没頭発掘

20歳の頃、バイクの免許を取って
毎日の様に遊ぶ友人の影響で
カスタムバイクに興味を持たされた。(笑)




令和のように情報社会がそれほど発達していなかったから


当時は沢山種類のあったカスタムバイクの月刊誌。
友人みんなで輪を作って
コレは変。コレはかっこいいだの、
今でいう匿名性の強いSNSの様なコメントを
内輪でつけていた。



いつかは、ハーレーを乗りたい。
そう思って、でも一度は国産バイクを所持してからステップアップで乗りたいと

かなり堅実的な選択をしていた。




雑誌を読み漁り
当時は個人的趣味であげている動画が多かった
発展途上なYouTubeなどを活用して


具体的にどんなカスタムをしていきたいかを煮詰めていった。



その頃大学生だった僕はバイトを掛け持ちし、
バイクを買うためのお金を貯めて
カスタムをするための妄想で頭がいっぱいだった。




住んでいる町周辺で
カスタムができるお店があるか
パソコンや携帯で調べて
今思えば一元様お断りそうな店を
純正国産アメリカンバイクに乗って
捨て身で3軒回った。





一軒目、
店内で似た黒い服装を来た数人が
円を描いて椅子に座って団欒していた。
少し殺気立ってみえた。


すいません。
このバイクに〇〇のカスタムしていただけませんか?


いいよ。100万。



聞いてもいない。即答で金額を言われた。
つまりヤル気がないのだ。


若かりし自分は
怒りではなくて、怒られた気になって
少し悲しくなって店を後にした。




二軒目、
シャッターも閉まり看板も出ていない。
ネットのクチコミのような掲示板で
ハーレー専門店とあるが、
やってみたいカスタムのバイクに似ているから
国産バイクでも引き受けてくれるだろうと思った。



店の外でしばらくうろちょろした後に
勇気を出して

すいませーんと叫ぶ。



すると奥から大柄のつなぎを着たおじさんが出てきた。明らかに分かったのは、昔からバイクを触ってきた重鎮のオーラだ。

客人が来てもオフっぽいスイッチから
節操を変えない。



何だ?


すいません。
このバイクに〇〇のカスタムしていただけませんか?


スティードか。
うちは国産バイクをやってない。



簡単に帰された。




若かりし自分は店員に
単純に面倒な客が来たと思って
帰されたとも思わずに
専門店なら仕方がないなと思い店を後にする。





三軒目、

今までで一番重そうな入口の扉だった。
絶対にノックを叩いても中まで聞こえない。


非力な自分は両手でお尻を突き出して思いっきり引っ張った。
2軒も簡単に帰された経験があったから
もう知らない人に嫌われようがどうでも良くなっていた。とにかく思いっきり扉を引っ張る。



扉を開く音はサッシと扉を擦る音が店の中に大きな音を立てた。


店内の作業者二人は扉の音に気づき手が止まる。



すいません。
このバイクに〇〇のカスタムしていただけませんか?


オーナーと思われる人が別の従業員に指示をして
接客するように促している。
すると従業員が出入り口まで近づいてきてくれた。


どうされましたか?


もう一度、同じ事を伝える。


すいません。
このバイクに〇〇のカスタムしていただけませんか?


いいよ。


あっけなかった。笑



どれくらいの金額でできますか?



分かんないから聞いてくるね。
ちょっと座ってて。



椅子を出してくれた。
一軒目で見た黒い服を着た人たちが座っていた椅子を今にでも蹴り出したくなった。
嬉しすぎて少し泣きそうになった。
気持ちが高揚する。



オーナーと思われる人が手を止めて
近づいて、概算の金額を答えたいからと

色んなパーツが載っている
バイクカスタム雑誌を何冊か出して
三人で概算見積もりを計算した。



重ねに重ねてきた妄想時間は裏切らない。
カスタムの内容を伝えるまではとても早かった。
具現化されて、漫画絵に起こしてくれた。




こんな感じだよね?
何台も作ったことあるから全然出来るよ。



当時の自分は震えていたと思う。



概算の見積金額を聞いたところ
結果、自分にとって良心的な金額を伝えてくれた。




必ず時間を空けて再度来るから
バイト代を溜めてカスタムをお願いする約束をした。




その後バイクを預けて
少しずつ自分にとってこカッコいいを突き詰めたバイクに仕上がった。




もしあの同級生の仲間と高校を卒業して
なんとなく疎遠になって
遊ばなくなってしまうことを恐れて
実はバイクを乗るのが危ないからと思って
乗りたく無かったのに
恐怖の気持ちを抑えて仲間との共通言語を増やすためだけに二輪免許を取っていなかったら


あの全身黒い服を着た何人かが
椅子で囲って自分に睨みつけられることも

ハーレー専門店だから
と突き返されることも

無かった。



けど、信頼できるバイクカスタム屋さん、そしてあれから10年以上経っても変わらない共通言語であるバイク仲間がいること。



仲間と離れ離れになりたくないからって寂しい理由で乗ったバイクなのに
バイクに乗ることが
何より自分の生きがいになっていること。




きっかけは軽いけど
色んな経験が沢山増えた。





バイクに乗る前の自分は
授業が終わればすぐに帰宅して
ご飯を食べて寝るだけの
体たらくな生活であったため
人生で体重も一番多かった時期。





この先ハマっていくバイク沼は
底しれぬ深さだとはつい知らず。




この先の続きもいつかまた書く。

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