デンジャラスドライブ
そのドライブは危険に満ちていた
デンジャラスでありスリリング
私は助手席で身構えつつも
カーステレオから流れるラジオ
その人の鼻歌
時に雲行きを眺めながらの天気予想
等々に相づちをうちながら
耳を傾けていた
街中はにぎやかで活気があり
いささか気分も良い
くだらない話で盛り上がる
郊外へ進むにつれ
視界が開けてくる
開放感が漂う
山が近くなる
いよいよだ
ここからが本番だ
曲がりくねった坂道を
どんどん上っていく
対向車はほとんどない
スピードを上げていく
助手席の私は
だんだん無言になっていく
現在地など
まるでわからないくらいの山道
その人は慣れたハンドルさばきで
ビュンビュン飛ばしていく
明らかに楽しんでいる
そのスピード感と私の反応を
ようやくたどり着いた集落
その中の一軒の家
威勢よく
ちぃ~っすと
入っていく
滞在時間は運転時間より短い
さぁ、次へと車に乗り込む
今来た道を一気に下る
スピードはさらに加速していく
下界に着く頃には
私はその高低差に適応できず
ややグロッキー状態だ
平地に戻り安堵するも束の間
次の場所ではお茶をする予定だ
それは毎回決まっている
お茶が目的ではないのだが
これも付き合いというものだ
その人は
まるで行きつけの店に行くかのように
カウンターに座るかのように椅子に座る
出されたものを次々とたいらげていく
グロッキー気味の私は
ちびちびお茶を飲む
その人のお皿が空になると
すぐさまおかわりが盛られ
私のまだ空ではないお皿にまで盛られる
必死に食べるが終わらない
ごちそうさま、じゃ、行くか!
慌ててお茶を飲む私
帰り道
お腹がいっぱいで
思考回路は働かない
住宅街をビュンビュン飛ばしていくが
無事にたどり着くことだけを考える
無事生還
ドライブの余韻にひたることなく
やらなければならないことがある
本日の記録を残さなければ…
その人はもう書き始めている
本日の記録を…
これはドライブデートの話ではない
訪問診療の話だ
その人は医師免許と運転免許をもつ
医師免許を剥奪されることはないが
運転免許証の色は…
ゴールドではないことは確かだ(実話)
こんな雪の日のドライブは…ご勘弁を!
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