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契約とはなにか

本稿では、契約書がなぜ必要なのか、契約とはそもそも何なのかということを整理します。

契約とはなにか

契約とは約束の一種です。契約は、それが実行されないときには法的手段によって強制される義務を生み出すような約束を言います。例えば、子供が父親に休日に遊園地に連れて行ってと約束を取り付けるなどの場合では法執行を求めることはないでしょう。

次に契約の民法上の扱いを見ていきましょう。具体には、「どのような場合に成立するか」「どのような内容が許されるか」です。

契約の成立

まず、どのような場合に契約が成立するのかを整理しましょう。

契約の成立は民法第五二二条第一項に規定されています。

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

民法第五二二条第一項

契約成立は上記のように「意思」が重要であるので特定の文言の有無で成立を判断するのではなく、個別の案件ごとにその内容を成立させる目的を持った意思表示の合致があるかがみられます。

また、この意思表示と承諾は正式な書面である必要がなく、口頭でもチャットでも可能です。逆に、正式な書面でも意思表示がないとみなされれば不成立と判断されます。

契約はどの程度まで自由に設定できるか

次に、民法上許されている契約内容の自由度について整理しましょう。まず、民法では以下のような自由が認められています。

  1. 契約を締結するかどうかを決める自由

  2. 誰と契約をするか決める自由

  3. 契約の内容を自由に決める自由

  4. 書面、口頭など、契約をどのように交わすのかを決める事由

1~4はいずれも法令に特別の求めがない場合、という限定が入ります。例えば1,2については放送法で受信機(TVなど)を持つ人は必ずNHKと契約をかわさなければなりません。また、3について例を上げると、著作権(財産権)は譲渡できるが、著作者人格権は譲渡不可能なため契約書に「著作者人格権を発注者に譲渡する」というような内容があっても無効になります。

このような例外については、例に出した放送法や人格権はわかりやすい部類ですが、法令上に明確に「契約の自由で変えられない」というような内容が書かれているわけではなく個別に判断する必要があり、個人で判断するにはかなり面倒です。

ただ、自分の財産を処分(売買・譲渡など)することに関してはかなり広く自由が認められているので頻繁に問題になることはないでしょう。

契約書はなぜ必要か

上のリストの4にあるように、契約の形式は書面に限定されません。しかし、現実には基本的には契約書の類(同意書などと名前が変わっていることもあります)は必ずといっていいほど用意されますね。これはなぜでしょう。

代表的な理由は次の2点です。

  • 問題が起こったときに証拠として認められる形式で残しておく必要がある

  • 口約束は契約ではなく、署名まで行った段階で承諾の意思となる、という意識が一般的になっており、口約束では意思表示とは認められにくい商習慣が出来上がっている

もちろん、契約書があったからといってそれが絶対ということにはならないですし、だますような書き方をしていたり事前説明と異なっていることを示せたりすれば承諾の意思表示を否定できたりもします。ただ、形のある証拠として機能するため、契約書という形式は重要です。

契約書がない場合に問題が起こったとき

契約書がないと言った、言わないの水掛け論になります。口頭でのやり取りを録音したものがあったり、チャットやメールが残っていれば良いのですが、たいていそういうのもないでしょうから、非常に面倒なことになります。泣き寝入りになることも多いでしょう。

押印されたり電子署名がされた契約書がベストですが、録音、メール履歴でもおそらくある程度の証拠能力はあるでしょう。チャット(LINEやDMなど)は場合によるでしょうか。不倫に関する民事裁判とかではLINEが証拠として使われてるそうです。

余談ですが、国によってはメールやチャットのスクショなど加工が容易なものは証拠と認められない(加工してないことを証明しないといけない)そうです。中国はNFTを発行したスクショは認めているというような話を聞いたことがあります。

話を戻します。裁判にするにしろ、せずに交渉するにしろ、同意した内容について水掛け論にならないようにはっきりと形にしておくことが重要です。形にするなら、結局の所、裁判まで行ったときに証拠として強い形にするのがベストですから、オフラインなら署名・押印(意思表示)、割り印(契約書のバージョンが同じという証拠)されたものが、オンラインなら電子署名がされた電子契約書で契約を交わすのが良いです。

自分との取引実績が十分あるなどで信頼関係のある相手ならチャットやメールで話を勧めてスピーディにやってしまうのもありでしょうが、基本的には「後々に互いの思い違いなどが原因で問題が起きるとあれなので文書でご依頼ください」などといって書面で内容を詰めるのが安心感があるでしょう。

まとめ

  • 契約とは

    • 約束で未履行の場合には法による強制執行がなされるようなもの

  • 契約の内容の自由さ

    • するかしないかは自由

    • 誰とするかも自由

    • 内容も自由

    • 形式も自由

  • 形式は自由なのになぜ契約書は必要か

    • 同意した内容の証拠として強力だから





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