路上喫煙するとオートマトンに射殺されます。短編小説『喫煙所が全国で一箇所だけになった結果』
※有料記事ですが最後まで読めます。
日本国内の喫煙所が一箇所だけになった。
路上で歩き煙草などしようものなら、煙をかぎつけたオートマトンがやってきて、腕に内臓された機関銃で蜂の巣にされる。
それは事実上の喫煙者への死の宣告とも受け取れる事態で、嫌煙家にしてみれば「これでようやく平和が訪れる」とホッと胸を撫で下ろしていたことだろう。
だが甘かった。
全国唯一の喫煙所がある都内某所の喫煙所には、全国から愛煙家が殺到していた。
穴の無いところてん突きのように人が入り奥にいる人間から押し込められていく。
これはとあるワイドショーのインタビューでのやり取りだ。
「どこから来ましたか?」
「愛媛県です」
「愛媛っ!? なぜそんな遠いところからわざわざ……」
「だって、ここ以外で吸えないじゃないですか」
何を当たり前のことを訊いてきやがる、といわんばかりに喫煙者が顔をしかめていたのが印象的だった。
こんなインタビューもあった。
「どこから来ましたか?」
「北海道です」
「ほっ……」
インタビューアーが絶句してしまった。
無理もないかもしれないが、それだけ喫煙者たちの煙草の飢えは深刻だったということである。
*
「マジかよ……」
俺は仕事終わりに煙草を吸いに「全国唯一の喫煙所」に行ってみたんだけど、人身事故でダイヤが乱れた通勤電車みたいな光景が広がっていた。
人。
人人。
人人人。
人だらけ。
後から後からやってくる喫煙者で、もはやおしくら饅頭状態だった。
そして当たり前だが誰もが煙草を吸っているため、紫煙が充満している。
某国の大気汚染ばりに視界が悪い。
俺も煙草吸いたさに汚染区域へ突入する。
ぐぬぬぬぅぅ!!
あまりの混みように腕を動かすことすらままならない。
おい、どうやって火ぃつけんだよ……。
これじゃあこの建物壊れるんじゃねえの。
全国唯一を謳っているわりに作りは雑な掘っ立て小屋程度の代物だ。もういっそ潰れちまえよ……。
俺がそう思ったときだった。
潰れた。
何が?
喫煙所が、だ。
人が押し込まれ続け壁面が音をあげ、軋み、歪み、そしてついに、
決壊。
喫煙所が崩れた。
壁が砕けて屋根が崩落。
人々は将棋倒しに。
阿鼻叫喚と高濃度の紫煙が最悪のカクテルを作り上げる。
充満していた煙草の煙が解放される。
凄まじい紫煙が周囲に蔓延、それは瞬く間に東京を覆い、日本を覆った。
煙をかぎつけたオートマトンが機関銃を乱射する騒ぎにまで発展。
人々は煙草の煙とオートマトンに恐怖した。
以後しばらく、この国は煙草の煙で満たされ、人々はガスマスクと防弾チョッキを装備して出歩かなくてはならなくなった。
この大惨事の後、喫煙所は全国各地、各所、膨大な数設けられたのだった。
※あとがき
『煙草とところてん』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
即興小説でお題として出されなければ絶対書かないであろう内容w
これぞ即興小説の醍醐味ですな。うん。
お題がブッ飛んでるんだからこっちだって負けじとブッ飛びますよん。
ところてんがかなり強引だったけれど。
穴のないところてん突きをもし見つけたら教えてくださいw
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