私とest Panis
うちの近くに美味しいパン屋さんがあるのを知ったのは今から10年以上前のことです。今年、est Panisが14周年を迎えたので、もしかしたら14年前なのかもしれません。
美味しいものが大好きで、パンにもちょっとうるさいと自称していて、特にフランスのパンには目がないので、est Panis を発見したときは驚きと一緒に喜びを感じました。
そのころは、よく料理好き、ワイン好きの友人たちのところに集まってワイン会などやっていたので、est Panisのバゲットやカンパーニュを持参したものです。
とは言え、時々立ち寄るただのお客さんで、店主の横森あきこさんがりんご酵母パンの本を出されていたり、パン教室を開催されていたりするのを知っていながら、それをただ、横目で見ているだけの私でした。
時が過ぎ、あきこさんと打ち解けてお話しするようになったのは、コロナ禍に入った頃だったように記憶しています。世の中の動きが止まって、私も在日々在宅で、その頃大学生だった次男も授業が全てオンラインになり、毎日の昼食は次男と2人で家で食べる日々となりました。
必然と、est Panisに行く回数も多くなり、おかしな世の中になったもんだと、コロナ禍の状況を斜に構えて見ていた者同志、意気投合するようになっていきました。
話を重ねていくと、2人とも1964年生まれの同級生だということもわかり、あきこさんは20代でフランスに渡ったこと、私は40代後半からフランスとのご縁ができたことなど、フランス繋がりでも話が合いました。
けれど、一番気が合ったのは、世の中で起こっていることへの疑問だったり、物の見方であったり、形のないものへの価値を感じる感性だったりというところで、これは私が人付き合いする上で、もっとも大事にしている部分でした。
est Panis のパンはどれも大好きで、あきこさんの手から生まれるパンはどれも他では味わえない美味しさがあって、美味しいものが好きなお友達はもちろん、お店で出くわした知らないお客さんにも「これがおすすめですよ」など、さながら広報部長のように振る舞うことも常です。
お店であきこさんと話し込むことも珍しくなかったのですが、ある日、あきこさんからワクワクするようなお話を聞きました。
それが、果実酵母の話だったのです。