八人のお兄ちゃんがわたしの邪魔をするんだけど!短編小説『八人の使えないボディガード』
※有料記事ですが最後まで読めます。
わたしにはボディガードが八人いる。
もとい、八人のお兄ちゃんがいる。
ボディガードのようなものだけど……。
*
「趣味は?」
「家族構成を述べよ」
「交際に至った経緯について聞かせてくれ」
「つかさー、コイツのどこがよかったん?」
「料理できると助かるねぇ。うちの妹、てんで料理ダメでさ」
「高校二年とのことだが、進路はどう考えている。早いうちに決めとけ。進学か、それとも就職か」
「履歴書は持ってきてないのかい?」
「俺に腕相撲で買ったら妹との交際を認めてやるぜ!」
兄8人による質問責め……。
わたしが彼氏を連れてきたら、案の定こんな具合になってしまった。
ていうか履歴書て…。
就職の面接じゃないっつーの。
そして彼氏はというと、
「あ、ええっと……」
表情をひきつらせていた。
……終わった。
わたしは内心ですべてを諦めていた。
今日はお兄ちゃんたちがいないっていうから彼氏を家に連れてきたっていうのに、まさか罠だったなんて……。
1番目~5番目の兄に至っては有給まで使ったというからもう呆れるしかない。
わたしはきっと振られるのだろう。
これが初めてじゃない。
前の彼氏の時もお兄ちゃんたちの質問責めによって『ゴメン……』と言われわたしは振られた。
わたしを守ってくれている、というのは理解できるけど、いくらなんでも過保護だし、わたしからしてみたら交際を妨害しているようにしか思えない。
あーあぁ……。
今回もきっとダメだろうなぁ……。
ドンドンドン!
と、玄関のドアがけたたましく叩かれた音で、尋問もとい兄たちと彼氏の謎の面接は中断された。
誰だよっ、と不機嫌そうに6番目の兄が玄関のほうへ向かっていく。
すると、
「どきなさいよ!」
「え、あの……」
怒気をはらんだ知らない女の人の声。
それに戸惑った兄の声が聞こえたかと思うと、わたしたちがいるリビングに声の主だと思われる女の人が突入してきた。
若い女性だった。
大学生ぐらいかな。
「やっぱりこんなことになってた~!」
ズビシッと兄達に指を差す女性。
「姉ちゃん!? なんでここにいんだよ!」
「え」
姉ちゃん?
わたしが混乱していると、その女の人はお兄ちゃんたちをキッとにらみつける。
「アンタたちね、兄8人で彼氏囲んでボコボコにしてるってのは! 噂になってんのよっ!」
マジですか……。
その噂、できれば詳しくお聞かせ願いたいのですが……。
その女性の凄まじいの剣幕に、お兄ちゃんたちは沈黙。
さっきまでの強気の姿勢は欠片もなかった。
彼氏はというと「ね、姉ちゃん……」と戸惑ったまま、姉に腕を引かれ連れて行かれた。
あ、あのー。
噂の詳細を……。
*
わたしには八人のお兄ちゃんがいる。
ボディガードとしては役に立たないけど。
え、彼氏とどうなったかって?
そんなこと聞かないでよ!
その後の人生で、わたしが強い男を求めたのは当然の帰結だね。
あと、小姑対策として姉と妹がいる彼は却下ですはい。
※あとがき
『めっちゃ兄』というお題を元にして書いた即興小説を、加筆修正した作品です。
どんな兄だよ……。お題が提示されたときは呆然としましたね(苦笑)
即興小説で出されるお題は本当に奇怪ですなぁ。
とりあえずめっちゃたくさん兄を登場させましたw
僕は妹がひとりしかいないから分かりませんけど、男兄弟がたくさんいると、ゲームの取り合いになりそうですなぁ。
想像しただけでげんなり。
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