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利確しなくても課税!しかも重い ~仮想通貨の課税~

仮想通貨を代表とする暗号資産の納税漏れによる追徴のニュースが増えてきました。20日のニュースでは追徴が2億を超えたケースが報じられました。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220219-OYT1T50366/

記事中でも書かれていますが、異なる仮想通貨の交換でも(現金化してなくても)差額が課税対象になります。

はじめに

本稿では、個人が副収入として仮想通貨を扱ったときの大まかな課税金額の計算をシンプルな例を使って整理します。

あくまで個人の副収入という前提で話を進めますので、事業としてやったときの法人税のかかわりとか、給与に仮想通貨をMixしたときとか、譲渡・相続とかの複雑なケースは本稿末尾に張った国税庁のリンクなどで調査してください。

最終的にいくらが課税対象の所得金額になるのかは「何をどれだけ経費にできるのか」「その人の事業形態はどうか」などで変わりますので自身で調査するか税理士に依頼するなどしましょう。

本稿はあくまで詳しく調べる前に大まかな枠を把握する用途を想定しております。

仮想通貨の課税の大きな特徴

仮想通貨の課税における大きな特徴

  1. 雑所得として計上される(雑所得に該当する所得の合計が年20万を超えると課税)

  2. 税率は所得税と同じ累進課税(住民税込みでMAX 55%)

  3. 仮想通貨の取得時と利用時の両方で所得として計上される

  4. ある年の損失と次の年の利益とを税務上相殺するようなこと(損益通算)ができない

1.雑所得として計上される

雑所得とは簡単に言えば給与所得以外の収入です。副業や株・FX、仮想通貨(暗号資産)や原稿料などが該当します。

これらについては年20万以上の売り上げがあると確定申告の必要があります。経費を抜いた最終利益が20万を切っていても売り上げが20万を超えていれば、経費によって20万を切っている(ゆえに納税の必要なし)ということを確定申告で申告しなければなりません

また、株で19万、仮想通貨で19万でそれぞれ20万以下だからOK、とはならず、株、仮想通貨合わせて38万なので確定申告が必要、となります。雑所得の20万のラインは雑所得に該当する所得の合計で判断します。

2.税率は所得税と同じ累進課税

仮想通貨に対する課税は総合課税といって、給与所得などほかの所得と合算して課税金額を算出し課税されることになっています。

したがって、給与所得などの所得との合計によって下記のテーブルのような所得金額と所得税の関係になります。

所得税の最高税率は45%ですが、これと住民税を合わせて最高税率55%と表現されることが多いです。

引用:国税庁「No.2260 所得税の税率」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
(最終アクセス:2022-02-20)

補足:株・FX
    仮想通貨と同じく雑所得に分類される株・FXはこれとは別枠で一律20%で課税されます。
    株・FXと仮想通貨は現状、利益の上げ方がほぼ同じ(安く買って高く売る)なので勘違いしそうになりますが、課税のされ方が大きく異なります。気をつけましょう。

3.仮想通貨の取得時と利用時の両方で所得として計上される

仮想通貨(暗闘資産)はそれを購入、交換するなどして手元に得たときと仮想通貨を使ってほかの仮想通貨を得たり、現金化したときなど利用したときの両方で所得として計上されます。

本稿では個人が副収入として仮想通貨を扱うときの代表的なシーンとして

  • 仮想通貨の売買

  • 仮想通貨での物品の購入

  • 仮想通貨のマイニング

の3つのシーンを例にしてどのように所得として計上されるかの大まかな部分を整理します。

4.ある年の損失と次の年の利益とを税務上相殺するようなこと(損益通算)ができない

株・FXでは一定期間の損失と利益を相殺して課税所得を算出するようなことができます。ある年で100万負けて翌年110万買ったとき、110万のうち100万を課税所得から控除するというようなイメージです。

仮想通貨ではこういう損失と利益の相殺はできません。利益が出たらその分ただただ課税されます。

金額の計算式:原則

さて、ここから代表的な仮想通貨の利用シーンごとに所得の計算を例示していきますが、その前に基本的な計算式を提示します。

基本的な計算式
1.取得時の所得金額
(取得時の仮想通貨の時価)ー(取得に要した実費)

2.利用時の所得金額
(利用時の仮想通貨の時価)ー(取得時の仮想通貨の時価)

この計算式の各項の詳しい計算式は国税庁の資料(本稿末尾にリンク)に乗っていますが、この資料を読むと「価値の形を変えて元手以上の利益だしたら絶対に課税してやるからな」という強い意志を感じられます。

最終的な課税金額の計算にはこれのほかに必要経費(電気代などの按分や取引手数料など)も考慮する必要があります。

しかし、基本的な考え方をとらえるのに細かい処理は不要ですので、本稿では経費については考慮しません。

また、「取得時の仮想通貨の時価」の計算は国税庁の指定する方法である種の平均値を算出して計算するのですが、本稿で取り上げる例では単純化してます。

補足:取得時の仮想通貨の時価のより正確な算出式
二通りの計算方法が指定されている。
1.総平均法(年末時点での1単位当たりの平均取得価格)
A / B
A: 1年間に取得した同一種類の暗号資産の取得価格の総額
B: 1年間に取得した同一種類の暗号資産の総量

2.移動平均法(利用時点での1単位当たりの平均取得価格)
A / B
A: 利用時点で保有する同一種類の暗号資産の取得価格の総額
B: 利用時点で保有する同一種類の暗号資産の総量

仮想通貨の売買で利益を上げた場合

ほとんどの方がこれでしょう。また、仮想通貨のが高騰したタイミングで通貨の形を

Case 1: Bitcoinを現金で購入する場合

1 BTC = 100万 の時に1BTC買ったとします。この時、

1BTC(100万円)ー 100万円 = 0

となり、現金で購入するだけでは特に課税されないとわかります。

Case 2: 所持しているBTCでETHを購入する場合

1 BTC = 100万 の時に1BTC買ったとします。後日、0.1 BTCで 10ETH 交換できたとしましょう。この交換時のETHのレートは 1ETH = 10万円 とします。

(利用時の仮想通貨の時価)= 10ETH = 100万円 (1ETH = 10万円)
(取得時の仮想通貨の時価) = 0.1BTC = 10万円(1BTC = 100万円)
よって、 100万 - 10万 = 90万
となり、90万円が課税対象となります。

Case 3: 所持しているBTCを売却した場合

1 BTC = 100万 の時に1BTC購入し、1BTC = 200万 のときに1BTC売却した。

(利用時の仮想通貨の時価)= 1BTC = 200万円 (1BTC = 200万円)
(取得時の仮想通貨の時価) = 1BTC = 100万円(1BTC = 100万円)
よって、 200万 - 100万 = 100万
となり、100万円が課税対象となります。

仮想通貨で物品を購入したとき

Case 4: 所持しているBTCでPCを買ったとき

1 BTC = 100万 の時に1BTC購入し、1 BTC = 200万 の時に 20万円のPCを0.1BTCで購入した

(利用時の仮想通貨の時価)= 0.1 BTC = 20万円 (1 BTC = 200万円)
(取得時の仮想通貨の時価) = 0.1BTC = 10万円(1BTC = 100万円)
よって、 20万 - 10万 = 10万
となり、10万円が課税対象となります。

仮想通貨からPCに形は変わったけど10万円分利益出てるよね、ということなのでしょう。

仮想通貨をマイニングしたとき

Case 5: BTCをマイニングした

1日で 0.001 BTCをマイニングした。この日、1 BTC = 100万 のレートだった。

(取得時の仮想通貨の時価)=0.001 BTC = 0.1万円 (1 BTC = 100万)
(取得に要した実費) = 0
よって、 1000円が雑所得として計上されます。(マイニングの電気代、PCの按分は経費として別途計算)

マイニングでは計算の報酬を得た時点でのレートで取得価格を細かく計算していくことになります。上の計算を一日に何度も行うのをマイニングしている間ずっとする感じでしょうか。マイニングソフトとかだとレート付きで報酬履歴を吐き出してくれたりします。

仮想通貨の課税まとめ

  • 雑所得なので年20万以上で確定申告が必要

  • 損益通算はできない

  • 株・FXと違い総合課税で累進課税

  • 利確(現金化)でなくても形を変える(物買ったり別の通貨にしたり)だけでも差額が課税される

仮想通貨は値動きがあり得ないほど大きく、いわゆる億り人と呼ばれる億の含み益を得る人も多いようです。ただし、上記のように現金化しなくても別の仮想通貨に交換しただけで購入時のレートとの差額分が課税されます。

冒頭の記事のように納税用の現金を用意せずに別の資産形態にしたために税金を支払えないという状況は容易に考えられます。

最近はNFTを売ってETHを受け取ることもよく見られます。NFTの税務上の立ち位置は未だ判然としていませんが、ETHは明確に暗号資産です。

自分の資産を守る意味でもどのように自分が課税されるのかはしっかり把握しましょう。経済的に余裕があれば税理士に相談するのがいいでしょう。

国税庁資料のリンク
暗号資産の課税に関する資料
暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和3年12月)

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