「こんなの簡単に作れるじゃん」と妬んだ時には 〜好きな惣菜発表ドラゴンと悪魔〜
私が最近知ってハマっている楽曲がある。重音テトで歌われているこの曲、『好きな惣菜発表ドラゴン』だ。
にっこり顔のドラゴンがゆったりした音楽に合わせて好きな惣菜を列挙していくシンプルなものだが、ほんわかした気持ちになれて、とても中毒性のある素敵な曲なのだ。
原曲であるこの動画は、2024年4月末の時点で140万回以上再生されている。派生動画もたくさんの人によって作られていて、大きな盛り上がりを見せているコンテンツとなっている。
何回も再生したり、派生動画を見たり、ファンアートを見たりして、私は好きな惣菜発表ドラゴンを楽しんでいた。しかし、どこからか何者かの声がしてきた。
「妬ましい…妬ましい…こんな簡単な作品でバズるなんて妬ましい…これくらいならオレでも作れそうじゃないか…なぜオレの作品ではなくこれがバズるのか…」
悪魔の私、ダーク価格未定である。創作者としての承認欲求が悪い方向へ成長して表出した私の負の側面だ。このままではSNS上で作者や作品への悪口を吐きまくる化け物に変貌するかもしれない。世界の危機である。
ダーク価格未定の出現に、すぐに立ち上がった者たちがいる。理性の私、常識的な私、分析の私などで構成されたライト価格未定軍団だ。ライト価格未定軍団はダーク価格未定へ呼びかける。
「好きな惣菜発表ドラゴンの作者であるンバヂさんは、昔から色んな作品を投稿しており2024年4月末の時点で69本のYouTube動画がある。作品数があれば認知度が高まる上に作者自身のスキルアップにもつながる。その実績があるからこそ今回のバズリなんだ」
「意図的にバズらせることなんて誰にもできない。だが、数をこなせばその分チャンスは増える。打席に立たなければホームランは打てないという話だ」
「例えばピコ太郎もそうだ。元底ぬけAIR-LINEの古坂大魔王さんが、活動に行き詰まって色々なことをやってみて、その中の一つであるピコ太郎が大ヒットしたのだそうだ。PPAPだけではないんだ」
「反面、お前はどうなんだ。作品を2、3作っただけでやめてしまったじゃないか。そんなんで人の作品を妬むなんておこがましいにも程がある」
「や、やめろーっ! なんて正論だ! !グワァァァァ!」
かくして、悪魔の私、ダーク価格未定は正論ビームに焼かれ消えた。世界の危機は去ったのである。
しかし、ダークな私がまたいつ現れるともわからない。そんな時はライトな私を呼ぼう。他人のヒット作を「こんなの簡単に作れるじゃん」と妬んだ時には、「続けて数をこなしているからこそ生まれたヒットだよ」と言ってあげよう。