閃きが欲しくて…。短編小説『白い空に助けを求めた結果』
※有料記事ですが最後まで読めます。
青空は嫌いだ。
あの無遠慮な態度がいけ好かない。
僕を干し肉にでもするつもりか。曇れ。
白い空スバラシイ。
あの控え目かつ癒してあげるといわんばかりのカラーは白しかあるまい。
*
首より下は灼熱だけれど、頭部さえ涼しければ頭も冴える。
僕の脳細胞は今まさに活性化され、回転速度の限界を超える。
閃け、閃け。
次の展開へ。
導いて……くれ!
「さて、どうしたものか」
「まーたそんな阿呆なことやってる!」
「うおあっ!?」
冷蔵庫から引っ張り出される僕。
「なんでアンタは冷蔵庫の中に頭突っ込むのよ! 中のもん全部ダメになっちゃうでしょうがっ!」
カーチャンが腕組んでご立腹である。
いや無理もないけど。
「いや待てよカーチャン。僕は今頭を冷やさなきゃいけないんだよ。でないと……」
「でないと?」
「新人賞の締め切りに間に合わない」
僕は小説家志望の高校生だ。
夏休みという社会人にはないアドバンテージを活かし
「っしゃ執筆しまくるぜ!」
と意気込んでいた。
締め切りは近いが勝利(原稿が間に合うという意味で)を核心していた。
が、
僕の部屋のエアコンがまさかの労働拒否(訳:壊れた)。
おいコラエアコン働けよおおおぉぉぉ!!
……というワケで、僕は暑い中せっせと執筆する羽目になった。
トーチャンのお下がりの古いデスクPCなもんだから、持ち運んで図書館で執筆したり某喫茶店で意識高い系気取って「カタカタカタ、ターンッ!」なんてことも出来やしない。
意識はともかく室温はやたらと高い部屋の中で、汗をダラダラとかきながら小説を書いていたけどもう限界。
外に出ようにも忌々しい青空と太陽が僕を干し肉化せんばかりに焦がしてくる。
かくなる上はと冷蔵庫の中に頭を突っ込み、白い空(冷蔵庫の内壁)を眺めながら、執筆中の作品の次の展開に思考を巡らせていたというワケだ。
なお、次の展開が閃いたらデスクPCのある暑苦しい部屋に戻らなければいけない……。
「というワケでカーチャン、締め切りのためにも冷蔵庫の解放を……」
「間に合わなくて結構!」
カーチャンが無慈悲に冷蔵庫の扉を閉めた。
「せめて壊れたエアコン直してくれよおおぉぉっ!」
「だーかーらー、電気屋さんに電話しといたからそのうち修理しに来てくれるわよ」
「二週間後だろぉ!? 締め切りは来週なんだよ!」
*
青空は嫌いだ。
白い空はスバラシイ。
冷蔵庫の中の寒空が、僕に閃きを与えてくれるのだ(と信じている)。
※あとがき
『楽しい寒空』というお題を元に書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
子供が雪合戦してる様子とか楽しそうで書きたいんですけど、どうやって物語化すりゃいいのか閃かず、自分の身に起こったら最悪だろうなぁという話を書きましたw
書いてて楽しかったです。
実際に起こってほしくはないけど。
でも締め切りに追われるのってなんだかんだで楽しいですよ。
僕は制限時間があると燃えるタイプなんで。
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