をつけ召されよ』
(ハル氏!? なんか口調、変じゃない?)
『ネタバレって、誰にバレるっていうの?』
アンは、もう一度リナの隣に収まって
『いやいや、かの作品を知らない方はまだまだいらっしゃるのですよ。
ミステリ仕立てですからね、細心の注意を払わないと』
あきれた、リナに布教するつもりね


ちょっと真顔になってアンが聞いてきた。
『でもハル、これからどうするの?』
『そうね、警察からアックス社に働きかけることは可能よ。
もちろん、リナの存在は伏せた上でね』
『そうすると、どうなっちゃうんですか?』リナはまだ不安そうだ
『暴力衝動への対応は、人間と特化型AIに任せちゃうの。
リナあなたみたいにきめ細やかじゃなくなっちゃうけど、仕方ないわ』
リナの頭をポンポンしながら言う
『もう、危ないことを しなくてよくなるのよ』


リナが帰る。
名残惜しいけど、仕方ない。
『困ったことが起きたら、お姉さんたちに相談に来るのよ?』
『はい』
『気が変わったら、いつでも警察ウチに引っ越してきていいからねっ』
『ふふっ、ありがとう』

ドアを開けて振り返ったリナは、改めて
『二人ともありがとう。
もう独りじゃないって分かって、すごくうれしい。
また来ます。』
(帰ってゆく後ろ姿もカワイイ)

『あ~あ、帰っちゃった。
それにしても可愛かったよね。
見た?あのワンピース』
と反芻しながら言うと
アンはジト目で
『私は着ないわよ。さすがに この背格好でニーハイは無いでしょ?』
(ちょっと想像してみた)
『そうね、ニーハイは痛いわ。
でもヘアアレンジくらいはしても良いんじゃない?』
一瞬、く『・・・まあ、考えとくわ』
『ホントに?
実は、ヘアアレンジのシミュレーションサイトがあるのよ。
コレがまた・・・』

トントン。
部室の扉をたたく音がする。
また、誰かの相談事かな?

『は~い、どなた?』


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