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仮面が必要なんだ

他人の視線に怯えているのは、他人の視線を勝手に推察する自分自身の肥大化した自意識に恐れているだけに過ぎないというケースは多い。
で、まあその、僕も例に漏れず、だろう。


ついこの間、「シン・仮面ライダー」がアマプラの見放題のやつに来ていた。(この記事、少しネタバレあるかも)
元から普通に好きな作品だったので、配信が開始されたその日に観た。

もう、おもれ〜のなんの。
おもれ〜

おもれ〜なあとかずっと思いながら観ていたのだが、どこかのシーンで、主人公である仮面ライダー・本郷猛が「僕は他人がわからない、だからわかるように自分を変えたい」みたいなことを言っていて、その台詞がなんかずっと、僕の奥にへんなのを残して、そうしてこの映画体験は終わった。


初めて観た時もこの台詞は心に残っていて、おもれ〜仮面ライダーの映画を観ていたら、突然説教され始めたかのような、というか自分の欠点を的確に指摘されたかのような、自分がバラされたかのような、バラされ過ぎて、一周回って爽快感に近い何かを感じたことを覚えている。


本作における本郷猛は所謂コミュ障であることが明言されており、実際、他人とわかりやすく打ち解けるシーンは少ない。

僕はコミュ障とまでは言わないが他者はめちゃくちゃ苦手で、僕が把握し得ない予想外のシナプスを今この瞬間もどこかで働かせ続けている何者かが地球上に何十億もいると考えると、怖すぎる。
僕が見てないところで動き、完全停止してればいいのにとか思う。

人間の不条理に身内を奪われた経験こそ無かれど、他者は分からなさすぎて怖いし、普通にハビタット世界に行ってくれるなら、もう行ってほしい。


だからこその本郷のあの台詞は、効いた。

エッジーだ、あまりにもエッジー。
そう、あの〜結局、僕一人が変わればいいというだけの話ではあるのだ。

実際、そうだ「他者への恐怖」と僕が呼んでいるそれは、僕自身の自意識が他者に関する不明な部分を勝手に誇張して怖がっているだけに過ぎず、こちら側から寄り添ってみれば意外と大丈夫なのかもしれないと思う節はある。
そして同時に、その小さな「寄り添い」が億劫でいままで他者を避けていた自分の姿に気づいていないわけではなかった。

その自分の精神に於けるクソザコ部分を、ひとことで、端的に、しかもなんか戦ってる最中に、しかも今の今まで同族だと思っていた本郷猛によって、ほんと急に指摘されて、ビビった。
本郷のあの言葉だけが、第四の壁を越えて、当たり前のように僕の心に突き刺さった。へんなのを残した。怖かった。




中学三年生の頃、同じく仮面ライダーが好きだった友人と二人で、休み時間とかに、「廊下から教室に入ってきて、仮面ライダーの変身ポーズをやったあと、それを逆再生したかのような動きをやって、後ろ歩きで教室を出る儀式」をはじめとする数々の意図のわからないアクティビティに勤しんでいた時期がある。

恥晒しだ。

同じクラスに好きな子とかいたのに、目先の楽しさのために、僕は恥を晒す行為を選択し続けた。
僕の人格が今も抱える他者への恐怖は、この時すでに円熟していた筈なのだが、僕は恥を晒す行為を、選択し続けた。

あの時の僕は、もう仮面ライダーだった気がする。

他者への恐怖、恥、悪目立ち、全部に負けて涙を流す心を、奇行の仮面で隠し、「楽しいので大丈夫ですよ」という顔をし続けていた。

もう、孤独に戦う戦士だ。


仮面は、顔を隠す。
僕は仮面の後ろにずっと、恥に塗れた心を隠し続けている気がする。
前もどっかでなんか言った気はするが、僕は今でも、別にふざけなくていいシーンでついふざけてしまう癖があって、そうやって奇人のペルソナの裏に他者への恐怖心を隠すことがやめられない。

僕は普通の人間なので、出来れば誰の目にも留まらないように生きていたい。だが、丸腰で生きるのは、あまりにも怖すぎた。
変身が必要なんだ、仮面が、恐怖のあまり流れてしまう涙を隠すための仮面が!



なのに!!

それなのに!!


本郷!!

本郷お前ってやつは!!

なんであんなこと言うんだ!!

俺が俺自身を変えて、俺が他人の心に寄り添えるようになって、必要以上に恐怖しなくなって、

それで、


いやそれで何がどうなるというんだ!!


人間は理不尽で不可解で怖いの!!

俺が「これいいな」と思ったものは誰かが「大嫌いだ」と思ったものであり、

それだけならまだしも、

俺自身のことを大嫌いな人だって絶対に多い!!


そういうものなんだ本郷!



というかみんなもそうだからな!

俺だけじゃねえ

みんな他人とは違うので、本当は恐怖して然るべきなんだ!!


そんな中でなんで他人と仲良くできる!

議論できる!

中傷できる!

愛し合える!

意味わかんない!!!


変われないよ〜!!


本郷〜!

俺は変われない!!


この仮面を脱げない!!

「このままではまた誰か傷つけてしまうかもしれない」そう分かっているから本郷は時に仮面を脱ぐが、俺は正直、
正直、
俺自身の行動や言動によってどれだけ他人が傷つこうとも、そいつは自分が傷つくことよりも遥かにマシなんだよ!!

それが本音!!


本郷!!

俺は仮面を脱がない!!


必要だから脱がない!!


そうして俺が晒した恥を俺自身だと見積もる人間がいて、仮面の姿の俺に誰が何を言おうとも、それは本当の俺じゃなくて、俺自身は中学生の頃から何一つ変わってないモジモジ野郎で、

そのモジモジ野郎っぷりを誰にも見られていないから、それならばどれだけ恥を晒しても俺からしたらセーフなんだよ!!


バーカ!!!






俺は俺自身の味方!!

人類の敵!!


とうっ!!(ジャンプ)









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