もし妻が突然入院しても、あなたは我が子をひとりで育てることができるだろうか?
最近、我が子が哺乳瓶を嫌っている。お腹が空いて泣いているくせに、哺乳瓶からは飲んでくれない。手が器用になってきて、今じゃ立派に手で払いのけてくる。堅い意思を感じる。嗚呼、我が子ってば成長したなあ、と、うっとりしている場合ではない。彼女なら、すでにおっぱいを差し出すだろう。でも、僕の乳首から母乳(父乳?)は出ない。払いのけられたとて、めげずに笑顔で哺乳瓶を差し出すしか術はない。膝の上で授乳体制になってから、ややしばらく。泣き疲れて、なんで泣いているか忘れてきた頃(時間で言えば多分5分やそこらだけど)になってようやく飲んでくれる。10秒くらい飲むと思い出し泣きしては、また咥える。それを繰り返してようやく飲み終える。彼女には「(哺乳瓶飲み切らせて)流石だね~」と言われるが、僕は焦っている。次の留守番、大丈夫だろうか…。
僕と我が子が2人で過ごす時間
我が家では、ほぼ毎週、週末に彼女には出掛けてもらうようにしているので、僕は我が子と5、6時間、留守番をしている。最初こそ、僕も留守番で泣いたわけ(「ワンオペは、やってみなけりゃわからない。(やってみたら泣いた話)」)だが、今ではもう慣れたもの。彼女もタイミングを考えてくれるので、授乳は1回か多くても2回。寝かせたり、遊んだり、隙をみて自分の食事をしたり、洗濯したり、掃除したり。平日昼間の彼女と同じように過ごせていると思う。
今、我が子がどのくらいの量ミルクを飲んでいるのか。哺乳瓶はいつどうやって消毒するか。母子手帳がどこにあるか。短肌着と長肌着は服とどう組み合わせて着せているか。外に出かける時はどのくらい着せるか。オムツのストックは?鼻が詰まったら?お風呂上りは、何をどのくらい塗りたくって乾燥を防げばいいのか。どのおもちゃで遊ぶのが好きで、どんなことをすれば笑うのか…などなど、全部わかる。オムツとミルクセット、万が一の着替えを持って、留守番中に二人で外出も出来る。
「嗚呼、これは眠たくなってきたな」「あれ、お腹空いてるの~?」「お、おまる乗ってみようか?」「あ~、ごめんごめん、暑かったね~」と様子を見ていれば、何となくわかる。泣いていても「これは、もうちょっとだけ泣かせれば寝るな」とか「寝起きで、まだ半分寝てるだけで、目が覚めたらニコニコするな」とわかっているから、泣かせておくことも出来る。だから、あたふたすることなく、(自分がメンタル崩壊せずに)リラックスしていられる。リラックスして接しているから、安心してくれる部分てあるんじゃないかなーと、つくづく感じる。留守番して泣いていた自分に、今の自分を見せてやりたい。そして「大丈夫、すぐにわかるようになる。キミの進んでいる道は正しい」と肩をたたいてやりたい。
もしものことが起こったならば。
そんなわけで、我が家は万が一、彼女が急に何等かの事情で一時的に育児を出来なくなっても、僕が母乳を与えることは叶わずとも、何とか我が子を育てることができる。でももし、一方が育児をしていない家庭だとしたらどうだろうか。オムツ交換(おしっこ限定)をたまにして、お風呂に入れてやって(お風呂で受け取り、お風呂で渡すだけ)、機嫌の良い時だけ遊び相手になっているだけの人に何ができるだろうか。それを考えると僕は恐ろしくなる。もちろん、そもそもそんな状況になる可能性は高くはないし、その状況になったからといって育児を諦める人はいないだろう。長い時間をかけ苦労してイチから学んで何とかするんだろう。でも、仕事を休むことは難しいだろうし、同時に家事をすることも必要になる。今のような環境で、我が子を豊かに育てることができるだろうか?
もちろん、僕が育児や家事をやっているのは、その時のことを考えたからではない。料理は好きだし、家は汚れていると落ち着かない、洗濯は面倒だけど清潔な服を着ていたい。我が子のことは夫婦二人のことだから、二人で一緒に頑張りたいし、それより何より我が子がかわいい。自然としてきた結果、万が一があっても彼女が戻ってくるまで、僕一人で我が子と持ちこたえることが出来る。一人になったら、今までのような手の込んだ料理は作れなくとも、おいしいものを食べる方法はいくらでもある。我が子は今まで通り泣くだけで、それなりの確立で要望に応えてもらえるはずだ。
どんなときも、できるだけ今まで通りに。
大人は一人になっても、なんとか生きていくことができる。だけど、小さい我が子は一人では生きていけない。どんな状況になったとしても、ずっと一緒に暮らしてきた僕たちが、可能な限り今まで通りに育てていきたい。夫婦が二人とも、同じように育児も家事も出来れば、万が一の時のリスクを減らすことができる。そんなことが起こらなければ、普段の生活では、どちらか一方に負担が偏ることなく、穏やかに生活ができる。私見だが、どんなに忙しい仕事だとしても、育児+家事より大変な仕事はない。いや、大変か否かではないか。人生において、それよりも大事な仕事なんてあるわけがない。
もちろん、悪いことなんて起こらないに越したことはないが、備えておくことも大切だなと、我が子の笑顔を見て心から思う。備えにもいろいろな方法があるが、毎日の生活を保つための準備として、子を持つ親は、誰もが家事や育児をやれるようになっておくに越したことはない。
だから、頼む。哺乳瓶をこれ以上嫌わないでくれよ、我が子。今週末も留守番ですよ。